日本のeコマースは 世界より圧倒的に遅れている??

加藤 日本でも多くの企業がオムニチャネルの実現にチャレンジし始めていますが、アメリカではすでに次のステップに進んでいるような印象があります。eコマースの世界が今後どうなっていくのか、とても興味深く見ているのですが、まずは海外の最新事情から教えていただけますか?


竹内 少し前の話になりますが、ラルフローレンの事例が挙げられますね。低迷した業績を立て直すためにリアル店舗をクローズして、オンラインビジネスやデジタルチャネルに資金を注入するという試みです。

加藤 ニューヨークのフラッグシップ店舗を閉めるという、象徴的なニュースでしたね。

竹内 このようなデジタルシフトはアメリカではここ10年くらいの間に行われていますが、ここまでインパクトのあるアクションをとる企業はなかったですよね。お客様の購買傾向が変わってきたことの表れでしょう。
デジタルネイティブな人が購買力を持つ世代になった今、チャットベースでコミュニケーションするのが当たり前になり、店舗での接客とeコマースでの接客に対するお客様のニーズは刻々と変化し続けています。そのようなお客様の購買活動とより強固につながるために、企業はオムニチャネルを目指しました。そして店舗とオンラインのあり方が大きく変わり、買い物はeコマースをベースにしたシステムを利用することが前提となってきています。
企業は、そのような環境下でお客様と適切なコミュニケーションをとらなければならない状況だと思います

加藤 実際、eコマース業界では日本とアメリカではどれくらいの違いがあるのでしょうか。

竹内 アメリカのSalesforceのエグゼクティブが来日したとき、日本のeコマースの状況を見て「懐かしいね」という話をしていました。
もちろん最先端のテクノロジーをとり入れているクライアントもありますが、日本のマーケット全体を見ると、eコマース業界のオムニチャネル化を含む現状は、5年以上遅れているという印象のようです。

加藤 マーケティングテクノロジーでいうと、2005~2010年頃の日本と同じ状況でしょうか。マーケティングテクノロジーの分野はその後に進化して、アメリカにだんだん追いついていきましたけれど、eコマースに関しては、現状はまだまだなんですね。
店舗、オンライン、コンタクトセンターなどさまざまな顧客接点がありますが、どのように顧客体験を提供していくのがよいのでしょうか? 一貫した顧客体験を提供するために各チャネルをどう扱うのか、課題もたくさんあると思います。
なにかヒントになるような、最近の事例はありますか?


竹内 僕自身の体験なのですが、グローバルに展開しているアパレル店舗で買い物をした話を。
サンフランシスコの店舗で試着、採寸してもらったことがあったのですが、別の機会に旅先のドバイでたまたまスーツを購入することになったんです。ドバイの店舗でもサンフランシスコで採寸した僕のデータがその場で把握できていて、接客もスムーズでした。顧客データがどこかの店舗で入力されれば、世界中どこでもそのデータはオンラインで共有され、活用されているのです。
このように場所にとらわれることなく、メール、電話、チャット等全てのチャネルを含めて顧客と適切なタイミングでコミュニケーションをとることができ、オンラインを含むどこの店舗でも、最適で顧客にとって心地よい接客ができるところが、新しいエンゲージメントなのかなと思います。

加藤 場所、オンライン・オフラインを問わずに、グローバル店舗であってもECサイトであっても、データを活用して同じクオリティの接客で顧客と向き合っているのは、新しいですね。

竹内 お客様の年齢層によって使うツールも変わりますが、特にデジタルネイティブな若い世代に対しては、タブレット、スマートフォンの上で柔軟に対応できるUIやコミュニケーションが必要ですよね。そこで、Salesforce Commerce Cloudが生きてくるわけです。

加藤 なるほど。Salesforce Commerce Cloudであれば、Salesforce製品を組み合わせて一貫した体験価値を提供できるプラットフォーム構想になっていますよね。
しかし、実際に顧客体験を設計しカスタマジャーニーを作ったとしても、それで終わりという企業もまだまだ存在します。本当は、PDCAサイクルを回して、つまり顧客体験のマネジメントまできちんとやっていかないといけないのですが。

竹内 我々はプラットフォームのテクノロジーを提供する側として、クライアント企業には初めに目指すべきビジョンをご相談するのですが、その後、運用を始めてPDCAを実践した段階でトライ&エラーを繰り返します。顧客とコミュニケーションをとり始めて、あらためて相手を知るといいますか。その段階で今まで以上の深いPDCAを回していかないと、顧客が求める本当の体験(エクスペリエンス)は提供できないと思います。
日本ではそういった仕組みを実現されているところはまだ少ないと感じています。

得意分野を活かして 未来に切り込む

加藤 今後は、広告とCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)や、リアルの店舗とeコマースサイト、ブランドサイトがつながっていく必要がありますよね。それによって一貫した顧客体験の価値を提供できると思うんです。しかし、クライアント企業の組織構成の問題もあって、全社横断的に一貫した顧客体験の価値を提供していくことも難しいところではあります。
IMJが得意としているのは、デジタルマーケティング戦略、UX、UIの設計、クリエイティブ、それとアナリティクス、データから改善ポイントを見つけ出してPDCAを回していくことですが、昨年、アクセンチュアのグループに入ったことで、アクセンチュアが得意としている業務プロセス及び組織の改善など、業務コンサルティングのノウハウも組み合わせることができるようになりました。
これによってデジタルトランスフォーメーションの支援を戦略から実行まで一貫して提供できる体制が整いました。これから面白くなると考えています。

竹内 日本でアクセンチュアとIMJがコラボレーションしたのは、業界的に大きなニュースになりました。ビジネスコンサルティングのフェーズも含めて、全体を包括できるエージェンシーが日本でも必要になってきたということですよね。
我々もパートナー様と共にクライアント企業と接するとき、一社ですべてのニーズを満たすことは難しいと感じています。今、IMJが取り組んでおられることはマーケットに非常によい効果をもたらすと思います。

加藤 例えばDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)ってありますよね。DMPは、広告だけじゃなくてCRMにも使えるものですが、実際に活用しようと思うとその環境を作って運用し活用を提案していく組織が絶対に必要になります。
我々は、DMP活用の視点から組織や業務プロセスの改善にどう踏み込んでいくか、それぞれの得意領域を組み合わせて考えているのですが、eコマースに関しても分断された顧客接点や、組織、業務をどうつなぐかが大切ですね。そこをつないでいかないと、コミュニケーションやプラットフォームの設計をいくら頑張っても、顧客に最適な体験価値を提供するという本質的な効果は生みだせません。
ECサイトを単に作り変えるだけではなく、どのような価値体験を顧客に届けるのかを明確に定義したうえで、それらを支えるプラットフォームや業務プロセス、組織構成も含めた全体最適化をしなければ、オムニチャネルの次のステージであるユニファイドコマースの本質的な実現は、難しいのではないかと思っています。

竹内 なるほど。たしかに、我々がクライアント企業に提案するときも、サイロ化された組織が障壁になることは多く経験しています。1つのプロジェクトを仕上げるのにも、組織自体の変革が必要になるケースはよくあります。
常にお客様に適切なご提案をするのは簡単なことではないですが、IMJは既にサービスをお持ちで実績もあるので、障壁をクリアできるのではないかと感じます。

加藤 現在Salesforceはどういったパートナーと協業されることが多いですか?

竹内 主にデジタル領域においては、初期の頃はコンサルティングファームが多かったのですが、今はエージェンシーも増えてきている印象です。
次世代のeコマースであるユニファイドコマースは、クリエイティブがとても大事なんです。クリエイティブ・ドリブンで始まり、そのあとにコンサルがついていくようなところが強いと思っています。IMJもクリエイティブとコンサルの両機能をお持ちですが、そういった企業が増えています。

加藤 我々がプロジェクトをやっていても、クリエイティブとコンサルの両輪をバランスよく動かすことが難しいときがあります。コンサルティングファーム単体では、クリエイティブ領域まで包括したeコマースのプロジェクトを動かすのは、難しそうですね。

竹内 過去にはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のように、プランニングから何から何までベンダーに全てを任せていたクライアント企業も、今では自分たちで大枠のイニシアチブを持ってeコマース事業をドライブするなど、そんな企業も増えてきています。そして、その事業を構成するパーツの中で自社では対応できない部分を、外部のプロフェッショナルに任せるようになってきていると感じます。

加藤 外部のプロフェッショナルに任せるとしても、クリエイティブとコンサルを別々に都度発注するのは、最終的に顧客の満足度を損なうことが多いように思います。
その点、IMJは両方の機能をワンストップで受けることができるエージェンシーです。今後は、クライアント企業と一体となって支援できるよう、オンサイトでの支援も積極的に進めていこうと考えています。

ユニファイドコマースの 実現・実践に向けて

加藤 先ほど話題に挙がったアパレルの事例のように、顧客のオンラインおよびオフラインのデータが共有されていれば、店員がタブレットを持って、リアルの店舗でもお客様の過去の購買履歴や趣味等を理解した上で接客することができますね。販売自体はフェイス・トゥ・フェイスですが、実際には裏側でいろいろなデータがリアルタイムで活用されて販売を支援しているわけです。
このようなリアルタイムデータを活用したeコマースが、ユニファイドコマースと呼ばれる新しい顧客購買体験になると考えています。

竹内 それと、在庫の問題も重要ですね。大きな商品、たとえば家具などは配送になるわけです。それならどこで買ってもいいとなりますし、その店舗に在庫がなければオーダーすればよい。その注文を店頭で店員の方が手続きしてくれるのか、お客様自身がeコマースで買うのかの違いはありますが。
eコマースでもちゃんとしたアコモデーション(おもてなし)ができて、最適な顧客体験をしていただくことが今後のユニファイドコマースで実現できていくと思います。

加藤 そのあたりはまだ日本では道なかばというか、きちんとできているところはないですね。
IMJが得意としている領域と、Salesforce Commerce Cloudという新しいプラットフォームを組み合わせることで、遅れている日本の現状を最先端にもっと近づけていきたいですね。

竹内 今、どの企業でもeコマースによるビジネス領域が大きくなってきています。そうはいっても既存のビジネスがなくなるわけではなくて、eコマースは既存ビジネスと共存しつつも、拡張性のある市場なんです。ちゃんとしたプラットフォームを持っていないと、その広がりに追いつきません。そのためにも、我々がeコマースのプラットフォーム部分で皆様のお手伝いをできると考えています。
あと重要なのがグローバル展開ですね。それについても、我々がテクノロジーと人員でサポートできると考えています。それと、モバイル比率では日本はアメリカより高いのですが、いまだにPC重視のコマース環境になっている部分が多いのが現状です。ですが、今後はモバイルファーストでデザインを行い、そのあとにPC用にカスタマイズ……というふうに考えをシフトすることも必要です。そういったユーザビリティーの設計などにも注力しています。

加藤 モバイルもまだまだ変わっていく部分ですね。

竹内 我々はCRMのリーダーとして、インテリジェント・カスタマーズ・サクセス・プラットフォーム、つまり営業とサービスとマーケティングとコマースのすべてを網羅したCRMプラットフォームを提供してきました。
IMJには、One to Oneコミュニケーションを実現するMAソリューション「Salesforce Marketing Cloud」も積極的に推していただいておりますけれども、「Salesforce Marketing Cloud」の実績を多くお持ちで「Salesforce Commerce Cloud」の連携でバリューを出していけるパートナーさんは、現時点では、IMJ以外にまだありません。
今後は、IMJとさらに強い連携ができると考えています。

加藤 ありがとうございます。
IMJは「Salesforce Marketing Cloud」で多くの実績を積んできましたが、現在は「Salesforce Commerce Cloud」の体制も整い、クライアント企業をご支援することが可能です。
10月19日にはSalesforce Commerce Cloudのイベント「Salesforce Retail Connect 2017」もありますね。弊社もプラチナスポンサーとして協賛・出展させていただきます。

竹内 このイベントでは、国内外のリテールの最新情報なども紹介します。Salesforce Commerce Cloudを利用するためのエッセンスが詰まっているので、多くの方にお越しいただきたいと思っています。

加藤 未来のeコマースについて、ビジネスのヒントを提供し、皆様が情報交換できる場になればよいですね。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。