顧客の消費行動の変化と新型店舗の登場

世界的な流通サービスの発展により、ECサイトが普及し、それとともに、実店舗を持っている小売店の売上は減少していき、来店しても商品はネットで購入する、いわゆるショールーミングが流行り始めました。
売上不振の状況を打開すべく、様々なオムニチャネルの潮流が生まれており、日本も例外ではなく、どの小売業でもオムニチャネルを合言葉に色んな施策を打ち出しています。
米国のメンズ・アパレル「ボノボス」では実店舗で商品を販売せず、試着ショールームとして展開し、オンラインストアでのみ販売をしたことで注目を集めました。
最近では同様のビジネスモデルで展開しているアパレルブランド「GRANA」も米国進出で注目を集めています。

「ボノボス」のオンラインショッピングサイト

「GRANA」のオンラインショッピングサイト

アシックスステーションストアに行ってきた!

そんななか、ここ日本でもアシックスがショールーミングを主な目的とした店舗「アシックスステーションストア」を8月9日にオープンしました。
新しい体験価値を実感すべく、先日早速訪問してきました!
この店舗はショールームに特化し、一部商品を除いては、まさに商品を売らない店舗なのです。

※この記事は弊社の実績紹介ではなく、あくまで新しい顧客体験価値のご紹介です。

アシックスステーションストア(品川駅)

場所はなんと、駅のホーム!

JRと京浜急行が通っており、京浜急行だけで26万人もの利用者がいる品川駅。その品川駅の京急品川駅側構内に店舗がありました。

品川駅ホームでのオープンには以下の狙いがあると考えられます。

  • ショールーミングに特化したストアは店舗面積が小さくても開設可能
  • フラッグシップ店舗として重要な役割を担うべく、より駅利用者に認知いただく
  • 普段駅を利用している方だけでなく、空港と直結した路線があるため、観光などで東京へ来た方に対しても訴求できる
  • 駅での電車待ちなどの方へ時間つぶしの目的で入店いただける

など、通常の店舗とは違うメリットが挙げられます。

早速店の前に行くと、遠くからでもわかるアシックスのロゴ、大画面のデジタルサイネージが設置されており、未来感漂う店構え!
店舗スタッフの方がステキな笑顔で迎えてくれました!

外観は、大きく光るアシックスのロゴとデジタルサイネージが印象的。

少ない商品数ながらもスタイリッシュな店内へ

デジタルサイネージを眺めて写真を撮っていたら、さわやかなスタッフの方が店舗内に誘導してくれました。
店内に入ると、オリンピック関連の商品が置いてあり、レジカウンターの横には試着ルームもありました。

スタッフの方に話を伺っていると、商品をその場で購入することも可能だが、メインはショールミング用という店舗になっているとのこと。
当初は商品を置かずにオンラインで買い物するためだけの店舗にしようと考えていたようですが、シーズンものだけを置くことになったそうです。
陳列されている商品は少数ながらも、シーズンものの商品があるので、アシックス製品の取り組みを気付かされます。
訪問した時は、シーズンものの商品はリオ2016オリンピックのもので、そういえば日本代表選手団の公式スポーツウエアはアシックスさんだったなぁと再認識しました。
秋にはガラっと商品が変わるそうです。
今後もどのような取り組みを行っているのか、その時々の商品が教えてくれるようです。

商品はシーズン物だけを陳列。ショールーミング用の店舗だが、実際に試着や購入をすることも可能。

導入されている新技術「光ID」

この店舗では新しい技術も取り入れられています。パナソニック社が提供している「光ID」です。「光ID」はLEDライトの特性を活かしたデジタル信号を、カメラで撮影することで受信し、任意のWebページを表示できるという技術です。
専用のアプリをインストールする必要はありますが、3カ所に設置されているロゴにカメラをかざすとオンラインストアへアクセスできます。
この技術は博物館などで利用実績はありますが、小売業態で導入されるのは初だそうです。新しい技術や体験を取り入れて、SNS等でシェアしてもらうこともショールーミング専門店舗には重要なキーになりそうです。

他にも店内外に設置されている大画面のデジタルサイネージでは、商品リストとともに表示されるそれぞれのQRコードを読み取ることでオンラインストアの商品詳細ページへアクセスできます。
店舗の前でも、店舗内でもオンラインストアへ誘導できる手段が積極的に取り入れられており、ECでアシックス用品が購入できるイメージを印象づけています。

アシックスのロゴマークが放つ光をスマホのカメラで撮影することで、任意のWebページが表示される。

オンラインストアでは特設ページを設置

オンラインストア側ではアシックスステーションストア専用のページが用意されています。専用ページでは在庫の確認も可能となっており、わざわざスタッフの方に確認する手間も省けます。
このように、見たい商品を簡単に参照することができ、スマホで簡単に購入が可能なのです。サイズがわからなければ、店で試着して、オンラインストアで購入。
まさにショールーミングです!
観光客にとっても、たくさんの荷物を抱えて旅行するのは大変ですが、購入して自宅へ配送してくれるなら楽チンです。他にも持って帰るのが面倒くさいお客様にも最適!

アシックスステーションの特設サイト。

アシックスのオンラインショッピングサイト。

ショールーミング型店舗の4つのメリット

このビジネスモデルのメリットはいくつかあります。

1.余分な在庫を店舗で持たなくて良い

在庫を持たなくなれば、在庫管理が必要なくなり、在庫保管スペースも必要なくなります。そのため、店舗面積が小さくても出店できるというメリットがあります。

2.リッチメディアとしての広告効果

このような店舗形態は世界的に見てもまだまだ少なく、斬新でインパクトがありニュースバリューが期待できます。
また、人目につきやすく、接客もでき、利用者が商品を手にとったり、その場でオンラインストアへアクセスしたりとインタラクティブに顧客体験ができるリッチメディアともいえ、広告を出すなら、小さなショールーミング用店舗を出す。という選択肢も出てくるかもしれません。

3.万引きなどの被害防止

ショールーム用の商品はありますが、多くを管理する必要もなく、盗難の心配が極端に少なくなります。

4.お客様の購買行動の可視化

オンラインストアでは、お客様の行動をデータ可視化することができます。
実店舗からオンラインストアへ誘導することで、従来の店舗で取得できなかったデータの収集を行い、マーケティングに生かすことが可能です。

このようにショールーム店舗では多くのメリットがあります。

求められる新しいサービスデザイン

こういった店舗が成功事例になれば、同様の店舗が増えていくかもしれません。
そうなると、今はデジタルの良さ(=商品を配送してくれる)と実店舗のよさ(=商品を手に取れる)を両方実現している店舗ですが、さらなる進化を求められるようになるのではないでしょうか。
たとえば、店内に入った時の商品の陳列方法、店員さんの接客方法、サイトへの誘導方法などまだまだ進化できる要素はあるように思います。そもそもの店舗運営自体も従来の小売店とは全く別な考え方で取り組む必要があるため、小売流通業とデジタルマーケティング分野の思考を併せ持つプランナーも必要になってくるでしょうし、ビジネスとしてのKPIも今までの小売店とは変わってくるでしょう。その一連の顧客体験・店舗運営をどうデザインしてフラッグシップとしての成功を描いていくのか、今後に注目です。

最近では1時間以内に配送する業者も出るなど、配送時間の短縮も進んでおり、買ったものが、すぐに家に届けば持ち帰る手間も省けて非常に便利なのは事実です。

しかし前述の通り、私はウキウキしながら店舗を訪れ、買う商品を吟味し、商品を買った後に、ワクワクして帰路につくまでが顧客体験価値だと思っています。こういった取り組みがどこまでその感覚を取り込んで進化し、楽しいショッピング体験を提供してくれるようになるのか楽しみです。