タブレットで電子書籍を読み、動画配信サービスで映画を視聴することが当たり前となった今。そんななか、書籍・映画業界はSNSやWEBサービスを用いて話題化を図っているようです。最近話題となった2つの事例を見てみましょう。

発売前に全文公開!?  『ルビンの壺が割れた』

書籍発売前にサイト上・電子書籍で小説を全文公開し、本の帯に載せるキャッチコピーを募集したこの企画。
“覆面作家”“全文公開”という多くのハテナを生みそうな特異性は、SNSで情報収集をしているワカモノにとって格好のネタとなったのではないでしょうか。特設サイトは79万PV超え、募集期間の14日の間に6015件もの応募があり、Twitter上でにわかに話題となりました。
※キャッチコピー募集期間(2017年7月14日~7月27日)

ヒットのポイント①:マスからではなく、SNSから協力者を募る!

この企画は、新潮社出版部文芸のTwitterアカウントによる一件のツイートから始まりました。

初めにマスではなくSNSからこの企画を発信することで、読者は自分だけが知り得た情報を拡散して多くの“ナニコレ”ツイートを生み、SNSでの小さなつぶやきや記事の数々が、ぶわっと情報を拡散させました。また、“協力者求ム”スタンスをとることで、単なるプレキャンペーンとは異なり「いっちょやってやろうか」というモチベーションを芽生えさせ、ポジティブな拡散を生んだのではないでしょうか。実際に、「覆面作家デビュー作がタダ! お力添えを!」などの応援ツイートやユーザー自身の考えたキャッチコピー、感想ツイートが多く見られました。その後、キングコングの西野さんや元ライブドア社長の堀江貴文さんもブログで取り上げたり、新聞などのマスネディアにも露出し、話題を世に広げました

ヒットのポイント②:「発売後も気になる」という期待感の継続性

通常著名人の感想が載せられる帯文に自分の考えたコピーが載るかもしれないという企画は、「店頭まで見に行きたくなる&サイトにもう一度訪れたくなる」思いを育て、ユーザーの興味を本書の発売以降も継続させました。
キャンペーン終了後、サイト上では審査結果の発表や、その他沢山寄せられた感想を集めたコンテンツがしっかりと用意され、店頭には選出されたコピーが印刷された本が並び、多くの協力者は店頭に足を運んでそれを見、本の写真をSNS上にアップしました。

自分がその一端として関わったものって、まるで自分のことのように行方が気になるものですよね。
読者を「読む」立場から、一緒に創る「協力者」の立場としたことで、一時的な興味で終息させずに、キャンペーン後もユーザーが本のために主体的に行動するという発売前~発売後のフローづくりに成功したのではないでしょうか。

ヒットのポイント③:小説の内容・宣伝方法・サイト全てに一貫したコンセプト

この小説は冒頭部分から最後まで、Facebookメッセージでのやり取りをそのまま載せるという独特な書き方を用いており、その特異性から派生してキャンペーンもSNSを絡めた新しいアプローチを行いました。
また、WEB公開されている作者へのインタビュー記事は、小説の書き方に似せ[公開往復書簡]というカタチで作家と編集者のやり取りをそのまま掲載するというコンテンツが用意されています。
このような一貫した体験づくりが、より読者を小説の世界観に引き込み、大きな拡散に導いたのではないでしょうか。

店頭に並んでいる書籍自体にも工夫がなされているので、ぜひ、ご一読を。 

 

クラウドファンディングから徐々に話題化『この世界の片隅に』

クラウドファンディングを通じて制作資金を集め、そこから公開後にかけてじわじわと話題になっていったこの映画。クラウドファンディングだけでなく、さまざまなWEBコンテンツの配信など、ファンと丁寧なコミュニケーションをとり、結果的に異例のロングランとなりました。
2016年11月12日より日本全国公開され、『ぴあ』映画初日満足度ランキングでは栄えある第1位を獲得し、わずか63館での上映であるにも関わらず、動員ランキングでは10位という快挙を達成しています。

オープニング曲1コーラス SoundCloud配信

11月13日 池袋舞台挨拶 LINE LIVE配信

ヒットのポイント①:クラウドファンディングからお客様を“チームの一員”にする

この映画はクラウドファンディングを実施したところから注目を集め始めました。
クラウドファンディングサイト「Makuake」で、「制作支援メンバーを募集」として資金を募り、
わずか3週間の間に、4,000万円近くの資金が集まり、目標金額2,160万円に対して達成度は180パーセントという「Makuake」内でも記録的な数字をたたきだしました。単なる資金提供者としてではなく“制作メンバーになってほしい”というアプローチをしたことで、資金提供側には義援活動ではなく制作に関わる一員になるのだという意識が芽生え、この映画を応援したいという熱いファンを獲得できたのではないでしょうか。

このように「Makuake」のサイト上でも1493の応援コメントが上がっています。

クラウドファンディングは、第一弾に引き続き第二弾の企画、「映画『この世界の片隅に』の海外上映を盛り上げるため、片渕監督を現地に送り出したい」という企画においても目標金額の3倍の資金を獲得し大成功に終わりました。

ヒットのポイント②:エンドロールに名前が載ることで「誰かに言いたくなる」

クラウドファンディングでは、支援者の方々へのリターンとして、アニメの主人公であるすずさんからの手紙や監督を囲んだミーティング参加の他に、一定の支援額からは「本編のエンドロールにお名前をクレジット」という特典があることが特徴でした。
リターンとして何かをもらうのではなく、エンドロールに名前が載るという一生で二度とない体験は、確実に誰かに言いたくなる拡散性、またファン自身が制作メンバーの一員として参加している意識をより強く芽生えさせ、制作者と支援者がより絆を強くするという二重のメリットを生んでいます。

「応援するファンとそれに応えるすずさん」という丁寧なコミュニケーション、これら全てがファンを生み出す仕掛けとなっています。

今大切な、共創マーケティング+αとは

「作る」人と「買う」人たちが共に開発していく共創マーケティングの発端として有名なのは、無印良品が2000年から始めた「ものづくりコミュニティー」があげられ、2009年には「くらしの良品研究所」が作られています。
その他、Nestleの「ネスカフェ アンバサダー」「未来食堂」など、今では多くの企業が共創を行っており、SNSやWEBプラットフォームを通して、さまざまな分野・形態で共創マーケティングが取り入れられている状況です。

2年間お客様に無料で無印良品の家・家具を提供し、その良さをお客様自身から発信してもらう 無印良品「ぜんぶ、無印良品で暮らそう。」

オフィスで働く人にアンバサダーになってもらう Nestle「ネスカフェ アンバサダー」

番外編:リアルな共創マーケティング 希望に合わせておかずをあつらえてくれる 「未来食堂」

 

そして、今回取り上げた2つの事例が今までの共創マーケティングとひと味違う点は、“発売前だけでなく発売後もユーザーと共にそのモノを育てていく”ことで話題をバズで終わらせず、継続した売り上げにつながっているところだと思います。そのためにはファンとの丁寧なコトづくりが大切ではないでしょうか。

「さあやってください、楽しんでください」という一方向的なコミュニケーションでは響かなくなった現代。SNSやさまざまなウェブプラットフォームを使ってユーザーとインタラクティブなコミュニケーション、共創していくことは容易になりました。そしてこれからも、SNSを通して、ユーザーと共に育成し、体験を創っていく共創マーケティングは進化を遂げていきそうです。