はじめに:データ分析のもとになっている情報について

カンヌライオンズは「ライオン」と呼ばれる3色のトロフィーが存在している、ということはみなさんご存じかと思います。
実はこの3色の上に、さらに「グランプリ」というきらびやかな「ライオン」が存在していることは意外と知らない人も多いみたいです(私も最初は知りませんでした)。

オリンピックはゴールドがNo.1&Only1ですが、カンヌライオンズではどの「ライオン」も1部門1つとは限らず、また1作品1部門エントリーではないため、1つの作品で複数の「ライオン」を獲得している作品が多く出ます。これは、複数部門で複数の審査員から多面的に評価を受けた証。

そこで今回は、受賞総数(ライオン数)の「個数」と、「ライオン」のグレード(種類)に応じた「ライオン点」を掛け合わせた指標から、データを分析しています。受賞総数の多さが「評価の範囲の広さ」、IMJ評価点の高さが「評価のレベルの高さ」を示しています。

※「campaign」と呼ばれる連作は、1連作で1つの「ライオン」として集計しています。

 

IMJ注目点=受賞数×ライオン点(8つのライオンにIMJ独自の以下の配点をしています)

 

受賞ライオン

ライオン点

グランプリ

10点

ゴールドライオン

5点

シルバーライオン

3点

ブロンズライオン

1点

チタニウムライオン

7点

イノベーションライオン

7点

プロダクトデザインライオン

4点

グラスライオン

4点

※以降の各グラフにおける受賞数は上軸、IMJ注目点は下軸

作品ごとに見るカンヌライオンズ2016

受賞総数が多かった順に作品をリストアップ。注目度の高い作品がわかります。

 

◆作品別受賞総数◆

 

 

受賞総数1位:THE FIELD TRIP TO MARS(IMJ注目点3位)

VR元年と呼ばれる今年、受賞総数が最も多く19個の「ライオン」を獲得。いわゆるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)型ではなく、「バスの窓」を使ってスクールバスが火星を走るという同時体験型のVRを実現しています。

2015年に新設された、データとクリエイティブをブランドストーリーに昇華させるアイデアに贈られる「クリエイティブデータ部門」や「サイバー部門」でのゴールドをはじめ、新しいプラットフォームや先鋭的なテクノロジーを評価する「イノベーション部門」(この部門のライオンは1色)など、先進的な側面が評価されただけではなく、「デザイン部門」でそのデザイン性も評価されています。残念ながらグランプリの受賞がなかったため、IMJ注目点は3位となりました。

 

受賞総数2位:SURVIVAL BILLBOARD(IMJ注目点9位)

合計18個のライオンを獲得した、MICROSOFT のXBOX / TOMB RAIDER訴求のキャンペーン。実際の人間が屋外広告となりサバイバルの様子を模した、“様子”そのものを広告とする、という施策。「アウトドア部門」だけでも6つのライオンを受賞。こちらもグランプリの受賞はなしです。

 

受賞総数3位:MCWHOPPER(IMJ注目点1位)

受賞総数は3位ですが、実質今年もっとも評価された作品といっても過言ではないでしょう! 「メディア部門」「プリント&パブリッシング部門」のグランプリをダブル受賞。統合キャンペーンとして「チタニウムライオン」も受賞しています。

 

受賞総数3位:THE NEXT REMBRANDT(IMJ注目点2位)

4月に公開されて記憶にも新しい、AI(人工知能)によるレンブラントの新作。カンヌの壇上でも実物が披露され、歓声があがりました! 「ING IS ONE OF THE MOST INOVATIVE BANKS IN THE WORLD(INGは世界でもっともイノベーティブな銀行のひとつ) / HOW CAN THAT INNOVATIVE BE BROUGHT TO THEIR SPONSORSHIP OF DUTCH ARTS AND CULTURE?(どうオランダの芸術と文化のスポンサーシップにイノベーティションが起こせるか)」というメッセージでオランダの金融機関がオランダの著名画家の新作を発表、というストーリー。昨年新設されたもののグランプリがでなかった「クリエイティブデータ部門」でのグランプリ受賞も頷ける結果です。

 

すべての作品のうち、ゴールドを最も多く獲得したのは10個獲得の「MANBOOBS」。SNSの仕様の隙間をうまくついた動画が、ユーモラスに拡散したことが評価されました。次いでゴールド8個獲得の「BREWTROLEUM」は「アウトドア部門」のグランプリや「チタニウムライオン」も受賞の、優れた統合キャンペーンとして注目の作品です!

 

国別に見るカンヌライオンズ2016

受賞総数が多かった順に作品のエントリー国を並べてみました。

 

◆国別受賞総数◆

 

 

受賞総数1位:アメリカ(IMJ注目点1位)359個

なんと全受賞総数の25%をアメリカが占めるというとんでもない割合になっています。

アメリカの作品の特徴は、単に「受賞数が多い」という側面だけではなく、高い評価を受けている統合的キャンペーンが多い、という特徴があります。

グランプリダブル受賞は、「エンターテインメント部門」「モバイル部門」でグランプリ受賞のNew York TimesのVRコンテンツ「THE DISPLACED /NYT VR」と、「プロモ&アクティベーション部門」「チタニウム部門」で単なる広告ではなく、施策の内容と強いメッセージが評価された「#OPTOUTSIDE」。そのほか「エンターテインメントフォーミュージック部門」のビヨンセのMV「FORMATION」、「フィルムクラフト部門」の「UNDER ARMOUR PHELPS」、「インテグレーテッド部門」の「HOUSE OF CARDS - FU 2016」と合計7つのグランプリを獲得しています。

 

◆アメリカの作品別受賞総数◆

 

 

受賞総数2位:イギリス(IMJ注目点2位)166個

対して、受賞数が2番目に多いイギリスは、ひとつの部門に特化した作品が多い(グランプリ数がアメリカに次ぐ6つ)、他部門=多チャネル展開で評価されているインテグレーションキャンペーンが少ないという特徴が。

「ファーマ部門」でグランプリを受賞した「BREATHLESS CHOIR」は、呼吸疾患を持つ人々が歌うことを通じてこれまでできなかったことを克服する、イノベーティブな取り組みの表現として今回のヘルス部門(「ヘルス&ウェルネス部門」と「ファーマ部門」)の2部門でグランプリを含む8つのライオンを獲得し、大きな注目を集めました。特定の部門で突出した作品が評価されていることが強い特徴で、その他グランプリを獲得した「クリエイティブエフェクティブネス部門」の「MONTY'S CHRISTMAS」、「フィルム部門」の「SHOPLIFTERS」、「ヘルス&ウェルネス部門」の「PROJECT LITERACY」、「イノベーション部門」の「GOOGLE DEEPMIND ALPHAGO」、「プロダクト部門」の「JACQUARD」など、グランプリ受賞部門以外での受賞がないからこそ、カテゴリの代表としての威厳が際立つ作品が目立ちます。

 

◆イギリスの作品別受賞総数◆

 

受賞総数3位:ブラジル(IMJ注目点4位)90個

オリンピックイヤーの影響もあるのか……、ライオン数3位はブラジルでした。ブラジルは「アウトドア部門」と「プリント&パブリッシング部門」が強く、また連作が多いのも特徴。ぱっと印象に残り、「見て感じる」クリエイティブが際立ちました。IMJ注目点は5位で、他国と比べてゴールドが少なく、ブロンズが大半となっています(連作は除いています)。

ENDLESS POSSIBILITIES」は、「CHARLES」「ANGELA」「FRANCIS」「DALAI」「POPE」の連作のアウトドア部門受賞作品を含むGETTY IMAGESの作品。この名前、どこかで聞いたことがあるような……。有名人の顔を、GETTY IMAGESの素材を組み合わせて「似顔絵コラージュ」している作品です。

メディア部門ゴールドほかモバイル部門を含めて5つの「ライオン」を取った、「SONGS OF VIOLENCE」は、ミュージックアプリ「Shazam」を使用し、暴力や虐待を歌っている曲が与える影響の大きさから、それを聴く人にリアルな被害者の証言を届けるというキャンペーン。SNSの与える影響力の使い方やオーディエンスへのメッセージの届けかたが秀逸です。

 

◆ブラジルの作品別受賞総数◆

 

受賞総数6位のニュージーランドは、IMJ注目点3位。「MCWHOPPER」や「BREWTROLEUM」などの高得点作品がエントリーされています。

日本は48個のライオンを獲得し、受賞総数9位です。

 

国×部門でみるカンヌライオンズ2016

24の部門、それぞれに国ごとの特徴はどうなっているのか。受賞数上位20位の国×部門で並べてみました。

 

◆部門別国別受賞総数◆

 

デジタルマーケティング視点で気になる最も気になるカテゴリは「クリエイティブデータ部門」「サイバー部門」「デジタルクラフト部門」「モバイル部門」の4つ。それぞれのカテゴリでもっとも受賞総数を挙げているのはやはりアメリカ。特に、「サイバー部門」では全受賞総数の実に50%以上がアメリカ、2016年より新設された「デジタルクラフト部門」でも約46%となり、改めて、デジタルに強いアメリカのレベルの高さを感じました

日本は「デザイン部門」の受賞総数が2位。デジタルの一翼を担うわれわれも頑張っていかないといけないな、と気を引き締めました!

 

いかがでしたか?

次回、受賞データから見るカンヌライオンズ2016 後編では、「エージェンシー別」「クライアント別」の受賞数と、注目作品を分析します。
こういう分析も見てみたい、などご意見あればbackyard_info@imjp.co.jpまでぜひお寄せください!