IMJは米国で先端IT/Adtech情報を配信しているShelly Palmer氏と独占契約を結び、日本での記事と映像配信を行ないます。ちなみに文中の視点や意見はShelly Palmer氏や、それぞれの筆者のものであり、IMJのものでないことを明記させていただきます。

 

 

少し前に、私は「ロボットが最初に奪う5つの仕事リスト」を紹介した。そして先週、「ロボットが最後に奪う5つの職業」を挙げた。これらの記事は、ほとんどの人がロボットにすぐには奪われないだろうと思っている“認知的非反復作業(中間管理職、営業担当者、税理士、報告書作成者など)”を行う労働者に取って代わるロボットに関するものだった。そして、これらの記事では、「ロボット」の定義として“人間が実行する必要のあるタスクを、専用のコンピュータプラットフォーム上で実行するように訓練された、機械学習アルゴリズムなどの技術”としていた。

今回の記事では、「ロボット」の定義を、“人間が実行する必要があった作業を行うように設計された自律したシステム”に拡張してみようと思う。そして、人間のタスクの4つの主要なカテゴリ(手動的反復作業(予測可能)、手動的非反復作業(予想不可能)、認知的反復作業(予測可能)、認知的非反復作業(予想不可能))の、全てを対象として、私たちの思考実験を広げてみようでないか。つまり、言い換えると、現実世界の将来の可能性を予測して、結論がどこにたどり着くのかを見てみたいということだ。

プロ運転手のジョーの場合

ジョーは、「2021年ユニバーサル・最低収入保障プログラム法(『U-Min法』とも呼ばれ、ロボットの出現によって奪われた、最低限の生活賃金を保証する法律)」の下で援助を受ける以前には、プロのドライバーであった。

待て!止まって!それは、単純な作業だ

確かに簡単だった。膨大な数の輸送業界のプロドライバーが「自律運転車両」に置き換えられ、運送業者、倉庫の労働者、およびそれらを管理する管理者も同様にロボットに取って代わった。それは造作もないことだった。

それでは思考実験として、タクシー、自動車サービス、トラックドライバーたちの20パーセント程度を「自律運転車両」に置き換えてみよう。そして、現在これらの労働者に向けてサービスを提供していたビジネスについても考えてみよう。ドライバーがコーヒーを飲むのに使っていたローカルの飲食店、ガソリンスタンド所有者が有益なサイドビジネスとして経営しているスタンド付属のコンビニエンスストア(ガソリンだけを販売していたのでは儲からない)、クイックサービスのレストラン、スーパーマーケットなど。輸送業界の労働者のわずか20パーセントが解雇された世界を想像してみてほしい。これらの輸送労働者に頼っている企業は、恒常的な収入の減少から生き残ることができるのだろうか?

「こんな仮定には意味がない」とあなたは言うかもしれない。「だって、これらの人々は職業訓練を受けて、他の仕事を見つけるだろう」。私にはそう思えないが、あなたが正しいと仮定しよう。他の仕事は(それが何であるかにかかわらず)これまでとは全く異なる商売のやり方をもたらすことになる。この大規模な行動の変化の影響は、新しい行動を引き起こす。そう、大規模小売店が町にやって来て、町のメインストリートにあった小さな雑貨店の“息の根を止めた”ときくらいにインパクトのあるものになるだろう。町は生き残ったが、以前とは全く違う印象のものになったのだ。

実際のところ、これは“ロボット黙示録”の抜粋に過ぎない。もっと掘り下げて考えてみよう。

企業のエグゼクティブ職のジョー

『U-Min法』の補助金の援助を受ける以前、ジョーは大手会計事務所に籍を置く公認会計士であり税務監査パートナーとして働いていた。世界中の大手企業で15年以上の業務経験を持っていたが、彼の所属する部門全体がGoogleのDeepMindグループの「Alpha会計」に取って代わられた。その時点で、ジョーの担当する部門では、全てのクライアントに対して、年間45万ドル以上の売上げを上げており、興味深いことにその一部は年間210万ドルにもなっていた。ジョーたちは、今何をしている? 15〜25年の財務の経験はどうなったのか?それは別の職業で生かされているのか?

FOMO、それは「取り残される恐怖」

“ロボット黙示録”を推し進めている背景にあるのは何だろうか?それは、“FOMO”、「取り残される恐怖(fear of missing out)」だ。オンデマンド型の行動の割合や機械学習、自律制御のビジネストレンドは、ここ2年で40パーセントも拡大している。私たちがコンサルティングしている全てのクライアントは、自律システムと機械学習ツールを実用化させようと急いでいる。だが、AIシステムは“プラグアンドプレイ”では動かない――まだそのレベルではない。それでも、ある朝目を覚ましたら、競合他社がEBITDA(減価償却前営業利益)を上げるほどの、素晴らしく価値のある自動化システムを導入していた、というようなニュースを聞きたいCEOはいない。収支が最重要視される企業の世界では、それは最悪の一日ということになる。

一体どうなるのか……“ロボット黙示録”後の人生

“未来”についての、この不完全な思考実験ゲームのために、現実世界の財務統計を使って“黙示録”後の世界をベンチマークしてみよう。

アメリカ合衆国の課税基盤

marketwatch.comの記事によると、「アメリカの全世帯の45.3パーセント(およそ7,750万人)は、連邦政府に個人所得税を支払っていない」とされている。さらにこの記事は続けている。「アメリカ人の上位1パーセントが210万ドル以上の収入を持ち、連邦政府の個人所得税全体の43.6パーセントを支払っている」。

それでは、アメリカで連邦政府の個人所得税の43.6パーセントを支払っている1パーセントのアメリカ人たちの20パーセントがロボットによって職をなくしたとしたら、私たちの人生はどうなるのだろうか?

予想される、いくつかの未来像

予想される未来像の一方の端には、権力の偏在、エネルギー不足、食糧不足、水不足、機能していない学校教育、限られた資源、衰退した、もしくは存在しないヘルスケアなどのような、ありふれた終末論的テーマがある。私は、これが実現するであろう未来だとは思いたくない。

もう一方の端には、人間が余暇活動にもっと時間を費やして、創造的に生きている未来がある。グルメな食べ物、エキゾチックなヴィンテージワインやおいしいお酒を飲み、芸術を楽しみ、病気からも恐怖からも解放され、戦争もなくなり、人工知能の庇護の下で生を謳歌する未来……天国の中の天国、『ロボトピア』ワールドだ。だが私には、こちらの方も実現するであろう未来だとは思っていない。

“ロボット黙示録”後、私たちは未来の自分の居場所を、この2つの極端な世界観の間のどこかに見つけることになるのだろう。これは、労働力の再配分によって課税基盤が深刻な影響を受けた後の世界の姿だ。萎びて、経験豊かで、生涯を通してプロフェッショナルであった人たちは、全く関心のない新しい分野に、自分たちの居場所を見いだすことになるのだろうか。そして、まだ存在していない業種では、新しい雇用が創出されるのだろう。物理的世界では、コストを削減し、効果を高め、生産性を向上させるような自律システムが支持されていて、常に調整と最適化が行われていくのだ。

これは大変な戦いになるだろう

この世界では、私が仮定した「2021年ユニバーサル・最低収入保障プログラム法」のような援助は必要なのだろうか?たぶん必要なのかもしれない。その点で、「もし私たちがすべて仕事を失ったなら、ロボットが生産する商品を買える人はいるのか?」という質問は実に興味深いといえる。私たちの全員が仕事を失うわけではないが、かなりの割合の人々が仕事を失い、その結果、失業者となるはずだからだ。

私の友人のひとりである、ワシントンDCの有名な公共政策専門家は、私たちがすでに非課税者の爆発的増加を全く制御できていないため、何も起きないと私に言った。彼は、課税対象となる人が賃金労働者全体の0.05パーセントになるまで、公的援助プログラムは増大し続けるだろうと述べた。

今が政策イノベーションをする時だ

政策担当者たちは、企業のクライアントが独自のデジタルトランスフォーメーションに取り組めるように、政策の変革にアプローチする必要がある。私が何年も言い続けてきたように、今日の私たちは、残りの人生で経験する技術変化の中で最も遅い速度を経験しているのだ。技術進歩のペースは決して遅くなることはない。そして、FOMOは、革新を続ける強力な推進力となっている。そう、私たちは“ロボット黙示録”後の人生を望みのままに選べるのだ。賢明な選択をしようでないか。

 

参考文献

思考の第一歩として参考になる、記事をいくつか以下に示しておく。

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