ゲストスピーカー

西井 敏恭氏

オイシックスドット大地 執行役員 / 株式会社シンクロ代表取締役社長

 

※本記事は2018年1月31日にIMJにて開催されたインバウンドセミナーでの西井氏の講演内容を編集した記事となります。

オンラインの口コミはインバウンド対策の必須要素

西井氏は世界一周を2度も経験されている「プロ」旅行者。1回目の世界一周と2回目の間に約10年のブランクがあるということで、まずは旅行における情報収集のトレンドがこの10年でどう変化したのかについて伺いました。

西井「昔は『地球の歩き方』や『ロンリープラネット』といった紙のガイドブックが主な情報源でした。もちろん今も多くの旅行者がガイドブックを利用していますが、昔と今で大きく異なるのは、やはり情報収集のデジタル化ですね。特に海外の旅行者は、ほぼ間違いなくオンラインの情報に触れています。旅行先の情報収集からホテル予約などのアクションまで、すべてをネット経由で行っていることが多いように思います」

トリップアドバイザーやブッキングドットコムなどのグローバルの旅行情報プラットフォームは、旅行者にとって欠かせない情報収集手段だと語る西井氏。旅行検討段階である「旅マエ」もさることながら、旅行中の「旅ナカ」においてもオンラインでの情報収集は欠かせないとのこと
また、「旅ナカ」での体験をマーケター視点で考えたとき、旅ナカで一番使うのはGoogleマップのアプリとのことで、Googleアプリひとつとってもいろいろやるべきことはありそう、と西井氏は言います。

旅行者の良い体験を、オンライン上の口コミという形でケアすることがマーケターにとって重要。

西井「Googleマップは、旅行者の利用率が非常に高いアプリで、オフラインでも使えるようになってからますます旅行に欠かせないツールとなっています。Googleマップで検索しても目的地が出てこないとストレスですし、場所がずれていると目的地にたどり着かないことも度々あります。他にも、Googleマップで調べた目的地の口コミなども、見ている人は増えてるのではないでしょうか。
もちろん、行く先々での体験が素晴らしいものであることは大前提なのですが、加えてちょっとした心遣いがあると、Googleマップ上の旅行者の口コミにも、ポジティブなものが増えると思います例えば自分のお気に入りのお寿司屋さんでは、カウンターの下に電源が1席ずつ用意されているんです。旅行中ってスマートフォンの電源の減り具合が気になるので、こういう心遣いは嬉しいですし、つい誰かに言いたくなりますね」

海外を旅行中に店主から良い口コミを書いてくれと頼まれたこともあるという西井氏。心地よい体験の後だったので快諾をしたそうです。Googleマップで表示される口コミにポジティブなものが多ければ、その場所へ行くモチベーションも上がるので、旅行者に口コミを促すことも大切なのかもしれません。しかし、それも「心地よい体験」があってのこと。まずはそこを心がけなければなりません。
またGoogleマップだけではなく、他の旅行系プラットフォームでの口コミのケアも重要だと西井氏から指摘がありました。誰もがオンラインで検索して、口コミの評価を気にする時代だからこそ、自社サービスがどのようにコメントされているかの確認は、マーケティング戦略上欠かせないということですね。

フランス旅行業成功の秘訣は“祭りマーケティング”?

インバウンド対策を検討した際にやはり気になるのは、インバウンド先進国の事例。世界一の旅行者数を誇るフランス(※)の成功の秘密を伺いました。

※フランスは30年以上観光客数で世界一、2015年には8,450万人が訪れている
http://www.arange.co.jp/news_inbound_france_1_20160815/

西井「フランスって国土も狭いし、実はそれほど大きな観光地もない。英語もあまり話さない。だけど、世界中からたくさんの観光客が訪れています。ではなぜあんなにフランスに観光客が訪れるかというと、ひとつは様々なお祭りをしているからではないか、という話を聞いたことがあります。映画祭などで有名なカンヌが分かりやすい例です。元々カンヌはこれといった観光資源のない港町だと思うのですが、映画祭や、F1グランプリ、カンヌライオンなどのイベントを開催することでとても有名になり、世界中から才能溢れる人たちを集めて、ホテルやレストランなどの関連消費を促すことに成功しているように感じます」

もちろんフランスにはパリのように歴史や文化の面でも魅力的な観光資源があります。ただそれだけではなく、イベント=祭りを起点とした観光客誘致を国策として進めていることが、観光客世界一の大きな要因となっているとのこと。体験を重視したいわゆる「コト消費」が、インバウンド成功のポイントなっているのかもしれません。では、日本ではどうでしょうか?

西井「日本でも世界中に注目を浴びる祭りの開催は可能だと思いますよ。もちろん、ねぶたや祇園祭などの伝統的な祭りもありますし、ゼロから新しい祭りを外国人視点で作ってもよいのではないでしょうか。例えば、寿司フェスティバルを開催しても面白いと思います。近年、日本酒が世界的に人気なので、酒蔵とコラボレーションしたイベントとかは、訪日旅行者にも受けがいいのではと思います」

課題はマインドセットの転換

 西井「自分が感じるインバウンドマーケティングの最大の課題は、日本人の内向きのマインドセットです。マインドセットの転換は、インバウンドマーケティング成功の大きな鍵だと思いますね。さきほどお話ししたような、日本酒を飲みながら地元の日本人と交流できるようなイベントって、旅行者にとって魅力的なコンテンツであると同時に、日本人にとっても良い機会だと思うんです。お酒を媒介とすることで日本人の内向きのマインドセットがオープンになって、外国人とコミュニケーションしやすくなるのではないかと思います」

130カ国以上を旅した西井氏だからこそ感じる、日本人の内向きのマインドセット。外国人と積極的にコミュニケーションをすることが好きな人たちももちろんいますが、全体としては排他的で内向きの「空気」を感じることが多いそうです。インバウンドマーケティングを発展させるためには、まず旅行者を受け入れるオープンなマインドを作っていくことが重要なのかもしれません。UberやAirbnbなどライドシェアや民泊のサービスなども日本では規制面からなかなか浸透していません。以前アメリカでUberに乗ってる時、運転手は60歳の女性でした。スマホを使いこなして楽しんで仕事をしている姿をみて、なかなか日本人の同年代の人にはできないことだな、と感じたそうです。
また、このようなソフト面だけでなく、ハード面にも日本のインバウンドマーケティングの課題があると西井氏は言います。

2017年1月、ローソンはアリペイを国内全店舗に導入した。※画像引用元:記事末尾記載*1

西井「wi-fi通信環境の悪さや、クレジットあるいはモバイル決済の浸透率の低さといったハード面の課題も、日本はとても多いと思います。決済に関しても、日本人の現金崇拝志向は世界の中でも異例です。ここでもモバイル決済などの新しい手段への排他的なスタンスを感じてしまいます」

確かに海外旅行時は、日本人でもクレジットカード決済の機会が多いですし、現金を両替して持ち歩くことの不便さを感じます。近年インバウンド対策として、アリペイ(※)を決済手段として導入した小売店で、訪日客からの売上が増加したといった記事を目にすることも増えてきました。これらの新しい技術の導入に関しても、まずは自らが旅行者としてその利便性を体験してみる、といったオープンなスタンスが大切なのかもしれません。

(※) アリペイ(Alipayあるいは支付宝)は、アリババ(阿里巴巴)集団のQRコードの読み込みによって決済ができるサービス

体験価値の向上が口コミを生み、口コミが訪日リピートを生む

西井氏のお話から、訪日旅行者の体験価値向上のポイントが見えてきました。重要なのは、旅行者目線で彼/彼女らの負担を軽減するような気配りを提供することであり、そういった小さな気配りの積み重ねが、旅行者の「良質な体験」へとつながるのではないでしょうか。
またマーケターにとって重要なのは、それらの体験をきちんとオンライン上の口コミという形でケアすることで、訪日リピートへとつなげることです。多くの外国人にとってはまだまだ日本はなじみのない国かもしれませんが、訪日旅行者の体験に基づいた口コミこそが、日本への関心を呼び起こし訪日リピート客の増加につながるのだと思います。

 

IMJでは、インバウンドマーケティング支援サービス 「wanokoto」を提供しています。
日本を訪れる外国人旅行者の「旅マエ」「旅ナカ」にターゲティングし、最適なプロモーションサービスの支援を行います。

詳しくはこちらの動画をご覧ください。

 

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https://www.imjp.co.jp/news-seminar/seminar/2018/0228/

IMJでは、訪日旅行者への体験価値向上のヒントをさまざまな分野の第一人者との対談を通して探っていくセミナーを開催しております。 第2弾として、2018年2月28日(水)に無料セミナー「体験予約サイトの実績データから読み解くナイトタイムエコノミー」を開催。 本セミナーでは、観光庁 観光資源課の太田雄也氏、株式会社Voyagin代表取締役である高橋理志氏に登壇いただき、それぞれの立場から今注目の「ナイトタイムエコノミー」に焦点を当て、訪日外国人旅行者の体験価値向上についてご講演いただきます。 ぜひご参加ください。

【お申し込み締め切り】2018年2月22日(木) 12:00

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