お客様の総数503名。早々に席が埋まってしまったセッションが出るなど、会場はまさに満員御礼状態。I・CON 2015もたくさんのお客様に来ていただきました。最先端のデジタルマーケティングを実践する方々の、生の声を体感できる貴重な1日。その中から、パネルディスカッション、データドリブンセッション、カスタマーズエクスペリエンスセッションの3つのセッションをお伝えします。

パネルディスカッション:「デジタルマーケティング現場最前線からの提言。 魅力ある顧客体験を提供できる企業だけが生き残る」

パネリスト:

平林泰直氏 キヤノンマーケティングジャパン(株)コミュニケーション本部 デジタルマーケティングセンター所長(写真左上)

笹間靖彦氏 資生堂ジャパン(株)日本事業本部デジタル事業部 部長(写真右上)

西村健氏 全日本空輸(株)マーケティング室マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム(写真左下)

モデレーター:江端浩人 (株)アイ・エム・ジェイ執行役員CMO(写真右下)

 

まずは自己紹介、それぞれのデジタルマーケティング観

江端浩人:(株)アイ・エム・ジェイ執行役員CMO

モデレーターとして、株式会社アイ・エム・ジェイ(以下IMJ)CMO江端浩人が舵を取りつつ、3名のマーケッターから具体的な事例や個々の考えを引き出しました。

最初に、江端からWorld Marketing Summitの2014から2015への流れや、自身が進める次世代マーケティングプラットフォーム研究会の報告などをまじえて、最新のデジタルマーケティング業界の動きに触れました。

「2015年のMarketing Summitで提唱された『デジタル化か、死か(Digitize or Die)』という言葉どおりに、いまやデジタル化しか道はない、というのが業界の通説になりつつある」と江端は締めくくり、デジタルマーケティングを推進することの重要性を強調しました。

 

今回のパネリストはデジタルマーケティングを組織内で確立し、独自の道を歩むマーケッターである、全日本空輸株式会社西村氏、資生堂ジャパン株式会社笠間氏、キヤノンマーケティングジャパン株式会社平林氏の3名。

まず全日本空輸(以下ANA)の西村氏が社内のデジタルマーケティング組織について説明しました。

西村健氏:全日本空輸(株)マーケティング室マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム

ANA西村氏:「SNS、モバイルサイトの活用など“旅”をベースにしたアプローチが、ANAらしさを体現するものと言えるでしょう。注目は海外のモバイルサイトですね。今、『アジアが熱い』ですから」

そして、10月から稼働しているANA STAR WARS PROJECTの動画を公開。映画のテーマ音楽をバックにR2-D2ペイントのボーイング787などが飛ぶ映像が流れ、会場に高揚感があふれます。日本を経由して他国に移動する“三国間流動”も対象で、ペイント機を使用する便は発表直後から次々と満席に。

ANA 西村氏:「このプロジェクトはオフラインのデータを集め、オンラインの行動データと合わせてキャンペーンを打ち、大きな仕込みができた事例。アプローチの方法はいろいろありますが、データをどう活用し、顧客を満足させるかが現状の課題です」

 

続いて、資生堂ジャパン(以下資生堂)の笹間氏。株式会社資生堂は企画・マーケティング部門を新たに販売子会社に統合するなど組織改革を推進、2015年10月1日に資生堂ジャパン株式会社が誕生し、新体制で顧客へのアプローチを試みています。笹間氏は個別ブランドのイメージ構築、商品紹介、オンラインショップなどを総合的に展開する『Watashi+』を例に挙げて資生堂の戦略を紹介。

笹間靖彦氏:資生堂ジャパン(株)日本事業本部デジタル事業部 部長

資生堂笠間氏:「WEBとリアルを融合し、お客様との絆を深めるのが目的。WEB+マーケティングが核としたブランド戦略をさらに進め、勝ちパターンを蓄積していきたい」

最後に、メイクアップで女子高生に変身した男性が登場するCMで話題を集めている“High School Girl? メーク女子高生のヒミツ”を紹介。

資生堂笠間氏:「このCMは若い世代との接点をつくるために制作したものですが、再生回数800万という大きな成果が得られました。こういった動画広告をデジタルマーケティング上でどう位置づけ、活用するのかも今後重要になるはずです」

 

事業紹介のラストはキヤノンマーケティングジャパン(以下キヤノン)の平林氏。「新しい体制で試行錯誤を重ねる渦中にあり、私の話はほとんどが受け売りです。お許しください」と会場の空気をつかみつつ、キヤノンの組織と事例を紹介していきます。

平林泰直氏:キヤノンマーケティングジャパン(株)コミュニケーション本部 デジタルマーケティングセンター所長

キヤノン平林氏:「キヤノンは多種類多用途にわたる製品を“製販分離”で流通にのせ、成果を上げている。自社のマーケティングすべてを我々が直接やっているわけではないが、BtoB、BtoCいずれも、顧客視点からマーケティングを見直すことが重要と感じています。マーケティングの中でデジタルをどう使うか、さまざまなデータソリューションをどのように利用するか、考えなくては」

ここで提示されたのが、当代と先代のローマ法王就任式の2枚の画像。2005年ではガラケーで撮影している人がほんのわずかいる程度ですが、2013年はほぼ全員がスマートフォンなどを手にして撮影しています。

キヤノン平林氏:「デジタルの世界ではこれだけの大きな変化があり、SNS普及の影響も大きい。オウンドメディアをマーケティングプレースとして位置づけるためにデジタルマーケティングセンターをつくり、各製品の事業部門と連携するようになりました」。さらに「デジタルマーケティングの推進には、IT本部との連携が重要」と、さらなる課題が挙がりました。

 

それぞれの“顧客視点”と “ビッグデータの活用”

第1のキーワードは“顧客視点”。

IMJ江端:「顧客の立場から考えるデジタルの役割や位置づけを、それぞれに伺います」

ANA西村氏:「デジタルの世界でも空港での接客などをふまえた、人とのていねいなコミュニケーションが大切。その反応はFacebookの“いいね”でもよい。“なんとなく、よさそう”という反応が集客につながっていくはず」

IMJ江端:「FacebookでSTAR WARSのボーイングを見たら、みんな“いいね”をプッシュしますよ。そこから乗りたい、乗ろうとなる。大切な流れと思います」

資生堂笠間氏:「1日は24時間しかないなかで、お客様が化粧、Beautyにどれだけの時間を割いていただけるか。その時間を増やすためにも、現代ではデジタルツールは重要ですね」

IMJ江端:「顧客のPOSデータを利用してリアルにつなげるなど、分析等はいかがですか?」

資生堂笠間氏:「現状ではPOSからの直接的なデータ解析は行っていないので、それも課題のひとつかもしれません。デイリーのデータを有効に活用できればと思っています」

キヤノン平林氏:「市場が細かく分かれているので、そこでお客様を結びつけるパーソナルデータが重要。それをどう扱っていくかを考えていきたい」

IMJ江端:「BtoBならWEBの訪問履歴を利用するなど、ピンポイントな対応ができそうですね」

キヤノン平林氏:「法人のお客様で、思いがけずWEBの閲覧記録が大きな購入に結びついた事例もあります。“製販分離”のキヤノンでは、とくに新しいソリューションでは営業部門とデジタル事業部の連携も大切です」

 

第2のキーワードは“ビッグデータの活用”。

IMJ江端:「ビッグデータをどう活用しておられるのか、具体例を伺いたい。マーケティング・オートメーションの導入も気になるところです」

ANA西村氏:「デジタルマーケティングとエアラインの情報は親和性が高いという専門家の意見がある。さまざまな活用法があるが、大切なのは余分な情報は使わないということ。最近はクレジットカード会員の獲得に応用しており、早めにアプローチしています」

IMJ江端:「カードの情報は航空券以外の販売部門にも応用できるかもしれません」

ANA 西村氏:「ショッピングモールの整備などにつなげたり、いろいろ試すことができそうです」

資生堂笠間氏:「化粧品の販売データは、パーフェクトなサンプリングとして有効活用しています」

IMJ江端:「データを組み合わせることで、たとえば定期的な購買に結びつけることもできそうですね」

資生堂笠間氏:「定期的な購買は効果があると思う。化粧品はお客様のクラスチェンジが難しい商品ですが、トライアルしやすいような仕掛けを作るなど、方法を考えたいです」

キヤノン平林氏:「ターゲッティングの段階でデータを活用中。BtoBの顧客がBtoCに結びつくこともあり、相互的な構築が必要と思う。マーケティング部門で、個別のデータをリアルにどうつなげるかが課題です」

IMJ江端:「御社ならではの新しいアプローチ、期待できそうですね」

3社それぞれの分析と成果、課題についての報告は、まさにデジタルマーケティングの“今”を表わすもの。そのなかで“顧客”へのアプローチはどのように行われているのでしょうか。続いてのパネルディスカッションで、江端はそれぞれにキーワードを投げかけます。

気になる“社内風土”や “人材育成”の方法は?

第3のキーワードは、それぞれの“社内風土”。

IMJ江端:「IT部門や営業部門などの現場から協業で“顧客視点”をどう捉え、活かすのでしょうか?」

キヤノン平林氏:「各部門連携し、製品をお客様にどう役立てていただくか、ということを、常にみんなで考えています」

IMJ江端:「協業で行うことが大切ですよね」

キヤノン平林氏:「我々メーカーは“製品ありき”で企業自体ができあがってきているので、全体をシフトチェンジするのはなかなか難しい。でも、そこを改革していかねばなりません」

ANA西村氏:「顧客志向は会社の理念でもあり、入社前から意識させられる部分です」

IMJ江端:「そういう意味では、とてもやりやすい環境ですよね」

ANA 西村氏:「そうですね。IT推進部門も業務プロセス改革室に集中させているため、分散することもありません」

資生堂笠間氏:「各部署で予算なり目標があってなかなか難しい問題ですが、『Watashi+』のようにブランド展開、告知、販売などを総合的に扱うシステムで、各部門連携できるという強みはあります」

IMJ江端:「それぞれの評価などもわかりやすくできればよいですね」

資生堂笠間氏:「うまく連携できる方法を考えたいですね」

ディスカッションはさらに進み、最後のキーワード“人材育成”へ。

IMJ江端:「デジタルマーケティングの人材は、社内、社外と会社により居場所も異なりますね」

資生堂笠間氏:「今は改革のときですから、人材の発掘も育成も、新たなチャレンジが必要と考えています」

キヤノン平林氏:「人材は“まず現場から”と考えています。経験から得られる発想は何よりも大切です。そこから発掘する価値はありますよ」

ANA西村氏:「人材の育成は、組織内での立場からチェックし、モニタリングをして効率的に進めています」

各社のカラーが垣間見える応答がずらり。ほかに“人材交流”などの話題も挙がりました。

デジタルマーケティングのさらなる未来に期待を込めて、「スピードと高い専門性が求められるデジタルマーケティング業界では、弊社のようなデジタルエージェンシーが活用される余地は多分にあり、この情報はとても大きな意味を含みます」と、江端が総括し、タイムアップ。終了後も演壇のまわりに人が集まり、会場は長く熱気に包まれていました。

 

パネルディスカッションを終えて(江端浩人)

デジタル・CRMの分野で活躍されている第一線の皆様にお忙しい中登壇いただき、素晴らしいセッションになりました。

素晴らしい成果を上げながらも皆さん苦労されている点も多く、今後色々な形でお手伝いできればと思いました。ありがとうございました 。

 

続いては、データドリブンセッションとカスタマーエクスペリエンスセッションの2つのセッションをレポートします。

I・CON 2015 レポート #2 ビッグデータ時代をどう生き抜く?データ活用とクリエイティブの融合