※掲載されている画像が小さく分かりづらいものがありますが、クリックで拡大できます。
※本記事は、会場で英語で発表された内容を筆者がまとめたものとなります。そのため、現段階で一部誤りがあったり、実際に機能がリリースされた段階で内容が変わっている、日本国内でいつ提供されるのか分からない点があることを、ご了承ください。

 

毎年Summitでは、実際の顧客を招いて具体的な事例を紹介します。
これまで参加していて、アメリカにあるグローバル企業が大々的にAdobeのソリューションを使っているような話が多くて、“遠い世界の話”感が強いことが多いのですが、今年紹介されたRBS(Royal Bank of Scotland:イギリスのメガバンク、UK中心に300年以上の歴史、240万の顧客)の事例では、どのようにデジタルマーケティングにおける改善を社内に取り入れていったのかという、比較的身近に感じるテーマで興味深いものでした。
日本もそうですが、金融業界、とりわけ銀行は業務の性質上もあり、デジタルマーケティングに対しては非常に保守的で、RBSも多分に漏れず、そんな状況だったようです。
そんな状態から、誰もが顧客体験(エクスペリエンス)の分析→改善が行っていけるような、全社をまたぐ組織にしていったか=どうイケてるデジタルマーケティングをする集団(SuperStar DJ's)にしていったか、という話になります。

 

以前の状況

昔はひどくて、写真のようなアクセスレポートを毎週出していたが、誰が見ているのかわからない、ほんとにうまくいっているのか誰もわからない、行うことは全て感覚的で打ち上げ花火のような状態だったそうです。

※以前作成していたアクセス解析レポート、文字だけでできていてなんだかわかりません。日本でも同じようなものを見たことはありますが…。

最初に行ったこととその後に起きたこと

まず、最初に行ったのは

1:コンテンツ管理のためのCMS(Adobe Experience Manager)の導入とカスタマージャーニーを管理するジャーニーマネージャーのポジションの設置
2:タグマネジメントツールでタグ一元管理
3:ダッシュボードを作成して、データを簡単に見ることができるようにする
4:サイトの最適化をおこなっていく

という内容です。
国は違ってもデジタルマーケティングにシフトしていく上でこの辺りの手順としてはあまり違和感がないですよね(これでも、もちろんそれなりの投資が必要なので決断して実行するのは大変ではありますが)。
そしていざ、4の段階まで来た時に、課題に直面したそうです。4を行おうとしても、分析/テスト/最適化を行っていきたい要望とそれを実行するリソースがアンバランスすぎて回らなかったという問題です。

 

Test→Learn→Collaborate

これに対して、ただ人員を増やせばうまくいくというわけではないので、Test(テスト)→Learn(学習)→Collaborate(共有)というサイクルのなかで、個々人が学んだことを共有する、成功体験を共有するということを意識的に行ったとのことでした。
また、人員を増やしていくと、全員が全員このサイクルを回していくプレイヤーだと続けていくのが辛いため、途中でプロデューサー(旗振りや全体をとりまとめていく役割でしょうか)という役割を加えたそうです。

SuperStar DJ?

改善プロセスをまわしていく人員を、なぜ“SuperStar DJ”と呼ぶのか?
音楽のDJというのは、その場のお客さんのノリや盛り上がりを見て途切れること無く柔軟に曲を切り替えてお客さんを楽しませていくわけです。それになぞらえて、オンライン上で変容していくカスタマーが望むものを意識して常に提供していく(ユーザーエクスペリエンスを与えていく)ことができる人たちということだと思います。

そんなDJ達の行動を促進するために、週次ベースで得られた成功と教訓をレポートして共有したり、毎週のDJランキング(チャート)を公開して、健全な競争を促進したりしているそうです。
また、こういったプロジェクトを継続的に長期間行っていくのは非常に難しいからだと思いますが、いつでもユーモアな気持ちを持ってフレッシュさを保つようにしたり、組織コミュニケーションしていくのにフランクに駄洒落を織り交ぜたり、DJだからなのか、おすすめの曲を紹介しあったりという、硬い銀行業ぽくないこともしているようです。続けていくという点ではこういう遊びごとが秘訣なのかもしれません。

 

事例

具体的に取り組んだことがいくつか紹介されたのですが、単純な文言レベルのABテストもあれば、例えば、PCでサイトにアクセスして、特定の商材を見たら、アプリ側では、その個人にパーソナライズされた優遇オファー(金利とかでしょうか)を出すといった、デバイスをまたいだエクスペリエンスを提供するということもしているようです。

こちらは、この改善プロジェクトを回すプロジェクトの一環なのか、わからなかったのですが、Adobe Experience ManagerのFORMS(まさしく各種フォームの管理と開発ができます)という機能を使い、新規口座開設のフローを改善した例もあげられていました。
いかに口座開設の障壁をさげるかというところが重要なところですが、タブレットで開設処理をしているとき、証明書となるパスポートデータを写真でアップロードすると、画像の文字認識をシステム上で行い、申請も短時間スピーディーで簡単にできたり、子供が口座開設を申し込むと親がオンラインで認証するような仕組みを作ったりしたそうです。
このアプリケーションで口座開設にかかる時間もそれまで11日ほどかかっていたものが24時間に短縮、申請率も60%アップしたとのことです。
また、バックヤード側の処理も、Adobe Document Cloudと連携しているようで、書類のデジタル化もすすめて、開設処理担当チームも4人まで簡素化できたということでした。

※iPadでの口座開設フローで画面中央にカメラで撮影したパスポート写真が写っています。

成果と指針

2014年にプロジェクトを始めた段階では、行えたテスト施策は2、最適化をしていく人員も2名、プロジェクトを推進しているデジタルアナリティクス専任チームは6人だったのが、2015年には、このプロジェクトの成果として、テスト施策は400も行い、最適化をしていく人員も全社で50名(!)、プロジェクトを推進しているデジタルアナリティクス専任チームのスタッフも10人まで成長したそうです。

また、プロジェクトを進めてく上での行動指針がいくつか挙げられていましたが、
一番重要なことして、(銀行業だけど)失敗を恐れるな!ということでした。

 

 

どうでしたでしょうか? 銀行がここまで全社的に行っていくという流れは、まだ日本には来ていないと思いますし、その他の多くの業界でも、頑張っても専任チームでほぼ完結というケースがほとんどでは無いかと思います。

ただ、デジタルがビジネスに繋がる範囲というのは確実に増えていっていますし、ユーザーエクスペリエンスを専任チーム以外の人間が意識して実行していくといった流れは確実に強くなっていくと思いますので、その参考になれば幸いです。