はじめに:「香川照之の昆虫すごいぜ!」とは?

(公式サイトhttp://www.nhk.or.jp/school/sugoize/より)

とある民放テレビ番組で香川照之さんが発した「Eテレで昆虫番組がやりたい!」という希望をNHKのディレクターさんが聞き漏らさず、すぐに本人にコンタクトをとり、実現化させた!という、生い立ちしてから熱い番組。
初回放送後、カマキリ先生に扮した香川さんの昆虫への偏愛ぶりへの大きな反響を受け、その後不定期でシリーズ化し、現在6回の放送を完了している。

1. どんどん盛り上がっているのがすごい!(グーグルトレンドデータより)

まずは、グーグルトレンドで検索ワードによる関心度の推移を見てみました。

グラフ①(算出ツール:GoogleTrends  https://trends.google.co.jp/trends/)

グーグルトレンドは検索ワードによる関心度が最も高かったタイミングを100とする相対的なグラフですが、放送を重ねるごとに徐々に関心があがってきている様子がわかります。
直近の放送(2018年5月)がこれまでのマックス値を記録しています。

2. 放映日の実況ツイートがすごい!

では、放映されると、なぜこんなに検索されるのか? これに関連したデータを見ていきましょう。
 
日本国内のツイートに含まれるワードの出現回数の急上昇度合いでランキングを発表しているついっぷるトレンドで、6回目の放送直後5月3日10時の段階でのHOTワードランキングを参照してみました。(表1)
なんとTOP10のうち7つが番組に関連するワードで占められていました!

表1(参照元:ついっぷるトレンド https://tr.twipple.jp/)

実際のツイートを見ていると、毎回期待を超えてくる香川さんの昆虫への偏愛ぶりや飛び出す名言、名シーンに思わず実況ツイートや感想ツイートで盛り上がる姿が見られています。

さきほどみたデータの検索トレンドが上昇する理由は、もちろん番組を見た視聴者が検索するというケースもあると思いますが、見ていなかった人も、ツイッター上のトレンドワードとして目にする、もしくは自身のタイムライン上で目にして、気になって検索するという行動の連鎖が想定されます。

3. NHK公式の告知に対するRT数がすごい!

つぎに、これまでの放送回について、NHK公式ツイッター(@NHK_PR)の告知ツイートに対するリツイート数を見てみましょう。
毎回このように公式から告知しています。

グラフ2は、各放送回について放送を告知した際の公式RT数です。

グラフ2(参照元:Social Insight)

初回においては2000台だったRT数ですが、2回目決定のときには10000まで跳ね上がり、その後も常に、初回を下回ることなく高い数値をキープしています。

ちなみに2回目と4回目の告知が群を抜いて高いRT数を叩き出していますが、おそらく2回目は、そもそもシリーズ化するかどうか不明だったため、シリーズ化決定の喜びや驚きが高く、ニュース性が高かったため。また、4回目の発表は3回目の特別編からあまり間が空いていなかったので余熱が残っていたために高くなったのかもしれません。

ここには掲載していませんが、各回の再放送を告知する投稿でも5000RTを超えるなど、一定数いるファンが番組を積極的に広めようとしている姿が想像できます。また、不定期の放送であるせいか、「今日ですよ」「見逃した方は、再放送を!」と公式さながらのコメントをつけているような発言も多くみられます。

ただ、このデータだけだと、NHK_PRの他の番組告知への反応との比較ができずスゴさが伝わりにくいと思いますので、参考までにこの番組が放送を開始した2016年10月~2018年5月11日までの約1年半の間のNHK_PRのツイッター投稿について、RT数でのランキングを出してみました。

表2(参照元:Social Insight)

なんと上位25投稿のうち、6投稿が「昆虫すごいぜ!」の告知に関するものでした。
紅白や大河ドラマといった国民的番組の告知や、ガンダムや進撃の巨人といった熱狂的な固定ファンのいるコンテンツに続いて、本番組がランクインする様子をみると、人気の高さがうかがい知れます。

4. 見えてきたのは、バズではなく、ファンとの絆

データをみながら、感じたことは単なる「バズ」「話題性」ではなく、勝手に「宣伝してくれるファン」がキーになっているということ。
見えてきたのは、自ら宣伝してくれるファンの存在と、期待に応えるべく頑張るNHKさんという絆で結ばれた関係性です。

ファンが自ら公式RTや実況ツイートで広めてくれる→トレンドワードやタイムラインで露出が増える→気になって検索する人が増える→コンテンツを見る人が増える、というファンがファンを呼ぶサイクル。
そして、ツイートなどでファンの声が可視化される→ファンを意識したコンテンツ作りや語り掛けできる→ファンが喜び、応援・感謝してくれるという、ファンの熱量をあげる2つのサイクルが浮かび上がってきました。(下図)

ここまできて、最近拝読した本を思い出しました。「こ、これは、今、マーケティング界で注目を集める『ファンベース』(佐藤尚之氏)にも通じるのでは?」。

たしかに、ファンとは、商品そのものではなく、「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」という定義にもあてはまっていそうです。番組そのものが好きなのはもちろん、「このような番組を実現してくれる。やり続けてくれる」という価値感に共感しているように思えます。

さっそく、さとなおさんが提唱するファンベース3カ条に当てはめてみましょう。

3カ条とは以下です。

1カ条:共感を強くする

(企業・商品・ブランド自体の価値を上げる)
 A.ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
 B.ファンであることに自信を持ってもらう
 C.ファンを喜ばせる。新規顧客より優先する

2カ条:愛着を強くする

(ブランドや商品を他に変えがたいものにする)
 D.商品にストーリーやドラマを纏わせる
 E.ファンとの接点を大切にし、改善する
 F.ファンが参加できる場を増やし、活気づける

3カ条:信頼を強くする

(真の意味での企業の評価・評判を上げる)
 G.それは誠実なやり方か、自分に問いかける
 H.本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
 I.社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

(『ファンベース──支持され、愛され、長く売れ続けるために』佐藤尚之著)

この3つに『昆虫すごいぜ』を当てはめてみると…

1カ条(共感):

ファンの声を傾聴する。(SNS、お客様の声)
ファンの期待に応えて番組をシリーズ化する。

ファンの声でシリーズ化させた自信につながる。

2カ条(愛着):

番組誕生までのストーリーをメディアを通じて伝える。
Twitterでは毎回「お待たせしました!皆様!」と語り掛ける。
ファンが集える場所=ハッシュタグを定義し用意。

3カ条(信頼):

よいよりコンテンツを作り続けるために努力する姿勢を見せる。
(忙しい合間を縫って撮影できたことなどを報告する等)
ファンのため再放送や動画配信も積極的に対応する。
急なトラブルによる代替コンテンツ必要時に、すかさず要望の高い本シリーズを一挙放映する。

なるほど、ばっちりあてはまっているぞ!という感じです。
Twitterでの何気ない語り掛け方や、記事メディアを通じた発信、トラブル時の対応など、ファンベースというフィルタを通してみると、ファンとの絆づくりにとても意味のある施策に思えます。

かくいう、わたしも、頼まれてもいないのに、勝手にデータ分析して、「すごいぜ!」と広めているという時点で、お分かりのとおりカマキリ先生のファンでございますw。

最後に:

ファンが自発的に勧めてくれることで、ファンが広がっていく。
ファンの声を傾聴し、期待に応えながらいっしょに育てていく。結果的に、応援され、感謝される。
もちろんこれは、いち教育&エンタメコンテンツではありますが、今、企業のマーケティングに求められていることのヒントが得られる事例として、参考になるのではないでしょうか。


参考文献:『ファンベース──支持され、愛され、長く売れ続けるために』佐藤尚之著 ちくま新書

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