皆さんこんにちは、株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ) CMOの江端浩人です。IMJは米国で先端IT/Adtech情報を配信しているShelly Palmer氏と独占契約を結び、日本での記事と映像配信を行ないます。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

『プレイボーイ』誌のプレイメイト、ダニ・メイザーズは、隙をみて70歳の女性の裸の写真を盗撮し、「この光景が頭から消えないの。あなたもでしょ?」とコメントしてネット上に掲載した。彼女の写真は瞬く間に広まった。メイザーズはロサンゼルスの軽犯罪法で最高6ヶ月間の刑期が課せられる「私的画像の普及」の罪で告訴されている。それらは明白な事実であり、やったことに議論の余地はない。

この行為を@bonniereynoldsにとがめられた際に、@danimathersはこう答えている。「私はそれを友人に送っていたつもりでした。そして、たとえプライベートな会話だとしても、そういう話はしていけないものでした。本当に間違いでした、申し訳ありません」。

彼女の謝罪はあまり受け入れられずに、“正義を振りかざす者たち”は、彼女を“残酷な肉体の侮辱者”と呼んでいる。一方、彼女の謝罪を受け入れた“忠実な信者たち”は、彼女を擁護し、彼女の行動を正当化している。議論は白熱し、激しい言葉の応酬がされるにもかかわらず、人々の心は平行線を辿っている。

技術の進歩が可能にした犯罪

この犯罪は5年前なら、起きていなかったかもしれない。『Snapchat』は2012年4月まで出資を受けておらず、そのAndroidアプリはその年の10月まで存在していなかった。 1999年の5月には、カメラ付き携帯電話が登場していたのは事実ですが、裸の人の無修正デジタル画像をグローバルなソーシャルメディアネットワークに配信する機能は5年前には存在していなかった。つまり、新しくてもの凄く洗練された技術が加速度的な速さで登場してきているのだ。

映画『禁断の惑星』

1956年、MGM製作のSFスリラー『禁断の惑星』(シェイクスピアの『テンペスト』が元ネタ)が、ロサンゼルスのグローマンズ・チャイニーズ・シアターで上映された。この映画は、光速での旅行を扱い、「最優秀助演男優賞」にノミネートされてもおかしくない「ロビー・ザ・ロボット」という名のロボットの登場、そして電子音楽が全編で使われるなど、数多くの“世界初”で知られている。しかし、この映画が私たちにとって重要な理由は、先進技術を発明した古代の民族が、それを制御できずに、自らの作った技術によって滅んでゆくさまを描いているからだ。

物語が進んでいくと、探検隊が上陸した惑星は、20万年前に突然滅亡した高度な文明を持つクレール族が住む惑星であったことが分かってくる。そして映画のクライマックスでは、探検隊を次々と殺していた謎のモンスターは、クレール族のエゴ(Id:自我)が具現化されて生まれたモンスターであったことが突き止められる。フロイト派の言葉を借りれば、クレール族が自ら作り出した力強い技術は、最も利己的で、邪悪な思考=エゴ(Id)を実現するためのモノであり、結局はそれによって自滅したということが分かってくる。

ダニ・メイザーズのエゴ(Id)とそれを実現させたツール

ある日、ダニ・メイザーズは美的観点から許容できない女性を見かけた。彼女に突然ある考えが浮かんできた。「この光景が頭から消えないの。あなたもでしょ?」という、とてもキャッチーなフレーズが浮かび上がり、スマートフォンを手に取った。それはちょっとしたいたずらで、軽いジョークのはずだった。深い考えなしに彼女は、文字を打ち終えた。(まあ、面白いよね……よし、送信)。この非常に短い時間に起こった出来事は、ダニ・メイザーズのエゴを解き放ち、大きな炎上案件へと進化してしまったのだ。

私たちが過去18カ月間に何を経験してきたを考えてみよう。何が起ころうとも確実なことがひとつある。私たちは自分のエゴで、自分自身を破壊するために必要なツールを手に入れたのだ。

これは、かつては限られた人たちが持てる力だったが、現在では35億人以上の人々がこの力を持っているといえるだろう。最近ソーシャルメディア上で政治的立場が違っていたり、あなたがシェアしなかった発言のために、友人からフォローを外された経験はないだろうか? 私は、そのような事態を恐れているし、あなたにも注意を払ってもらいたいと思っている。

私たちには、“エゴというモンスター”を解き放つための新しい技術は必要ないかもしれない。しかし、ネットワーク上に自分のエゴをまき散らすだけで、クレール族が辿ったのと同じ運命を辿ることになるかも知れない。この社会の繁栄と存続を確実にするためには、“過剰な政治的正しさ(建前)”と“明白な考えのなさ(本音)”とのバランスをとることが必要になるだろう。

アメリカ合衆国の創設者たちは、民主主義という多数派のルールが守られていながらも、少数派の意見にも耳を傾けられる仕組みを私たちに残してくれた。私たちは、対立する視点がそれぞれの立場を声高に主張し、補強していける技術を手にしている。しかし先人の知恵は尊重しなければいけない。さもないとエゴ(Id)にコントロールされてしまった“禁断の惑星”に住んでいることになるかも知れないのだ。

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