■そもそもVRは普及するのか?

話題とはいえ、誰もが気になるのは本当に普及するのか?ということかと思います。

それでいうと、PlayStation® VRは今まで3回の予約販売すべてが完売、ということですし、ハードウェアの発売合戦状況を見ても、ハードウェアメーカー視点では誰もが「VRを普及させる」意気込みであることは疑う余地はなさそうです。

 

それでは冷静な目を持つはずの投資家の方々はどのように見ているのでしょうか?
9月に開催されたアドテク東京のVRセッションでも同じようなことは、話題としてあがっていました。その中では、The VR Fundが公開したVR業界の今がわかるカオスマップを取り上げつつ、欧米では「Infrastructure」や「Tools/Platform」への投資段階は終了し、「Applications/Content」レイヤーへ投資が移っているということが話題になっていました。

つまり、ハードの普及はほぼ確実で(と多くの投資家は考えている)、今後はコンテンツ勝負になるために既に資金が動いている、と言えそうです。

ここまで見てきた限りでは、VRが「非日常の特別なエンターテインメント体験」から「家庭に1台端末がある日常の体験」という普及状況になる日は、そう遠くない未来に、確実に実現されそうです。

■小売り系企業のこれまでの取組事例は?

では企業はVRをどのように取り入れているのでしょうか? 事例を見てみましょう。

 

事例1:THE NORTH FACE

韓国のロッテワールドモール内にオープンしたポップアップストアで実施された「極上のアウトドア体験」を訴求するためのプロモーション企画。見ていてワクワクする動画です。体験してみたい!

 

事例2:TARA JARMON

こちらは日本の事例です。2016年9月16日まで表参道のポップアップストアで開催されていたVR企画プロモーション。コレクションのテーマ「ECLIPSE-月食-」をイメージした演出が楽しめたそう。VR体験が終わった後の現実でもVR世界とリンクした演出があったそうです。

 

事例3:GAP

こちらも日本の事例。2016年夏に開催された「Gap 1969RECORDSキャンペーン」のクライマックスの企画。

他企画と一線を画すのは、GAP各店で5,000円以上の購買をした方に、ハコスコ(GapオリジナルのVRビューアー)を配り、なんと音楽フェス(!)がVRを通じてリアルタイムで体験できる、というもの。

まだハードウェアが普及しきっていない状況下での施策ということもあり、基本的には期間限定のプロモーションとして、店頭で体験するタイプでの活用が主な事例ですね。実際に体験しないとわからないVR独特の「WOW!」体験そのものをうまく使って、自社の商品、及びブランドイメージの訴求に活用する、というのがこれまでの事例にみられる特徴かと思います。

また、活用している企業を見てみると、小売りでいうと、店舗が郊外に多く大きな買い物になりがちな家具やインテリア雑貨、伝えたい世界観がしっかりあるラグジュアリーブランドを含むアパレルなどが導入には向いているように思えます。

■VR発売ラッシュを受けて、今後はどう活用すべき?

VRは言葉のとおり「仮想現実」であり、「その場に行かなくても、実際にその場にいるかのように体験できる」ことが本来の価値と捉えると、家庭へVR端末が普及することにより、

「WOW!」体験のプロモーション利用 → 購買活動の中にVR体験が組み込まれる

という流れが自然な流れではないかと考えます。

その意味では、IKEAの事例が先行していると言えそうです。プロモーション活用というよりは、「自宅にいながら実店舗に近いショッピング体験ができる」といったように、ECサイトの購買体験のリッチ化というチャレンジがされています。

 

事例4:IKEA

IKEAがHTC Vive向けに提供した「IKEA VR Experience」。バーチャル空間でIKEAのキッチンを歩きまわれるというもの。体験すると想像以上に実物を見ているのと同じ感覚が味わえます。

(気になる方はIMJでもお試しいただくことができますので、ぜひ気軽にお問合せください!)

最後に

とにもかくにも、ここ数年、小売り事業者の方々の興味関心の対象であったオムニチャネルの議論は、在庫や顧客情報の一元化などのサービスを提供するのに必要なインフラ整備が重視されていました。今後はテクノロジーを活用して、自社の顧客に対して、どのようなショッピング体験を提供できるかという議論をすべきタイミングなのではないかと感じます。

一家に一台の普及の先には、一人一台という状況も可能性としては十分考えられます。そうなると、複数人がそれぞれの家にいながらVR端末を身に着けて、同じバーチャル世界であたかも一緒に買い物しているように、会話をしながらショッピングができる、なども夢物語ではなくなるかも!? まさに現実のショッピングに近い、もしくはそれ以上の体験が自宅で実現されるということになりそうですね。今後もこの動きからは目が離せません。