皆さんこんにちは、株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ) CMOの江端浩人です。IMJは米国で先端IT/Adtech情報を配信しているShelly Palmer氏と独占契約を結び、日本での記事と映像配信を行ないます。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

先週アップル社はアメリカ史上最高の四半期決算を発表した。しかしこの信じられないくらいの偉業は、株価の下落(300億ドル、フェデラル・エクスプレス社の時価総額相当)を招き、アップル社の時価総額を下げることになったのである。決算発表の中でティム・クックCEO は「短期的には乱高下はあるものの、長期的には中国市場において大きな可能性と機会を信じており、さらなる投資計画を継続する予定である」と発表した。これにより投資家の心配は払拭されるものと思ったが、市場の反応はそうではなかった。

クック氏によると、昨年中国地域での収入が前年比で14%増え(現地通貨では17%)「それは四半期で最高のiPhoneの売り上げとAppStoreのパフォーマンスによるものだ」。そして重要なことは、クック氏は「中国に積極的に投資を継続する」と断言し、「悲観的な予測には賛同しない」という姿勢を明言したことであろう。

表向きには、アップル社は素晴らしい業績をあげたように見える(米国史上最高の四半期決算)。現実的な業績分析を行い、どんな市場環境にも対応できる2,000億ドルにも上るキャッシュがあるため、どのような経済になろうとも大きな影響を受けないと考えられていたのである。しかしそこには別の見方も存在するのである。

中国はアメリカではない

あなたが中国に住んでいない限り、中国の人々と西洋のブランドとの関わりがどれだけ複雑なものなのか理解することが難しいだろう。私はこの件に関して2008年5月に「チャイナアメリカ:東西の融合」という記事を書いている。西洋の伝統的なブランドは非常に重要な価値も持っているが、逆にこのようにも言われているのである。「深圳に住む人はブランドを求めて香港に行き、高価な買い物をする。香港に住む人は深圳を訪れて、安価な製品を買って帰るのである」。このような中国本土のブランド信仰がアップル社の成功の一部を支えていたと言えるだろう。中国においてiPhoneとは個人の自己主張なのである。iPhoneを持つ事は、スタイリッシュな生活のステータスシンボルであり、西洋の理解を超えるぐらいの価値を持っている。

しかしどれだけ裕福な中国人であっても、個人的なデバイスに関しては現実的な面もある。アップル社にとって、現在の中国には「明るい未来」を描きにくい現実も存在するのである。

リーダー層が引き気味である

まず、アップルにとってはあまり好ましくないことであるが、中国の役人が人目を引く消費者ではなくなったということが挙げられるだろう。政府の職員にとってかつては自分の給料で持つことが困難であったアップル製品は、とっても“クール”とみなされていたのであるが、最近では逆にすごく“ダサイ”と思われているのである。最近では、中国の実力者たちも、「自分が持っているのが本物のアップル製品であることを確認させるために」iPhoneをテーブルの上に置いて見せびらかすということをしなくなってきた。今では逆に、自分の持っているのが中国製のスマートフォンだと分かるように意識しているようである。この傾向は、ここ1年の間で顕著になっていると、中国で仕事をしている私の友人は言う。

テクノデバイド

中国は東西でテクノロジーデバイドが存在する。具体的に言うと中国の西部はスマートフォンの人々で、東部はフィーチャーフォンの人々である。その普及スピードは西部でスローダウンしており、東部では高い伸び率を示している。このことを裏付ける資料は、世界各地で携帯電話の通貨とブランドプロモーションを調査している私の同僚が持っている。

完全なエコシステムが存在しない

しかし、アップル社にとって一番重要な逆風は、中国では規制により完全なエコシステムを構築できないという問題に起因するだろう。シャオミ社、ファーウェイ社とleTV社等の携帯メーカーは完璧なエコシステムを構築し、すばらしい消費者体験を安価に提供している。一方アップル社のエコシステムは、彼らの望み通りにすることが許されていない。このことが「グレーター・チャイナ(中華圏)」における、アップル社の運命にとって一番影響が大きいのではないかと考えられる。

巨大な中古市場

それでは中国で完全な機能を持たないiPhoneで何ができるのであろうか?
実際のところ、中国の巨大な中古携帯の市場には活気がある。中国のiPhoneオーナーはとても大事にiPhoneを扱う。多くの人々はホームボタンではなく、画面アイコンのショートカットを利用するのである。それはホームボタンを酷使して、壊さないためである。さらに、画面保護シートを貼り、厳重にケースに格納されるのである。そしてそのように大切に保護されたiPhoneは高値で取引されるのである。そしてiPhoneは電話としてではなく、ファッションアクセサリーとして中国では機能していると言っていいだろう(そして電話の役目は中国製の携帯電話が果たすのだ)。

なぜ見せびらかすためだけに、iPhoneを持ち歩くのか?
ある時私は北京のペニンシュラホテルにいる女性を見かけた。その女性はピンクのパジャマを着て、もじゃもじゃのスリッパを履いていたのである。そのパジャマはスイスの高級ブランド品であり、その値札が付けられたままであった(その価格は10万円以上!)。中国ではブランド品はこのように利用されているということを知る必要がある。

将来に向けて…

中国は西洋とは違って、理解しにくい場所でもある。西洋の合理的な考え方で中国のビジネスを理解しようとすると、大きな間違いのもととなる。確かに中国の経済は成長が遅くなっており、このことは繰り返し起こるかもしれない。しかし、中国における西洋のブランドの将来は、中華料理の繊細な味や、孫子の教えのように中国の伝統的な文脈の中で語られなければいけないと言う事を理解してほしいと考える。

 

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