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アップルテレビの本格的LIVE配信サービスは延期か?

アップル社の9月9日(ちなみに我々がラスベガスで予定しているメディアテックサミットと同じ日であるが!)に予定されているプレスイベントの噂は絶えないが、iPhone 6の新型あるいはiPhone 7やアップルTVの新しいハードがアナウンスされるのではと言われている。

しかし、ここに来てアップルはLIVEのストリーミング配信を、2016年以降に延期せざるを得ないのではないかという見方が出てきている。理由の一つはコンテンツの契約に手間取っているからで、もう一つはどの程度の通信容量が必要かわかっていないからだという。

ブルームバーグによると「CBSや21世紀FOXのようなテレビ局とのライセンス交渉に手間取っている」ということである。

交渉が難航することにアップルは驚いたかもしれないが、テレビビジネスの人間にとっては当たり前のことだろう。交渉における関係者の見方は、アップルがプレミアムコンテンツを市場価格以下に押さえようとしているということだ。従って何かよっぽど特別なことが起きない限り、それは実現しないだろう。

大方の見方はアップルが市場価格あるいはそれ以上でないと優良コンテンツを獲得できないのではないかということである。というのも、今までの業界慣習を見てもそれ以外の選択肢がテレビ局側に無いと考えられるからだ。

これは狐と兎の捕食者‐被食者の関係に置き換えると分かりやすいかもしれない。兎の多くは狐より素早い。なぜか?狐はいつでも狩りに行くことが出来るが、兎は一度捕まったら終わりだからだ。テレビ業界もアップルと契約したら二度目のチャンスはない。

 

だがちょっと待てよ。アップルTV以外の動画流通も世の中には多く存在する。従って捕食されるとは言いすぎなのではないか?

そうとも言い切れない。

 

テレビ業界はアップルに対して健全な敬意をもって接するという本来すべきことをしているのではないか?アップルは既存のビジネスモデルをいくつも変革してきた。今回の取り組みはテレビ業界の慣習に従って契約されないのであれば契約すべきではないだろう。

もう一つ

今このタイミングでは、むしろテレビ業界よりもアップルがテレビ業界を必要としているのかもしれない。いくつも報道されているように「アップル社とそのデバイスを人々のデジタル生活の中心にするためにテレビ番組はアップル社の音楽・情報・娯楽戦略の中心となる」からである。これはテレビ業界にとっては大変好ましいことである。ただしそのためには相応の報酬を得て、それ以上に消費者のコンテンツ接触データを手に入れる必要がある。というのも将来はデータドリブンの世の中となり、広告主やマーケターはコンテンツを利用価値の高いデータ生成の手段としてしか見ないかもしれないからだ。他の要素はあまり関係なく。

ブロードキャスト vs ブロードバンド

そしてもう一つアップルに対する深刻な事項が残っている。ブロードバンドのインフラは整備されているとはいえ貴重な資源である。アップルは一体どのように情緒的に満足するビデオストリーミングをケーブルテレビのように99.9%あるいは99.99%の配信率を確保するのであろうか。インターネットはそもそもこのような用途を想定して設計されていないのである。

ニールセンによると平均的な米国人は一日5時間テレビを見るそうである。この5時間は視聴者の年代や人種などの属性によって大きく違うのである。ただしこの分布はかなり特徴があるので、まずはNielsenTVBを訪問して欲しい。

これで分かるのは、全く新しいCDN (Content Distribution Network)が出てこないと現在のブロードバンド技術ではネット上でブロードキャスト(電波放送)と同じことは実現できないのである。これは非常に重大な問題ではあるがムーアの定理や収穫加速の法則によりブロードバンドの容量を計算すると早期に多くのストリーミングを許容することも可能という結果を導き出すこともできる。

ではなぜ終焉が近いのか?

消費者の立場になって考えると、コンテンツがどこから来ようとどのように入手しようと大きな違いはない。一方で、我々テレビ業界はコンテンツがA地点からB地点に配信される方法をたいへん気にするのである。テレビCMの価格は人気番組「Law & Order」をゴールデンに全国ネットのNBCで放映時に流されるのと、ケーブル局であるターナー・ネットワーク・テレビジョン(TNT)で流されるのでは全く違ってくる。更に価格はケーブルテレビのオンデマンド配信なのか、インターネットのオンデマンド配信なのかでも変わってくるのである。またアップルストアなどのダウンロード課金でも価格が大きく違う。

広告と定期購読という二重課金モデルは、多くの不明瞭な契約によって構成されている。さらに重要なのは、一体どのくらいの人がコンテンツを視聴しているのか、そしてそれが誰なのかを、誰も分かっていないということである。現在の計測技術はそれなりの想定値を与えてはくれるものの、利用価値の高いデータとはいえないのではないか?

もしアップルTVが本格的に浸透すれば、そのシステム内には膨大な有用なデータが蓄積されるだろう。そしてそれは情緒抜きで各コンテンツのターゲットに対する価値をはじき出すであろう。価値があるコンテンツとそうでないものは分けられるだろう。

テクノロジーという約束

技術者がコンテンツビジネスに対して最初に提示した約束はこうだ。もし誰が見ているのか分かれば、一つのコンテンツを100万人が見ていようとも100万人が100万のコンテンツを見ていようとも同じように有用なデータを得ることができる。

しかし、いまだにこの仮説を大規模に検証することができたものはいない。あのユーチューブでさえもだ。もしこれが真実であれば、伝統的なビジネスモデルが終焉するのである。そのモデルとは、投資効率を計測するのではなく過去の慣例によって将来の投資効率を推定するものである。

グッドニュース

今一瞬だけを見るとアップルはその業界アナリストが考えるよりも弱い立場なのかもしれない。テレビ業界に対してコンテンツの交渉を有利に進められず、大量配信のソリューションも持ち合わせていない。

もし、うまく交渉すればテレビ業界は視聴者ベースでより大きな産業へと進化できる可能性がある。もしうまく交渉できない場合でも終焉を見るのは少し先延ばしされた模様である。

 

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