登場人(?)物
筆者
(地球人)
*{`+?>~&<$'
(サビデ星人)
貴様ごとき下級戦士が本など読んで今更どうしようと言うのだ。
戦士って何だよ。仮に戦士だとしたらそりゃ下級だわ。自信ある。
その本は貴様が自分で選んだのか。その貧弱な戦闘力で。
お前の星じゃ本選ぶのに戦闘力要るのかよ。物理的に本屋潰れるわ。この本は友人から勧められたんだよ。
ほう。貴様ごときにも友人がいやがるとはな。地球人にも物好きがいたものだ。
貴様はAmazonは使わんのか。
レビューも充実してるし、レコメンド機能も精密だろう。
うーん、ある程度の目星が付いてたりするときは良いんだけど、「何か良い本ないかな?」 とか「どっか新しいジャンルに手を出したいなー」とかって時は、Amazonだとちょっとキツいかな。
なるほど?
やはり貴様のような地球人が多いから、『一万円選書』が人気なわけだ。
なにそれ?
北海道にある『いわた書店』という、いわゆる「街の本屋」がやっていやがるサービスだ。店長である岩田という地球人が、希望者の情報に基づいて「自分じゃ出会わない、けど読むとハマりそうな本」を一万円分、無数の本の中から選び出しやがる。
超人かよ。
地球人にしてはかなりの戦闘力と言って良いだろう。
それが戦闘力なのかよ。
どんな戦い方してんだ、お前の星。
ただし希望者は、変わったアンケートに答えなければならない。
『カルテ』と呼ばれているが、まさに医者の問診票みたいなもんだ。
これか……うわっ、けっこう考えないと答えられない内容じゃん。大変だな。
- 読書歴(今まで読んだ本とその評価)
- 人生で大切にしていること
- 人生で嬉しかったこと、苦しかったこと
- 何歳の時の自分が好きか?
- これだけはしないと決めていることは?
- あなたにとって幸せとは?
しかも抽選だ。
抽選が行われるのも、年数回しかない。
狭き門にも程があるだろ。
にも関わらず、抽選の方法も、選書の判断基準も謎だ。
いいのかよそれで。
そこがこの『一万円選書』の良くできていやがるところだ。
狭き門だから渇望感が沸く、『カルテ』の回答に投資した労力を回収したくなる、選ばれる本が予測できないから期待が高まるーー。サービスデザインの肝の一つである、「ハマる仕掛け」が幾つも用意されていやがる。
岩田さんは、それを初めから設計してるってこと!?
そこは俺様でも直接聞いてみなければ分からんが、恐く違うだろうな。
むしろ岩田という地球人の戦闘力の高さはそこではなく、「本の難民」を発見し、レコメンドに替わるサービスを用意したところにある。
「本の難民」?
貴様も言っていただろう。レコメンドはイマイチだと。大多数の地球人にとって、本は、「自力で探検するには広すぎる世界」だということだ。
少なくとも本に限って言えば、レコメンドは、ある程度「自分で探検できる」、つまり「自分が求める本を、自分である程度見つけられる」猛者が恩恵を享受できるものなのだ。
「猛者」と「難民」か。
岩田という個人による「自分の"好み"の再発見」はレコメンドエンジンにはできない提供価値だろう。
難民からすれば、そんな「目利きによる自分だけの結果」は1万円の価値が十分あるということだ。
なるほど。
本探しにかかる時間と、外れを買ってしまうリスクを考えれば、確かに高くないかも。
さらに、「カルテを出す⇒自分に合った本が選ばれてくる」というのは、診断コンテンツにも似たエンタメ性がある。
仕組みの面白さがシェアを誘い、自然な口コミが生まれ、「ハズれがない」と話題になって高い信頼性にもつながっている。
本に関して、人が何に悩んでいるのか、どういう悩みを抱えた人が多いのか――。
それを考え抜いた結果、多くの人に愛される、ハマる仕掛けが満載のサービスが生まれたと。
恐らくそういうことだ。
人間中心にデザインする、サービスデザインの本質だな。
おかげで貴様のような貧弱な戦闘力でも読書が楽しめる訳だ。感謝するがいい。
えーっと、「本の世界においては大多数が猛者じゃない」ということを重ねて言っておく。お前のためでも俺のためでもなく編集部のためにな!
「一万円選書」とは…
忙しくって本屋にいけない、最近同じような本ばかりで出会いが・・・、などなど読書難民のあなたの為に社長の岩田がお薦めの本を(だいたい)一万円分選んでお届けするというサービスです。(いわた書店HPより引用)
→サイトはこちら
(監修:太田 文明(オオタ ブンメイ) R&D室 マネージャー /リードストラテジスト HCD-Net認定 人間中心設計専門家 )