2017年1月、マクロミル社とIMJが共同でカスタマージャーニーを可視化した「カスタマージャーニーマップ」をテーマとしたセミナーを開催。当日は満員御礼! 定員80名に対して、参加応募が約250名ありました。セミナーではIMJからは“しっくりこない”カスタマージャーニーマップの原因・対策について、toC・toBの実例を交えて紹介。参加者からは「具体的で分かりやすかった!」「実践的な内容で役に立った!」という声が多く聞かれました。

“しっくりこない”3つの原因

─── 今回のセミナーは、業界問わずさまざまな企業の方から多数応募・問い合わせがあったとのことですが、この反響の高さの理由はどこにあるのでしょうか?
 

川野:セミナータイトルに記載していた“しっくりこない”というキーワードが共感を得たのではと思います。実際に業務の中でお客様とお話ししてみると、カスタマージャーニーマップを作っても、「本当にこれは正しいの?」「これは役に立つものなのか?」という“しっくりこない”状況になるケースが多いというお話をたくさん聞きます。

 

─── “しっくりこない”状況になる原因は何なのでしょうか?
 

佐藤:原因は大きく三つあります。一つ目は「カスタマージャーニーマップを作る目的が不明瞭」であること。なぜ作るのか?作った後どう活用するか?などの視点がはっきりしていないことが多いと思いますね。流行っているから作ってみたい!という方も多い印象です。二つ目は「調査データの不足や偏り」です。カスタマージャーニーマップを作る上で、調査データは多角的に集める必要があります。ユーザーは自社サービスだけでなく競合サービスをどう使っているのか、WEB上とリアルの場面でどのように動いているのか、といったさまざまなデータを収集することが大切です。しかし、企業様によってはそれを必要と考えていない場合もあります。

 

─── なぜ多角的にデータを集めないのでしょうか?
 

川野:企業様の中にある「自分たちは一番ユーザーのことを知っている!」という気持ちが要因のひとつだと。毎日ユーザーのことを一生懸命考えながら仕事をしているので、分かっていて当然!という考えですね。しかし実際はあまり分かっていないことが多いと思います。ある企業の部長さんはカスタマージャーニーマップを作成するワークショップの途中に「俺たち、ユーザーのことを全然分かってないね……」とおっしゃっていました。

 

─── 目的が不明確かつユーザーのことをよく分かっていない中で作るカスマタージャーニーマップ……。“しっくりこない”のも当然ですね。三つ目の原因は何ですか?
 

川野:はい、三つ目の原因は「関係者の合意形成が取れていない」ことです。部門内外の関係者にカスタマージャーニーマップをなぜ作るのか、作ってどうしたいか、などの共有をせず、合意がとれていない状況で進行すると、成果物に対して関係者全員がそれぞれ意見を持っていて、納得していない状態になってしまいます。

 

─── いざ、カスタマージャーニーマップを元にしたアクションをとろうとした時に周りの理解を得られず頓挫……ということになりそうですね……。
 

脱・「オラオラCJM」のために!

佐藤:“しっくりこない”原因の二つ目でお伝えした「調査データの不足や偏り」に伴って、自分たちの都合のいいデータや調査結果だけを元に作ってしまう企業様も多いですね。その結果、「オラオラCJM(カスタマージャーニーマップ)」が生まれてしまうのです。

 

─── えっ!「オラオラCJM」って何ですか?
 

佐藤企業目線の「こうあってほしい!」という気持ちだけで作られたカスタマージャーニーマップのことをIMJでは「オラオラCJM」と呼んでいます。ジャイアンのように自己中心的なマップですね(笑)。マップ上では自社のサービスをスムーズに使っているので、一見うまくいっているきれいなマップに見えるのですが、よく見ると突っ込みどころが多いのです。

 

─── なるほど、「オラオラCJM」にならないよう、気を付けなければいけませんね……。
 

川野:そうですね。ここで大切なのが「第三者視点」です。「本当にそうですか?」「これはおかしいんじゃないですか?」といった客観的な視点を持って意見を出し合うことが大切です。しかし、これを社内の人だけで言い合うのは、なかなか難しいですよね。異なる部門の人同士で言い合うと角が立ってしまうのではと思ってしまいますし。

佐藤:IMJはワークショップの中で、この「第三者視点」を持ちながら、ファシリテーションをします。ユーザーと同じ、あくまで中立の立場で。また、ファシリテーターとして、場を盛り上げたり、話をまとめたりするのはもちろん、WEBやUX、アンケートデータ解析などに関する知識も用いながら、話を深掘りしていきます。

 

─── 専門家の集団であるIMJだからこそのファシリテーションですね!
 

佐藤:あとは一度作ったカスタマージャーニーマップを見直すことも大切です。時代は変わり続けますし、LINEやUberなどユーザーの動きをガラッと変えるサービスもどんどん生まれていますよね。一度作ったカスタマージャーニーマップは「仮説」と思って、世の中の変化、ユーザー行動の変容に合わせてチューニングしなければいけません。

予算がネック……まずはスモールスタートで

─── 成果をもたらすカスタマージャーニーマップを作るためにはポイントがいくつかあるのですね。ここで気になるのがやっぱり……予算! 予算をあまり掛けられない、もしくは予算を掛けてもそれに見合う成果を上げることができるのか疑問、と感じている方が多いかと思います。
 

佐藤:今回のセミナー参加者に事前にアンケートを取った結果、多く挙がっていたのが「費用対効果が分からない」という声でした。そこでまずは小さくコンパクトに始めてみるのがいいかと思います。社内メンバーを集めて、短時間でやってみるのです。調査データもすでに持っているものを使えばいいと思います。仮説や推測も交えながら取り組むことで、課題や解決案のヒントも見えてきて手応えが得られますし、なにより参加者が「カスタマージャーニーマップ……ちゃんと作らなきゃ!」と開眼するきっかけにもつながります。完璧なものを作るというよりは、さくっと作って、時代の流れも見ながら修正・改善していくというイメージでいいかと思います。

 

─── 調査データがまったくない、という場合はどうしたらよいでしょうか?
 

佐藤:おすすめは「機縁法」の活用です。対象とするサービスやWEBサイトを利用している社員やその友達・家族といった方たちに協力してもらう手法ですね。そのような方たちにアンケートやインタビューを実施して、取得できた内容は立派な調査データです。あとはカスタマージャーニーマップ作成を人材育成の一環として研修費から捻出するという技もありますね! 予算取りもしやすくなるのではないでしょうか。

 

─── なるほど! 費用を抑えたり、捻出したりする方法はいくつかありそうですね! 
 

見るべきは「ダークサイドUX」

川野:カスタマージャーニーマップ作成経験がある方たちの声で多くあったのが「作ったカスタマージャーニーマップが本当に正しいか分からない」というものでした。その原因としては、やはり調査データの不足が大きいかと思います。後からでもいいので、ここはちゃんと事実の補強をしたいです。ある程度出来てきたカスタマージャーニーマップについて社内メンバーに意見を聞くのもいいと思います。
そうすることで、前述の「オラオラCJM」にならないよう気を付けてほしいです。「キラキラUX(ユーザーエクスペリエンス)」ばかり見ていると、「オラオラCJM」を生み出すことにつながります。ちゃんと「ダークサイドUX」を見た方がいいですね。

 

─── えっ! キ、キラキラUX!? ダークサイドUX!? な、何ですかそれは?
 

川野:まず「キラキラUX」は「オラオラCJM」で頻出します。たとえば、アプリをすぐダウンロードする、メルマガをすぐ見る、TVCMを見たらすぐ検索する……、まさに企業目線のキラキラとした理想的なユーザー像です。でもそんな人ほとんどいませんよね!

 

─── 確かにめったにいませんね! その逆が「ダークサイドUX」ですか?
 

川野:そうです。ダウンロードしない、メルマガ見ない、検索しない……、といった人のダークサイド(ネガティブな行動、本音や正直な心理)を分析して作られたユーザー像です。でもそうやってユーザーの不満やその先の課題を見つけるのが大事です。なぜダウンロードしないのか? なぜメルマガを見ないのか? そして、それらを解決するためにはどうすればいいのか?と考えることが重要です。

 

─── 「キラキラUX」ばかり見ていると考える材料も出てこないということですね。「ダークサイドUX」はカスタマージャーニーマップ作成の肝といえそうです。
 

佐藤:IMJではその「ダークサイドUX」を見つけるためのファシリテーションを心がけています。

カスタマージャーニーマップは課題解決や改善案創出の手段

─── 目的の明確化、さまざまな調査データの収集、第三者視点、「ダークサイドUX」……。今回は成果につなげるカスタマージャーニーマップ作成のための重要キーワードをいろいろとお聞きすることができました。
 

川野:まずはお気軽にご相談いただければと思います。IMJでは、カスタマージャーニーマップ作成のワークショップを実施する前に、まずは企業様が持つ課題を深くヒアリングして、カスタマージャーニーマップの目的を定義します。ただ、あくまでも最終目的は課題解決なので、場合によってはカスタマージャーニーマップ以外の調査分析方法をご提案するかもしれません。

 

─── 企業に寄り添って、幅広い手法で支援をしてくれるということですね。
 

佐藤:ユーザー視点を踏まえた企業様の課題解決や改善案を検討するためにベストな手法を模索します。カスタマージャーニーマップ作成だけではなく、あらゆるソリューションを提案、実施させていただきます。

 

─── 「カスタマージャーニーマップってよく分からないし、作っても意味がないよな……」と思っている方々は、決して諦めずに今回のお話を参考に、成果につながるよう頑張ってほしいですね! 佐藤さん、川野さん、貴重なお話、ありがとうございました!