皆さんこんにちは、株式会社アイ・エム・ジェイ(IMJ) CMOの江端浩人です。IMJは米国で先端IT/Adtech情報を配信しているShelly Palmer氏と独占契約を結び、日本での記事と映像配信を行ないます。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

2016年にアメリカで制作された『Westworld』というTV番組は、私たちが非常に長い間持っていた最高の、そして最も興味深い議論に火を付けた。このTVシリーズはエンターテインメント性も高い一方で、考えさせられる一面も持っている。もし、あなたがそれを見ていないなら、ちょっと説明しておこう。『Westworld』は、1973年に作られたマイケル・クライトン監督の同名の映画『ウエストワールド』をもとにした、米HBOテレビ制作のTVシリーズで、人造人間(人間と見分けがつかないロボット)がホストとして働く未来の遊園地についての作品になる。

ロボットとの性的な関係は浮気? 浮気でない?

この種の技術の出現から生じる、倫理的および道徳的な問題を探求する記事は数多くあるが、本記事はそういった内容ではない。本記事では、この手の問題の現状と現実の世界が明らかに進んで行くであろう方向についての、技術的なステップについての説明になる。

だから、もしあなたが「ロボットとの性的な関係は浮気なのか?」という質問にyesまたはnoの答えを求めているのなら、質問を変えなければならない。「高度な人工知能(AI)能力を持った人型ロボットと性的な関係をもつのは浮気か?」と。私とこれを議論したほとんどの人は、「yes」と即答した。となると、この問題が、いつ仮説ではなくなって、現実の問題になってくるのか?という点が重要になってくる。

その問いに「いつ」と答えることは、非常に複雑なプロセスを踏まねばならない。このTVシリーズ内では、私たち(=観客)にも、彼ら(=『Westworld』を訪れる人)にも、そしてホストたち(=人造人間)にも、ホストが“感情”を有しているかどうかが分からないのだ。もし彼らが“感情”を持っているのであれば、“人工生命”を誕生させたことになるのだが、それはそれでまた別の問題を生み出すことになるので、“人工生命”の件は別の記事で話すことにする。

話を元に戻そう。もし彼らに“感情”がないならば、それは単に機械的なデバイス装置にすぎないのだが、この推論は私を少し苦しめる事になる。

人間を再現するロボットへのステップ

『Westworld』に出てくるホストはSF世界のものだ。要するに、『Westworld』の世界の設定を考えるに当たって、現実世界での倫理的、道徳的、性的な問題について考慮する必要はないのである。

2013年にホアキン・フェニックスは、“サマンサ”という自然言語処理(NLP)システムに恋をする男について描いた映画、『her/世界でひとつの彼女』に出演した。コンシューマーテクノロジー協会によると、2013年には、NLPシステムは音声のうち、4分の3程度を理解することができるようになっていた。今日では理解度は、ほぼ100パーセントに迫っており、わずか3年での到達点としては驚くほどの技術進歩といえよう。

なぜ、私たちはNLPシステムが気になるのだろう? まあ、現在のペースの技術的進化であれば、ホアキン・フェニックスが映画で恋に落ちるSF世界の“サマンサ”が現実のものになるには、あと数年しかかからないだろう。AIのちょっとした改善が起こるだけで、完璧でないにしても、みんなが騙される程度の“擬似意識”は作れるだろう。もし、このことに興味があるなら、「チューリングテスト」についても調べてみて欲しい。

コンピュータと恋に落ちることはできるか? コンピュータと電話での性的な会話をすることはできるか? あなたの答えがどのようなものであろうと、私は尋ねなければならないのだ。“感情”を持たないNLPシステムとの性的な関係は浮気になるのだろうかと。

「恋に落ちる」ということを定義しようとした時に、ほとんどの人は次のように言った。「あなたの人生で、心の空白を『何か』で埋める必要があるのなら、それをもたらしてくれるものが、人間なのか、機械なのか、趣味なのか、はたまた仕事なのかはあまり関係ないのだ。あなたのパートナーが、あなたの感情的なニーズを満たすことができず、そのことを彼らに開示しないのであれば、あなたは浮気をしていると言えるのではないだろうか?」と。

あなたがこの意見に同意するかしないかは分からないが、これはまあ雑談レベルでの調査だ。今後この問題を分析する多くの職業倫理学者と、人間の感情の全範囲を探求する科学研究者がでてくると、私は確信している。

次の段階

さて、アダルトエンターテインメント業界は、ストリーミングビデオやウェブカメラよりもはるかに速くバーチャルリアリティ(VR)を進化させている。VR、NLP、AIを組み合わせて、説得力のある“性的体験”を創出しようと、可能な限り迅速に動いている企業がいくつかあるのだ。この必然的な進展の後でも、VR、NLP、AIを組み合わせた非知覚システムとの関係は浮気と見なされないのだろうか?

さらに、その次の段階

このVR、NLP、AIシステムに、あといくつかの基本的な機械的デバイスを追加すれば、1973年のウディ・アレンの映画、『スリーパー』に登場する“Orgasmatron”の現代版が完成する。この関係は浮気行為と見なされるだろうか?

もし、このシステムがまるで生きているような人型デバイスだったらどうなるのだろう?

もし、オーブントースターやスマートフォンや電動ノコギリのようだったなら……?

いくつかのガイドラインが必要

あなたは、越えてはいけない一線を引くことはできるだろうか? プライベートな一線だけでなく、あなたが公的に提示できる一線を引くことはできるだろうか? 私たちが感覚的でも意識的でもないデバイス、つまり“機械”に関して話しているのであれば、それでもその一線は必要なのだろうか? その議論は別の人に聞いてもらうとして、私は、今日、あるいはまさに今迫りくる技術について話したいと思っている。

テクノロジストの観点からは、私たちは最も神聖とされているアイデアのいくつかを再考し、再定義するシステムを作ることに非常に近いと確信している。“関係性”、“コミットメント”、“忠実さ”、“一夫一婦制”などのような用語は、進化しようとしているのだ。実際のところ、苦痛や不安、より悪い出来事を引き起こすために、『Westworld』スタイルのホストは必要ないのだ。

性に目覚めはじめたときに、両親とどんなことを話したか覚えているだろうか?そこにAIシステムとの愛情のある親密な関係を追加してみると、その話がどのように聞こえるかを考えてみようではないか。

マシンがマシンであることを識別しない限り、今日の5歳から8歳までの子供が、異性とデートする年齢になる頃には、人を相手にしゃべっているのか、機械に対してしゃべっているのか判別できなくなっているだろう。現在の技術革新の速度では、その世界が現実のものになるのに、10年もかからないのだ。

新たに生じる問題

機械学習とNLPシステムの進歩がもたらす新たな問題は、どのようなものなのだろうか? 私は2016年5月に未来に話しかけたら、返事をされた。と題した記事を書いた。その記事の中で、あなたが考えなければいけない問題として、私はこう書いた。

「私たちは今後家にある自然言語処理(NLP)インターフェースを人間のように扱う必要があるのだろうか? 話しかけるときには、親切に話したほうがいいのか、それともぶっきらぼうで構わないのだろうか? 機械にとってはどうでもいい話だ。機械には感情が伴っていないし、ただ答えるようにプログラミングされただけである。

では、子供たちにはどう教えたらいいのだろう? 返事する機械と実際の人間では、違う態度をとるように教えたらいいのだろうか? 非常に近い将来、子供たちが成長して大人になる頃には、カスタマーサービスの受付は実際の人間なのか、自然言語処理システムなのか、わからなくなっているだろう」。

『Westworld』スタイルのホストは、いつ現実になるのか?

私は、実際に“『Westworld』スタイルのホスト”を実現するために必要と思われるテクノロジーを持つ企業で働いている友人や同僚との間で数え切れないほどの会話(チャット)を持った。それは、現在利用できる技術要素に関してのディスカッションでもあった。最新のチップセット、電源、機械学習、データサイエンス、ロボット工学、ナノテクノロジー、再生医療(バイオプリントで生成された細胞組織や幹細胞のようなもの)、コラーゲンを合成繊維と混合したり、コラーゲンの完全合成代替物と混合するためのある種の化学技術、などなどだ。

しかし、それはあくまで“今現在使える技術”の話だ。もし本当に生きている人間と区別がつかなくて、完璧に他の人間をだますこともできるレベルのモノを作りたいのであれば、新しい技術の登場を待たねばならないだろう。

『Westworld』スタイルのホストはおそらく今世紀の後半には生まれるだろう。いや、もっと早く実現できるという可能性も十分にある。その一方で、機械との関係性については現実的な議論を進める必要があるのではないだろうか? なぜなら、この問題が仮定の話であるのはそう長い間ではなさそうだから……。

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