TV中継以外の接点の中心はSNS

イングランドのプレミアリーグは200以上の国や地域で視聴されていて、世界中で最も視聴されているリーグといわれています。昨年は日本代表の岡崎慎司選手が所属するレスター・シティが優勝したことが、日本のスポーツニュースでも数多く取り上げられていたのでご存知の方も多いのではないでしょうか。

そのプレミアリーグで、今年はチェルシーというチームがリーグ優勝を果たしました。

 

このチェルシーというチームはTwitter、Facebook、Instagram、YouTube、Vine、Snapchatの公式アカウントを使って全世界にその活動を発信。それぞれの特徴に合わせた投稿をしています。

同じ優勝を伝える投稿でも、Twitterの投稿と、Instagramへの投稿ではこんな違いがあります(右にスワイプさせると…)

WE ARE THE 2016/17 PREMIER LEAGUE CHAMPIONS! 🏆🙌#ChelseaChampions #CFC #Chelsea

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チェルシーだけではなく、他のサッカークラブもTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeの4SNSの公式アカウントを運営しているのが主流となっています。

優勝決定試合をどのように盛り上げるか?

5月12日、チェルシーは「この試合に勝てばリーグ優勝」という試合を迎えることになりました。

ここで皆様に質問です。

試合(イングランドの現地時間で12日夜)にキックオフされるこの試合を「世界各国」のサッカーファンに見てもらうために、皆さんならどのような発信方法を考えますか? ぜひ考えてみてください。

 

チェルシーは、こんなインフォグラフィックを活用しました。

https://www.facebook.com/ChelseaFC/photos/a.217015422258.132731.86037497258/10155468437582259/?type=3&theater

 

これなら、どの国に住んでいる方が見ても、この画像1枚でいつキックオフなのかがわかりますよね!

その他にも非常に面白い投稿をいくつかピックアップしてご紹介します。

 

試合前は、TV中継などではあまり発信されないベンチの映像などをSNSで紹介。動画もふんだんに活用しています。

 

スターティングメンバーもこのように画像にして紹介。

 

試合中は、公式映像は権利関係もあり動画は投稿できないのですが、ゴールが決まると・・・

GIF動画を使ってゴールしたことをいち早く投稿します。

 

当日の試合は、このゴールが決勝点となり、見事チェルシーのリーグ優勝が決定!

優勝決定後の喜びの姿も、TVでは映らない裏側をたくさん投稿しています。

サポーターと共に喜びを分かちあっている瞬間や、

 

監督にシャンパンや水をかける選手たち!

When the boss walked in! 🍾🍾🍾 #ChelseaChampions #CFC #Chelsea

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芸能人やタレントのSNSアカウントとも共通すると思いますが、自分自身がそのチームや選手のファンで、TVには映らない選手たちの普段の表情がSNSで見られるとなると、そのアカウントをフォローしてみたいと思いますよね。

 

このように、さまざまなメディアを使って、非常に多くの投稿をしているチェルシー。この投稿頻度や内容は、今回優勝決定が近いから特別、というわけではなく日常的に各アカウントで1日に10本程度の投稿がされています。またチェルシーだけではなく、他のプレミアリーグのクラブでも同様に発信している所が多いです。

また、チェルシーは日本語アカウントも運営しており、公式サイト(実は日本語も対応!)の内容を中心に日本語で投稿されています。

 

Facebookページ(グローバルで1つのアカウントに統一)では、投稿のターゲット設定機能を使った日本語の投稿がされており、Facebookの使用言語に「日本語」と設定している人にしか表示されない設定になっています。ユーザーにとって読めない言語の投稿に触れることを防げるこの機能は、グローバルでアカウントを運用する際には非常に有効ですね。

https://www.facebook.com/ChelseaFC/videos/10155501890292259/

SNSの活用に際してどんなことを考えているのか?

こうしてさまざまなメディアを活用して情報発信をしているチェルシー。SNSの運用に携わった方ならわかると思うのですが、これだけの投稿に向けた情報を集めてくるのだけでも非常にたくさんの労力、そしてコストがかかります。それでもここまで投稿を続ける理由、そして運用時にどんなことを考えているのでしょうか?

 

ここからは推察となりますが、以下のようなことを意識しているのではないかと考えます。

・「1粒で何度もおいしい」効率的な素材集め

・累積的なユーザー体験/ブランドイメージの向上を目的と設定

・スポンサー(提携企業)とのWin-Winの関係作り

「1粒で何度もおいしい」効率的な素材集め

これは、試合前後の裏側の映像などの素材をSNS毎の最適な長さ、見せ方にして投稿することで、1つのメディア向けだけに閉じない、「1粒で何度もおいしい」素材として使い尽くしている様子が見受けられます。

また効率化という観点では、多様なメディアを使って投稿していることから、何らかの投稿管理ツールをうまく活用して運用していると思われます。

累積的なユーザー体験/ブランドイメージの向上を目的と設定

スポーツマーケティングは良いユーザー体験を提供することが大事と言われていますが、実際に足を運べない方に向けてもそれは同様で、SNSを活用して良いユーザー体験を届けるよう取り組んでいく必要があります。

紹介した投稿以外でもたくさんの投稿を調べていますが、ビジネスゴールのひとつであると考えられる「チケットの販売」を促す投稿(常に満員なので集客の告知の必要はあまりないですが)や、「グッズの購入」を促す投稿はあまり見られませんでした。

それはこのSNSを使った投稿はファンに喜んでもらうためのもの、累積的な顧客体験の向上に貢献することを目的としていることが、関係者全体で理解されているからではないかと推察されます。そして短期的な数値目標ではなく、長期的にファン増加に繋がることが何よりも大事であると信じて取り組んでいるのではないかと考えます。

スポンサーとのWin-Winの関係作り

先程の世界地図のインフォグラフィックをよく見ると、この画像にチェルシーのスポンサーである時計メーカーの「HUBLOT」のロゴが入っています。

SNSの性質上、こうした画像は自身のアカウントで管理できる範囲を超え、画像だけが独り歩きすることが想定されます。その時にもHUBLOTのロゴが入っていれば、スポンサーの露出にも繋がります。これが実現できるのは、クラブ側、スポンサー側の双方がSNSの活用に理解があるからではないかと考えられます。

国内チームはイケてないのか?

こうした海外クラブの事例記事を書くとよく言われるのが、「じゃあ、国内は全然ダメなの?」という声。

しかし国内のいくつかのクラブでも今回紹介したチェルシーのように積極的にSNSを活用しているところがあります。

中でも特徴的なのがJリーグの川崎フロンターレです。

Twitterではスタッフがさまざまな告知(なんとこの川崎では4つのTwitterアカウントを運用!)、またInstagramでは、クラブマスコットの「カブレラ」が投稿する設定で、試合以外の選手の素顔を紹介しています。比べて見ると、口調が異なることがわかると思います。

投稿内容や投稿の人格を変えて、1つのSNSアカウントだけではなく、他メディアのアカウントもフォローしたくなるような設計がされている、非常に良い事例です。

☀︎ 世の中では #母の日 だった昨日の試合⚽️🌹 みんなお母さんに感謝だねって、試合後それぞれSNSにも書いてたね(o˘◡˘o) そんな中、こちらの #DOLE さんのパイナップルを持ったタツヤくん🍍 天国にいるお母さんへ、自分のゴールとチームの勝利は最高の母の日のプレゼントだったと思う(´•̥ω•̥`)✨ どんどんタツヤくんの良さはサポーターのみんなにも伝わって来てると思うし、現に前半は「タツヤくんに出てほしいなぁ…」ってぼく思ったもん(•̀ᴗ•́)و しっかりチャンスを掴んで、試合に出続けてきた成果が徐々に出てきてる気がする☆ もっともっとチームになくてはならない存在になってほしいと思うぼくでしたっ(•͈ᴗ•͈)byカブレラ ☀︎ #長谷川竜也 #ヤマハスタジアムは地元静岡でもあった #そんな地元でしっかり活躍 #お母さん喜んでるかなっ #活躍ぶり届け届けっ #キュンキュンって感じの切れ味鋭いドリブルは見ててワクワクする #途中ドリブルで持ち込んで全力で打ちきれなかったシュートあった #次は迷わずトライしてほしい #遠慮するとか一切いらない #トライしてダメならみんなが必ず理解してくれるはずっ #frontale #フロンターレ #kawasaki #川崎 #soccer #サッカー #Jリーグ #jleague

Kawasaki Frontaleさん(@kawasaki_frontale)がシェアした投稿 -

目的を明確にし、熱量が伝わる発信を!

先ほども書いたように、スポーツマーケティングでは、他の業界以上に良いユーザー体験を提供することが大事と言われています。またスポーツマーケティングが音楽業界など他の業界のファンに向けたマーケティングと比べ難しいと言われている理由は、スポーツにはかなりの高い割合で「負け」があることです。ファンであれば誰もが望んでいない「負けた」体験を味わったファンに対し、いかにファンとして繋がり続けてもらうかを考えることが重要です。

 

そこで有効なのが、試合の一時的な「勝ち負け」でチームの価値を判断してもらうのではなく、選手やスタッフの普段見られないような裏側などユーザーと接する「面」を増やすことが、ファンのクラブに対する体験の醸成に非常に重要な役割を果たします。そうした発信がクラブから比較的簡単にできることが、スポーツマーケティングにおいてSNSが積極的に活用される理由です。

 

この時重要なのが、ユーザーが興味を持つ形で工夫した見せ方をすること。その体制作りと周囲の理解が非常に重要になってきます。

 

そのためにも今ユーザーが何を使って情報を収集しているのか、そしてそこではどういった情報を求めているのか、発信者側は情報に触れてもらうことでユーザーにどのような気持ちになってもらいたいのか、をきちんと整理した上で情報を発信する必要があるといえるでしょう。

 

今後もSNSを使ったファンマーケティングはますます拡大すると考えられます。その時、今回紹介した事例のように、多角的かつ、熱量が伝わる発信を真剣に考えないと、ファンの気持ちを高め、増やすことができない時代になっているのかもしれません。