9月中旬のロンドンは少し肌寒く、秋の始まりを感じられる気候でした。店舗視察当日はイギリスのイメージを裏切らない雨。そんな中、同行していただいた株式会社キタムラ・執行役員の逸見さんの熱意ある説明を頂きながら、雨が降り続ける中で回った店舗は7カ所! イギリス特有の傾向も踏まえて、各店舗の事例をご紹介します。

カタログ通販のリアル店舗版!? Argos

 

最も面白く、イギリス独自の取り組みをしていると感じた店舗。「Argos」は1869年に創業し、日用品から玩具、家電製品まで約4万アイテムも取り扱っているのですが、幅広い商品数にも関わらず、店内はカタログ兼注文用タブレットと決済端末、そして店舗受取ができる窓口のみの作り

 

買い物方法も、非常にシンプル!

1.ネット注文→店頭受取(or 配送)

イギリスでの家庭単位でのカタログ販売普及率は8割といわれていて、ネットで注文し、店頭に受取に来る消費者も多いようです。

2.店内タブレットで商品選択→専用端末で決済→商品受取

店内タブレットを使って約4万アイテムの在庫から購入したい商品を選択。その横には分厚いカタログも置いてあるので、もちろんそこから選ぶこともできます。在庫が店舗内にあればそのまま受け取れ、なければ他店舗から取り寄せ、後日の受取・配送も可能。

また返品も可能で、保証期間内に壊れた場合などには新品と交換してくれるサービスもあるため、消費者は安心して購入することができます。実際、店内でもカタログを見ながら買い物をするお客さんがチラホラといて、違和感なく使われている様子が見受けられました。

 

 

最近日本でもショールーミングが話題になってきていますが、ショールーミングは在庫を持つ必要もなく、実際商品の良さを確認し購入するメリットはある一方で、商品陳列数の制限などデメリットもあります。Argosの場合は、大量のアイテムの中からすぐ手に入れることが可能なことが最大のメリット。

共にメリット、デメリットはあるものの、共通して言えることは、店舗面積は最小限でいいこと、オンラインとオフライン(実店舗)がシームレスなため、消費者の行動を分析して、商品の購入を促せる可能性が大いにあるように思えます。実際Argosでも最近ではオンラインと連携したリコメンドや顧客分析を行っており、消費者に対してよりスムーズな買い物体験を提供しているとのことでした。

Click & Collect(クリック&コレクト)の成功事例 John Lewis

「TESCO」や「Sainsbury」のスーパーでも当たり前のように展開されていたのが、“Click&Collect”。Click&Collectはネットで注文した商品を、店舗や受取専用場所で受け取ることができるサービスで、イギリスは共働き家庭が当たり前ということもありClick&Collectが早くから導入されており、消費者の利便性を高めているようです。どの店舗に訪れても、受取場所が非常に分かりやすい場所に確保されていて、Click&Collectのイギリスでの定着具合、消費者の利用頻度の高さがうかがえました。

 

 

とりわけ、「John Lewis」は、Click&Collectで売上に大きく寄与しており、2014年のクリスマス商戦では、オンライン売上は前年比19%UP、そのうち56%のオンラインユーザーが店頭に訪れる結果を導いた実績もあります。店舗も平日にも関わらず、店内には活気もあり、Click&Collectも多く利用されているようでした。

 

 

日本でも無印良品やセブン&アイ・ホールディングス、タワーレコード、大丸松坂屋など店頭受取サービスが普及してきていますが、このように多様化する消費者のニーズに応え利便性を向上させることは、顧客との接点拡大にも繋がるため、今後さらに導入する企業が増えていくこと予測されます。

 

デジタル活用で洗練された接客 BURBERRY

デジタルマーケティング戦略で地位を築いた「BURBERRY」。ファッションショーをWeb上でライブストリーミングし、その場でSNSと連携して商品購入できる仕組みは有名ですが、店頭でも多くのデジタル展開がなされていました。

全スタッフがiPadを携帯しており、接客の際にも気になる商品の全ラインを即座に見せてくれ、在庫まで確認。リアルとデジタルを融合させ、顧客にストレスを与えない接客を実施していました。
その他にも、各所にデジタル要素を取り入れており、スタッフも違和感なくデジタルを取り入れている光景がやはり一流! 非常に気持ちのいいショッピング体験でした。

 

 

個人的には、デジタルを各所に取り入れていることが“BURBERRYのすごさ”ではなく、スタッフ含め店舗が、デジタルを活用して、よりブランド価値を高めて、その世界観と共に顧客体験を提供できていることが、“BURBERRYのすごさ”であり、これこそ今の小売業界には求められているモノだ、と店舗を訪れて再認識することができた時間でもありました。

日本でも、昨年9月にテクノロジーを融合した新店舗を新宿にOPENしており、ロンドンからリアルタイムにデジタルコンテンツを配信するなど、本店と同等の世界観を演出しています。このようなブランド統一で顧客体験を提供できることが価値であり、結果として顧客エンゲージメントにつながるのだと思います。

【番外編】世界最大級のデジタルの祭典dmexco!

ロンドン店舗視察がメインではあったのですが、せっかくなので世界各国から5万人以上のデジタルマーケターが集まり、950以上もの企業が出展するといわれている“dmexco”にも参加してきましたので、レポートをお届けします!

dmexcoのポイント!

1. キーワードは、「VR、IoT、Cognitive world」。テクノロジーとマーケティングを融合し、最適化した上で提供すること。

2. テクノロジーを活用して、いかに顧客のニーズに応えた“体験”を作ることができるか、また、そのユーザー体験を共有することができるかが求められている。

3. 膨大なデータの中から消費者インサイトを見極めて顧客エンゲージメントを高めることが重要。

最後に

dmexcoでも、ロンドンの店舗視察でも共通して感じたのは、今やデータを取得することやテクノロジーを活用することは当たり前の世界であり、いかに顧客のニーズに合わせて魅力的な顧客体験を提供できるかが重要視されているということでした。

日本でもオムニチャネルは浸透してきていますが、オムニチャネル戦略は部門間の垣根を超えたマーケティング戦略も求められることから、経営トップが声を上げて推進していく実行力、システムとデータのシームレスな連携が必要不可欠であり、多くの企業が課題を抱えているのも現状です。

テクノロジー自体は、アメリカや諸外国と比較して大差はなくなってきていますが、この課題をクリアすることで、商品(製品)だけで満足させるのではなく、テクノロジーやデータ、アイデア(クリエイティビティ)の組み合わせで、“自然な形”で顧客を満足させ、真の価値提供ができるのです。
日本でもオムニチャネルが定着する日がくるのが楽しみです。

 

※参考サイト UK online sales exceed £100 billion in 2014