Blog - Shelly Palmer の記事をIMJのオウンドメディアであるBACKYARD で翻訳・配信していきます。ぜひよろしくお願いします。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

とある大きな会社のバイス・プレジデントが、私に「青いミラーボール」の注文をしてきた。「青いミラーボール」とは、私がよく使う“隠語”で、多くのベンダーやサプライヤー、ソリューションプロバイダーが最も好むモノである。

「青いミラーボール」とは一体なんだろうか? それは経営者層にとっての悪夢であり、ベンダーにとってはボーナスが増えるというありがたいものなのだ。

「青いミラーボール」の物語

私の最初のインターンシップは素晴らしかった! 幸運にもメジャーな映画会社でアシスタントプロデューサーの職につくことができた。と言っても、それはヒエラルキーの1番下の使いっ走りであった。私の仕事はコーヒーを買ってくる、小道具を取ってくる、ずっと静かにしている、などを能力の限り実行していた。ただこの仕事で、今までのビジネス経験上、最も重要とも言えるレッスンを受けることになるとは思わなかった。

 

私は初日に制作会議に立ち会うことになった。とある映画監督(あまりにも有名なためにここでは名を明かさない)がラインプロデューサーに対して、「次の撮影には60インチの青いミラーボールが必要だ」と言ったのである。そしてプロデューサーは、私の上司にその仕事を振ってきたのである。ミラーボールを2日で用意せよ、と言うことであった。

まず私の上司は、資材管理部に電話をして60インチの青いミラーボールがあるかを確認したのであるが、当然ながらそんなものは持っていなかった。そして彼は私に向かって「これを作れそうな会社を知っている」と言って、すぐにその会社に電話を掛け始めたのである。

その制作見積もりは、当時のお金で10,000ドル(現在の35,000ドル=約400万円相当)であった。私は町中のありとあらゆるお店に電話をして、青いミラーボールをそれ以下の価格で制作できないか、もしくはレンタルできないか探すように命じられた。というのもミラーボールに10,000ドルも出すというのは、あまりに馬鹿げていたからである。1979年当時には、例えば12インチのミラーボールであれば50ドル程度で購入できたのだから。

赤や緑、そして無色のミラーボールは探すことができたが、青いものを見つけることはできなかった。そしてそのどれもが60インチよりも、はるかに小さいものであった。私の上司は、私の電話した先を全部チェックしたあとで、これ以上当たってももう見つからないだろうと判断した。いくつか制作した場合の見積もりも取っていたが、大体どれも10,000ドル前後であった。

そこで私の上司は、最初に電話したお気に入りのベンダーに10,000ドルで「60インチの青いミラーボール」を注文したのである。ただし、本当に必要なデッドラインの6時間前に締め切りをセットした。なんで6時間前なのかと聞いたところ、そのぐらいのバッファがないと安心できないからということであった。ただでさえ時間がない中、今から6時間も短くするのは、私には無謀に思えたのであるが、上司は「そーゆーもんなんだよ」と言うだけであった。

 

これで全て無事に済んだと思われたが、物語はまだ終わらなかった。

予期せぬ結果

制作ベンダーに頼んだ納期は過ぎていたが、私の上司は落ち着いていた。なぜなら、経験豊富なアシスタントプロデューサーであった彼は、6時間のバッファを取っていた。しかし、本当の締め切り時間が近づいても、ミラーボールの影も形もなく、制作ベンダーはこちらからの電話にも出ない状態であった。

期限まであと1時間になると、監督は「私の青いミラーボールは、まだ準備できてないのか!」と、私の上司の上司であるラインプロデューサーに怒鳴り散らし、現場には相当な緊張感が走っていた。するとそこにスタジオの資材責任者が、たまたま通りがかり、一体この混乱はどういうことなのかと尋ねた。

監督とプロデューサーは、巨大な青いミラーボールがセットの真ん中にぶら下がってないと撮影を始められないのだが、それがまだ到着していないのだと説明した。このままだと撮影をキャンセルしないといけないかもしれないと言うことであった。私はその時に、彼らが「60インチ」ではなく「巨大な」ミラーボールという表現を使っていたことに違和感を覚えた。あれ?注文では「60インチ」の青いミラーボールって言ってなかったか?

それから、スタジオの資材責任者は非常に重要な質問をしたのである。

「あなたはそれを使って何をしたいのですか?」

監督は、床面に青い光の点をいっぱい踊らせたいのだ、と答えた。すると資材責任者は「ミラーボールも撮影するのですか?」と質問をしてきた。監督はしばらく考え込み、撮影責任者を見て、台本を読み直し、プロデューサーを見て、台本を見て、脚本家を見てからこう叫んだのである。

「ミラーボールのシーンは台本には載っていないようだ。私はミラーボールを撮影したいのではなくて、床に青い点がたくさんあれば良いのだ」。
資材責任者は冷静にこう答えた。
「そうすると、床一面に青い点を映し出せる大きさのミラーボールがあればいいということですね…わかりました」。

資材責任者は即座に電話を取り、資材管理部にミラーボールを持ってくるように命じた。それは5分で到着した。そして照明係に青いシートをライトにかぶせるように命じたのである。するとどうだろう、床一面に青い点が現れたのである…しかも一銭もかけずに。現場経験豊富なプロによる適切な質問によって、問題は解決した。

 

これでハッピーエンドになるかと思われたのであるが、撮影の準備がもうすぐ整うという時になって、制作ベンダーが60インチの青いミラーボールを持って現れたのだ。これはラインプロデューサーの作った本当のデッドラインを30分超えていたのだが、それ以外は予算内で注文通りのものを持ってきたのである。

ただ残念ながら、既に問題は無料で解決されていて、この新品の青いミラーボールは、もう要らないのである(それどころか実際には大きすぎて、撮影の邪魔になってしまうことが、後に分かったのであるが)。その10,000ドルの青いミラーボールは、そのまま小道具置き場に持って行かれて、多分37年間1回も使われることもなく、未だに倉庫で眠りつづけていることだろう。

青いミラーボールの教訓

私は多くのプロジェクトが予算をオーバーしてしまうのを見てきたし、その原因が「青いミラーボール」にあることを経験してきた。中途半端な知識は逆に危険な場合もある。

一般的には、あなたがその分野の専門家であって、何が必要なのか、そしてどうして必要なのかよく分かっていない場合には、ベンダーに発注をするような行為をしてはいけないのだ。そのような場合には、何かを発注するのでなくて、どのような結果を得たいかを伝え、専門家のアドバイスをもらった上で、その理由を理解することが重要である。

もしあなたが2日後に60インチの青いミラーボールを持って来いと注文すれば、それ相応の請求書を受け取ることになる。ベンダーはあなたの指示通りに動くことを好み、そして時間と予算通りにそれをやってのけるだろう。しかし考えてみて欲しい。もし正しい専門家が正しいミーティングに出席していて、目的がきちんと伝達されていれば、この話の結末は全く違ったものになっていたのではないか。

この教訓を生かすには?

私は、この映画の撮影から非常に多くのことを学んだ。その中で最も重要なのはベンダーとソリューションプロバイダーの役割の違いである。私はマネジメントの構造と企業の統治の仕組み、官僚主義的なヒエラルキーの重要さについても知ることになったのである(でも、どうしてあの撮影会議に資材責任者はいなかったのだろう?)。そして、その時は気づいていなかったのであるが、プロジェクトのゴールを理解することが、クライアントに価値を提供するために最も重要な鍵になることが、後々私がキャリアを形成していく上で大いに役立った。

確かに、当時の私であれば「青い60インチのミラーボール」の注文を黙って受けていただろう。しかし現在ではその目的を聞き出し、お金をかけずにそれを実施する方法をアドバイスするようにしている。それはクライアントのボスにとってみれば予算の節約になり、会社にとってクリエイティブな問題解決につながるのである。一方でそのまま「特注の青いミラーボール」の注文を受ければ、私の売り上げは大きくなり、儲かることは間違いないのである。しかし彼らにはそれは必要ない「ミラーボール」なのだ。

あなたにも「青いミラーボール」の話がきっとあるでしょう。そういう事例があったらぜひ教えてください。

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