個人か会社員か

一般的にイラストレーターという仕事は、キャラクター等の権利関係が同時発生するケースはありますが、大雑把に言えば個人も会社員も基本は絵を描いて一枚いくらで売る仕事で、「画家」との大きな違いはクライアントからの要求に応じて作品を仕上げる所です。

ただし個人の場合、描きたいものを描いた展示会が直接の営業手段となるような、より「アーティスト」寄りの恵まれたケースも存在しますが、それでも黙っていれば仕事が向こうからやって来るような人気作家でもない限り、ただ絵が巧いだけで簡単にニーズは生めないため、実は「営業力」という地に足の付いた社会性がイラストレーターの仕事を仕事として成立させる大切な要素です。

とは言ったものの自分の作風とその魅力への誇りと愛情がやはりその要であり、クライアントもそこに惚れ込んで「指名」してくる訳で、自分から迎えに行かなくてはいけないリスクと引き換えに、極端に言えば仕事は自分で選ぶ事もできるのが個人経営のリスクと強みです。

これに対し会社員(筆者のような)の場合、お給料同様にある程度安定供給される仕事に漏れなく対応する技術がメインの売り物、という輪をかけた商業性の強さが特徴です。

絵に関してはやはり大前提ですが、感性やこだわりといったもの以上にドライな理解と器用さのコントロールといったものがここでいう「技術」で、またこれらを綯交ぜにした「迷いのなさ」が、結果としてペン先の速度以上に「作業スピード」に左右したりもします。

クライアントや課題次第で多種多様なタッチでの制作が、場合によっては重なったタイミングで要求されるため、自分の引く線の個性に変に誇りを持つ事は返って周囲には迷惑な話ですし、おかげさまで着実な労働条件を得ている以上「描けません」と言わない事をプライドに仕事をしています。

条件を組み合わせて、できる限り描き分ける

例えば、仕事が発生する度に、

ターゲット】ファミリー・若者・男性・女性・子供・特定の趣味・ライフスタイルetc‥
ジャンル】キャラクター・アイコン・背景・模様・ロゴ・アニメーションetc‥
タッチ】知的・コミカル・カワイイ・キレイ・オシャレ・インパクト・安心・下手ウマ・リアル・水墨画・劇画・アメコミ・メカetc‥

というような条件を都度組み合わせて、その時点でできる限りの最適と思われるタッチを考案・描き分けますが、せっかく作ったものも多くは使い捨てで長くは使えませんし、ましてやよそでは使えません。

とは言っても作るものが古くダサくなってしまう事は何より怖い事ですし、強制的にアップデートを促されるのは僕個人としては逆にありがたいくらいに思っています。

またイラストは視覚的なコンテンツで象徴的に扱われやすく、生活の中ではサービスや商品の魅力を牽引する役割がより強い印象を与えるため、消費者側は通常「有名作家の作品のみ」をそれとして意識してしまいがちですが、実は説明文の挿絵のように解りやすさをサポートする役割で制作される脇役の方が世の中にはずっと多いのです。

よって僕の仕事も殆どは後者側ですし僕自身も表舞台に名前が出る事はありませんが、常々同じ人が描いたと思われない事がちょっとした快感でもあったり、持論ですが「描かれている」と如何に感じさせないかをイラストの完成度と考えているので、やはりそれはそれで良いのです。

僕の仕事はクリエイティブで楽しいもの

と、なるべくロジカルに自分の仕事を書いたつもりが何か卑屈な文面に収まってやしないかと心配ですが、あくまで僕の仕事はクリエイティブかつ楽しいものですし、楽しく見えなきゃ嘘だと考えています。

という訳で、たまにキャラクターだけでなく「お、この背景描き込みすごいな」みたいに見て頂けると嬉しいです。