どう取り入れる?チャットBOTソリューションの最前線

浦辺 LINE Messaging APIを使ったチャットBOTは、さまざまな活用事例が出てきています。3月にはLINE BOT AWARDSも開催されましたね。BOT AWARDSの反響はいかがでしたか?

砂金  LINE BOT AWARDSには815件もの応募があり、とても興味深く見させていただきました。トレンドとしては、LINE BeaconやIoTデバイスとBOTをつないだ作品が多かったです。こういった外のものとつながったソリューションを生み出したい、という開発者やクリエイターの方々の思いが反映されていて、世の中が大きく変わる前兆のように感じましたね。

大世渡 入賞作品にLINE Beaconを利用した作品がいくつかあって、注目度の高さを感じました。グランプリ作品もBeaconでしたね。

砂金  &HAND」という作品で、Beaconを固定した場所に設置するのではなく、移動する人に持たせるという方法で身体・精神的に不安や困難を抱えた人と、その周辺にいて手助けができる人をつなぐサービスです。

大世渡 LINE ビジネスコネクトは、スマホを操作する指先ひとつでどんどん外部の機能とつながっていけることが魅力ですよね。IMJでも3月にLINE Beaconを活用した「チャットBOTガイドサービス」をリリースしましたが、こういったオフライン情報とオンライン情報を統合してコミュニケーションが作れるBOTに、大きな可能性を感じながら開発に取り組んでいます。

浦辺 IMJでは、もはや企業文化と言ってもいいぐらい長年にわたって、他社に先駆けていろいろなチャットBOT向けサービスを開発していますよね。それを理解して、新フェーズに進まれるお客さまも多いですし。

砂金 そこを受け入れて実証実験を一緒にやってくださる、懐の深いお客さまがどのぐらいいるかが大切になりますね。IMJさんとアクセンチュアさんでは、何かポイントがあったりするのでしょうか。

大世渡 ここは大きな課題ですよね。皆さま大変興味は持ってくださるものの、やはり新しいサービスなので大規模な構想を描いても効果が事前に測りきれないことが多く、充分な予算が確保できない……という問題にぶつかります。なので弊社でオススメしているのは、まずは無理せず機能をギリギリまで絞った簡易的なBOTや、期間限定BOTを公開するといった小規模からスタートすることです。簡単なBOTでも、一度公開してみると驚くほどたくさんのユーザーさんが話しかけてくださったりするので、その熱量に「これは期待できる!」という実感をクライアントさんと共有できて、次のステップの開発に進めることがあります。

浦辺 アクセンチュアでは付き合いの長いお客さまと複数のお取り引きがあれば、その枠組みの中で、お客さまと一緒に新しいことにも挑戦していくケースが増えています。こういったソリューションは、どういう活用法が有効なのかは実際に動かしてみないとわからない部分が大きいので、まずは一緒にやってみましょう、とお声掛けしていますね。LINEさんもいろいろな企業と一緒にサービスを開発されていますよね。

砂金 実は私は、AIをベースにした自然言語対応のチャットBOTは楽観主義で簡単に進められるものではないと考えているところがあって。現状のAI技術では対話型インターフェースという観点では、今はまだお客さまの満足度が必ず一気に高くなるとは言い切れない。そのあたりは提案する側の責任として、ルールベースやオペレーターによる対応などと組み合わせて期待値のコントロールもしていかなくてはいけないなと気をつけています。

浦辺 自然言語で人間のようにチャットBOTが会話したりタスクをこなしたりするのは、まだ少し時間がかかりそうですね。LINEアプリのサポートでは、自然言語で問合せできるBOTを導入されていますよね。

砂金 ええ、まずはLINEのかんたんヘルプやLINEモバイル、LINE Payのカスタマーサポートなど、自社で使って効果測定や品質の改善を重ねています。AIの精度を短期間で劇的に向上させるのは難しいので、AIと人間のハイブリッドで対応し、チャットBOTをフロントに置いて学習させながら効率化を図っています。自分たちが自信のないソリューションをお客さまにおすすめすることはできないので、まずは自社で徹底的に検証し、これなら成果が出ると確信できるような状態でパッケージ化するようにしています。

LINE Beaconで広がっていく、企業と生活者の接点

浦辺 さきほども話題に出たIMJの「チャットBOTガイドサービス」ですが、これは、商業施設やイベント会場、観光地などに来られたお客さまと企業がLINEを介してOne to Oneでつなげるものですよね。

大世渡 LINE Beaconを使って、顧客1人1人の状況や今いる場所にあわせて最適な案内をチャットBOTでおこなうサービスです。LINEビジネスコネクトにLINE Beaconのオフラインで取れるデータをつなぐことで「今、誰が、どこで、何をしたいのか」がすべて分かるようになります。今その場にいるユーザーに便利なサービス提供をすることはもちろんですが、取得したオフラインデータを活用して長期的なCRMにつなげていくことも目的にしています。

砂金 なるほど、よくわかります。LINE BOT AWARDSの作品を見てもそうですが、今後BeaconやIoTデバイスと連動させたものはたくさん出てきますよね。弊社でも注力してサービス開発していく予定です。

浦辺 Beaconを活かせる場所はたくさんありそうですよね。鉄道会社や行政にもチャンスがあると思います。例えば、特定の路線に乗った人にのみ、直接何らかのオファーを出すなんてこともできる。

砂金 はい。ただ、こういったスマホアプリの中だけではない展開を実現するには、我々だけではなく実際の鉄道会社や行政、店舗の持ち主などの方々に場所を開放してもらい、一緒に開発していくことが必須です。さらに、その場に適したユーザー体験をつくりだすことが必要で、Beacon受信から生まれる会話とか、全体のユーザー体験をつくるクリエイターや開発会社がこれから活躍していくことが期待されています。

大世渡 LINE Beaconはユーザーさんに「使いたい!」と思ってもらえないと会話が始められない*ので、一方通行のマス広告的発想で企画してしまうと利用してもらえないと考えています。便利であるとともに、それぞれのユーザーさんにとって楽しいコミュニケーションになる工夫を盛り込むようにしたいですね。例えばお子さま連れの方には子どもと気軽に過ごせるエリアを案内したり、友達連れならゲームに参加できたり。1人でも、LINE上でキャラクターと一緒に歩いている気分になれるようなBOTとか。

*現在のLINE Beaconの仕様では、ユーザーからの認証が得られないとPUSH通知を受信できない。

砂金 じつは個人的に前職の頃から、IMJの「すまのべ!」の方々と話をする機会がありまして、Pepperの活用についても考えたりしているんですよ。PepperにLINE Beaconを仕込んでお客さまとの友だち登録を促進したり、クーポンを配るとか。

大世渡 いいですね! 弊社の社内アイデア出しでも、「PepperとLINEを繋ぎたい!」とよく盛り上がるんですよ。Pepperはカメラやマイクを搭載しているので、多くのユーザー情報が得られやすいからです。

浦辺 IMJはこのあたりの組み立てが上手だなと思うのですが、サービスを技術的な部分で解決するだけなくきちんとコミュニケーションに落とすことで、顧客接点として初めてワークしますよね。アクセンチュアもIMJも、ユーザー体験を起点にビジネスやサービスを創造していくことを目指しているなかで、これから最も重要になってくるのはユーザーが実際に使ってFUNな気持ちになるかどうかというところだと思うんですよ。

チャット インターフェースが顧客体験を変えていく

浦辺 チャットBOTのコミュニケーションを考えるときの重要なポイントの1つに、人格設定がありますよね。BOTに設定されたキャラクターがそのまま企業イメージに繋がるので、ここの人格設定で間違えるとユーザーの支持が得られない。

砂金 一般論として、企業ロゴを企業アカウントのアイコンにするのはよくない、とお客さまに申し上げています。企業とは少し分離させた人格として話させたほうが話も弾み、うまくいきやすいと感じます。

大世渡 弊社のチャットBOT「デジマケ相談BOT」でも、IMJの企業ロゴではなく「フィリップくん」というキャラクターを作って、アイコンにしています。年齢設定や話し方などを調整して、間違えてもカワイイくらいのキャラクターにしておくと、ストレス少なく会話が進められたりしますね。

砂金 LINEではLINE カスタマーコネクトというLINE上で複合的なカスタマーサポートを実現するサービスをリリースしているのですが、そこでも人格設定のポイントがあります。電話やメールでの対応は「~でございます」といった丁寧な言葉遣いが好まれるのですが、LINEではスタンプを使ったりもっと日常的な口語で会話をしたほうが満足度が高いんです。

浦辺 最近では、例えばコールセンターに電話したとき、前段階のやり取りが長々しいと思うことも多いですね。スマホ上の簡易的で素早いやり取りに慣れ親しんでしまったので、昔ながらのインターフェースのコミュニケーションに堪えられなくなってきている気がします。ファネル型マーケティングの考え方は終わり、今は新しいマーケティングアプローチを生み出す時代。私はメディアやインターフェースが変わるとビジネスが変わると考えていて、特にチャット インターフェースには全てのビジネス、顧客体験を変える力があると思っています。

大世渡 私もその通りだと思っていて、チャット インターフェースは生活者にとって最も使いやすいコミュニケーション。チャット利用を前提としたサービス設計がどんどん増えていくと考えています。ただ今はまだ文字ベース、ルールベースのやり取りが精一杯のことも多いので、小さなスマホ画面のなかで一度に見せられる情報量の少なさが課題で、WEBビューと組み合わせたり、コミュニケーション設計にはかなり工夫を要しますが…。

砂金 とはいえ、すべてのコミュニケーションが今すぐチャットに置き換わるとも考えていません。段階的に移行していく流れをつくりだすために、LINE カスタマーコネクトではCall to LINEというオプション機能を提供しており、音声通話から自然にチャットへ誘導することができます。テキストチャットと音声は双方排他的なものでなく、同時に使ったり、シームレスに行き来できたりするべきなんですよね。例えばテレビの配線がわからなくて電話しているときに、口で全て説明するよりは写真1枚送れるだけで解決がずっと早くなりますよね。テキストと音声の世界をうまく融合させてコストがかからないようにするのが、これからのチャレンジかなと考えています。

浦辺 最初にその話をお聞きしたときは衝撃を受けました。最初はユーザーにも違和感があるかもしれないけど、そのやり取りに慣れると今までのやり方は考えられなくなるはず。コールセンターもチャット化が進めば、一度問題を解決したら終わりという今までの存在から、日頃から繋がって、いつでもコミュニケーションが取れる存在になっていくんでしょうね。企業と生活者を繋ぐビジネスモデルが大きく変革します。

砂金 従来のコールセンター部門って、マーケティングとプロモーションは別という考え方が普通だと思うのですが、せっかくLINEでお客さまとコミュニケーションして、お客さまとの対話データが溜まっていくので、連動してサービス提供できるようになれば、非常に効果の高いサービスが出来てくるのではと思っています。LINEとしては、マーケット全体、エコシステム全体が変わっていくきっかけを何か生み出していくことで、世の中に貢献できるのではないかと思っています。

浦辺 そこはIMJ、アクセンチュアともに非常に共感できるところです。マーケティングの考え方が従来のやり方では成り立たないようになってきて、各部署が独立して活動していては競争に負けてしまう。企業と生活者のコミュニケーションそのもの、ビジネスモデルそのものを創造していかなければなりません。

大世渡 そうですね。今までの縦割りのコミュニケーション開発から、全部署を横断して新しいサービスやビジネスを生み出せるよう、アクセンチュアさんと協力しながら取り組んでいきたいですね。
本日はありがとうございました。