あえて多くを語らず、興味を持たせ、多方向のネタを仕込む

6月初旬に公開された「日清」カップヌードルCM『HUNGRY DAYS 魔女の宅急便 篇』は、ハイクオリティなキャラクターデザイン、人気アーティストによる楽曲、豪華な声優陣で作りあげた映画のような映像と「まだ誰も知らない青春がはじまる」という気になるメッセージだけで見る人の「好奇心」を刺激しました。たった一度テレビでティザーCMを放映し、Twitterで紹介しただけでその投稿が瞬く間に2万リツイートを超え、話題となりました。

その後公開された本篇CMは、大ヒット映画『魔女の宅急便』を題材に、その主人公・キキが17歳になって高校生活を送っていたらというアナザーストーリーを青春物語として描いたもの。世代を超えた根強いファンが多い作品だからこそ、CMに対して「続編の映画があるのかと思った」「キュンキュンする」と評価する声もあれば、逆に「あんなのキキじゃない」という反感の声も上げられました。どちらにしても多くの人が事前に関心を持ち、CMに注目し自ら発信する行動を起こしたことに違いありません。

また、若者に人気のアーティストBUMP OF CHICKENがCMにオリジナル楽曲を提供し話題となりましたが、ソーシャルメディア上ではそこに注目するだけでなく、メンバーが大好きな『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する「綾波レイ」の声優、林原めぐみが予告編のナレーションをしたことによるコラボを祝う声や、CMの中に出てくる細かい演出にアーティストとの接点を見つけて喜びを共有するツイートなど、ファンの独自視点での話題が持ち上がり、拡散されました。

CMの予告編を作って限定公開することによって、見る人の興味を湧かせたり、CMを見た人がそれぞれ勝手に気になる方向へ話題を広げられるようなネタを仕込むことで、企業からの一方通行の話題提供ではなく、ユーザーを起点に多方向に話題が拡散された良い事例だといえます。

本人初出演! ONE OK ROCK起用の広告は謎だらけ

6月15日、渋谷109に突如として現れた『#10969GVP HONDA』と描かれた特大の壁面広告。今、日本国内だけでなく世界で活躍するロックバンドONE OK ROCK(以下ワンオク)のファンや若者であれば「10969」がワンオクのことを指していることは、語らずとも明白。ただ、これが何の広告なのか、そしてこれからどんなことが起きるのかはどこにも明かされず、“謎”に包まれていました。それにも関わらず、公式Instagramの投稿には8万以上の“いいね”が付き、ファンの間でも「何が待ってるの?」「ワンオクとHONDAのコラボ?」「ドキドキワクワク♥」など、期待の声が集まりました。

10969 Tower start! #10969GVP #oneokrock

ONE OK ROCKさん(@oneokrockofficial)がシェアした投稿 -

ティザーサイトでは、情報公開までの日時をカウントダウンすることで見に来た人の期待を煽りました。またその期待感をハッシュタグ“#10969GVP”でツイートさせる導線を入れることで、ユーザーの反応を使って情報を拡散させることに成功しています。ボーカルのTaka本人初出演のティザーCMでは『Go Vantage Point』と“見はらしのいい場所へ”というTakaの一言だけで構成されたシンプルでありながら、ユーザーの想像力を膨らませて興味を引く設計となっています。

http://www.honda.co.jp/GVP/

情報解禁日には、ティザーサイトで全国民放地上波でのCM一斉公開の詳細な日時を発表。TV離れと言われている若者にTVCMへの興味を持たせ、見逃さないようオンラインとオフラインをうまく絡めた話題喚起を行っています。このことで、TVCM公開日には企業が期待するユーザーの行動を導くことでしょう。

予約販売分、全て完売! 厳重な情報制限と期待値コントロール

東京おもちゃショーでその全貌を明らかにして話題を生んだ、ソニーの新しい“トイ・プラットフォーム”「toio」も、ファンの力を使って情報拡散させた好事例といえます。ティザー期には、謎めいた面白い動きをするおもちゃの動画と「ソニーのおもちゃ、6/1発表。」というメッセージだけで他の情報は一切開示せず、ソニーファンだけでなく情報に触れた人の、新商品への期待を醸成しました。その5日後、ソニーの運営するクラウドファンディング「First Flight(https://first-flight.sony.com/)」で予約受付を開始したところ、2万円以上する高額なおもちゃであるにも関わらず、予定よりも早く予約販売分を完売しました。

https://first-flight.sony.com/pj/toio

ティザー期の「toio」に関する情報開示は、プロジェクトメンバーの中でも厳重に制限され、とにかく情報が洩れないよう注意されていたようです。結果、ソーシャルメディアで起きがちな映画のネタバレのようなことが起こることもなく、ソニーのブランド力と新しい製品について謎めかせる動画で、ユーザーの想像力をうまく掻き立てました。

今回は企業が、発信した情報からユーザー間での会話が生まれるよう細かく慎重な設計をしたことで、ソーシャルメディアでうまく拡散された事例をご紹介しました。ソーシャルメディア上で、企業の情報を拡散させるためには、『ターゲットユーザーが興味を引く素材』×『ユーザー間の会話が盛り上がりやすい設計』を作ることが1つのコツだと言えます。見た人の想像力を刺激し、自由な発想により会話が生まれやすくすることはオンライン・オフラインに関係なく自然な情報拡散を生むことにつながります。キャンペーンの応募条件としてのつぶやき数を稼ぐよりも、自然とユーザーがつぶやいてくれるような情報発信を心がけていきたいですね。