Blog - Shelly Palmer の記事をIMJのオウンドメディアであるBACKYARD で翻訳・配信していきます。ぜひよろしくお願いします。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

BREXIT (英国のEU離脱のこと。British + Exitの造語)の影響は、あまりに広範すぎて、そのすべてを理解できないかもしれない。私は政治評論家ではないので、政治面での影響はその専門家にお任せしよう。私の専門領域はテクノロジーであり、当社のソリューショングループでは世界有数の多国籍企業へのデジタル製品のアドバイスもしている。従って本コラムでは、そのような視点に沿ってBREXITがもたらす、IT企業への短期的な影響を占ってみることとしたい。

プライバシー

EUと米国はデータの転送や個人情報に関する新たな協定を結ぼうと検討していた。EUでは、少し前に米国との個人情報転送の条項である “セーフハーバー協定”が裁判所で無効とされていて、それに代わる条項、“プライバシー・シールド”を締結しようと交渉していたのだが、これが上手くいっていないのだ。EUは米国に非常に厳しい情報管理を要求していて、このことがグローバル経済の中で競争する米国の多国籍IT企業にとっては、頭痛のタネになっている。

BREXITは少なくとも以下の3つの分野でプライバシー規制に影響を及ぼす:

  1. EUのデータフローに関して、UKは今後EUのメンバーとしての影響力を行使することはできなくなる。今までは世界第5位の経済国家(BREXITの後はポンドの急落で6位に転落したが)として、ドイツやフランスと同等の発言力があったのであるが。EUのデータフローに関してUKは沈黙を保っている。
     
  2. UKのデータポリシーは、EUのそれと違ってくることになるだろう。従ってヨーロッパでデータを収集して、ビジネスを考える企業は両方のポリシーを順守する必要がある。つまりそれだけ多くの管理が必要となり、消費者に対しては値上げをせざるを得ない状況が出てくると予想する。
     
  3. BREXITしたとしてもUKはEUと商売を継続する上では、EUのデータ規制に影響され続ける。BREXITで独立性を確保できたものの、EUとのデータ交流をきちんと整備できるかという問題があるのである。もちろんそれは可能であるが、どの位の期間と費用が掛かるかという目途は立っていない。一つ言えることは、BREXITはインターネットのグローバル化という側面では非常に大きなコストと時間を必要とすることになるだろう。

 

ヨーロッパへと続く道

スタートアップの会社にとってロンドンはEUへの道が確保された、恵まれた環境であった。ヨーロッパの金融中心地としても、起業には最適の場所といえただろう。金融に加えて、多様な労働力が確保できたし、市場としても広大なEUが存在したからである。

BREXITにより、少なくとも以下の三つの分野で、投資や融資EU市場へのアクセスが今までより制限されることになるであろう。

  1. 前述したように、起業するものにとって、ロンドンが第一候補でなくなる可能性がある。代わりに脚光を浴びるのは、技術者が豊富でそれなりの金融市場もあるベルリンではないだろうか? しかもロンドンに負けない労働市場を持っているので、例えば金融技術の会社には有利に働くのではないかと思っている。
     
  2. UKは再加入交渉をしない限り、EUの“単一デジタル市場政策(Digital Single Market initiative)”の一部ではなくなる。このことは、ヨーロッパ全体に直接的かつ重大な経済的影響を与えることになるだろう。特にEU28ヵ国で単一のルールを期待していたIT企業は、その最終損益に影響が出るのではないだろうか。
     
  3. そしてもちろん、BREXITによってもたらされる政治や経済市場の不安定さがUKでのビジネス進展にも影響するであろう。

データローミングと第5世代移動通信

筆者は、UKはEU各国共通通話・データ料金プランを継続できるように願っている。現在のEUで非常に安価に実現されている通信プランが無くなると、国際通話やデータ転送のハードルが上がり、ビジネスにも悪影響を及ぼすこととなる。加えて言うと、次世代通信フォーマットである5Gも視野に入ってくるのである。5Gを実現するためには二つの異なった業界標準団体が手を結び、現在ラジオに使われている周波数の利用などを含む技術的な問題を解決しないといけないのである。それは実現不可能ではないが大きな時間と労力を要し、UKとEUの通信高速化のペースを遅らせることになるだろう。

直接の経済効果は?

2015年の「Tech City UK」の“Tech Nation:Powering the Digital Economy”という調査によると、UK全体で約150万人がIT業界に従事しており、そのうちの2割、約30万人がロンドンで働いているという。さらに重要なことはUKのデジタル経済は一般経済の130%で成長していたという事実である。世界的にデジタル経済は高成長を実現しており、その中の一部はさらに急成長を遂げているのである。

EUとの労働市場互換性を失ったUKは、自国での教育に頼らざるを得なくなり、短期的には成長を担う技術者不足に悩まされることになるだろう。かつてはEU中から優秀な技術者:プログラマーやプロダクトデザイナー、エンジニアやデータサイエンティストが集まっていたが、今後は特殊な労働ビザが必要となるだろう。そうなった場合にはビザのいらないベルリンやミュンヘン、マドリッドやパリでの仕事を選択してしまうのではないか? 手続きがより簡単な方を選んでしまうのは人間の性ではないだろうか?

時間が経てばわかる

BREXITに投票した52%の有権者は、UKにとって正しい選択をしたと信じているだろう。私が提言した問題はどれも乗り越えられないものではない。時間と労力、それに伴うコストを掛ければ克服は可能である。しかし、やはりコストはかかってしまうのであり、それについては、BREXITに投票した人達は十分に認識していない可能性が高い。

グーグルトレンドのツイッターアカウントによると、英国のEU離脱が正式にアナウンスされた後で検索された言葉で、“What is the EU?(EUって何?)”という検索が2番目に多かったという。1位は“What does it mean to leave the EU?(EUを離脱することが意味することは?)”という検索であり、投票の多くが深い考えなしに、心情だけで行われたのではないだろうかと、私は思っているのだが、皆さんはどう考えるだろうか?

 

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