登場人物

A太 4月に新入社員になる大学生。彼女の写真を毎週Instagramにあげているのを男友達に「そろそろマジで辞めてくんないかな。」と諭された。

 

B子 新卒入社でそろそろ3年目。終業後はInstagramのストーリーの投稿限界まで愛犬の動画を上げ続ける。メガネを変えた。

 

 

おはようA太! 何見てるのー?

 

 

AbemaTVで昨日分の『フリースタイルダンジョン』(*1)見てます! 自分の周りで結構流行ってるんですよね〜〜。年末も『紅白歌合戦』ならぬ『口迫歌合戦』なんて番組をやってたり、とにかく最近アツいんですよ!

 

確かに。『フリースタイルダンジョン』をブームの火付け役として、フリースタイルラップのような表現をテレビCMとかプロモーションでよく見かけるね。若者文化を利用したプロモーションといえば他にも、ダンスとかマネキンチャレンジとかの「◯◯してみた系動画」も結構企業が取り入れてない?

 

ありますね~! 多くの企業は、ワカモノを取り入れようと必死に試行錯誤してるみたいです。今回はそんなワカモノを取り込もうと頑張っている企業の思いが実際のところ片思いになっちゃってるってことをお伝えしていきましょう。

 

ラップ見てたからかもだけど、今日言葉にトゲがあるんじゃないの……?

 

ラッププロモーションは韻踏ませておけばいいって思ってないですか?

 

僕そこまでラップには詳しくないんですけど、日本語ラップブームは過去も何回かあったみたいですね。

でも今回の流行りは、何と言ってもフリースタイルのラップバトル方式です!

先程の話にも出てきた『フリースタイルダンジョン』のテレビ番組からのムーブメントはもちろん、2ちゃんねるやTwitterとか匿名性の高いSNS上だと悪口を言い合う風潮が若者に根付いているから流行ったんだと思います。

 

ワカモノに限らないけど、SNSってみんな口が悪いよね(笑)。

ただ悪口を言い合うだけだと気分悪くなるけど、上手く音楽に乗せて、韻を踏んで、って部分でエンタメとして成立してるのが新しいのかな。

結局は悪口の言い合いだから、「共感性の高い対立構造」ってのが重要になると思うの!

ラップバトルだと、昔から因縁のあるライバル同志が思いの丈を言い合う姿が燃えるんだよね~。

企業プロモーションで言うなら、ブラックサンダーのWeb動画は、「リア充VS非リア充」っていう共感性の高い対立構造を作ってる&カッコイDISり(=ラップ用語で悪口の事)で、すごく若者の反響があったように感じるな。

 

僕はどん兵衛の東西対決がいいと思うんですよ。日本に住んでいる人なら必ず聞いたことある「関東VS関西」の構造は多くの人の共感を呼びますし、正直よく言われるネタなので実際は誰も傷つかない(笑)!
僕の周りは結構見ている人多かった印象ありますね。

 

これ惜しいな~って思うラップの企業プロモーションは、バトルのないラップだったり、企業の説明色が強いようなライム(ラップ用語で歌詞のこと)(*2)です。

「対立構造」がなきゃラップでののしり合う必要性がないですし、歌詞に「DISりの精神」(*3)がないとラップバトルとして成り立たないですもんね。違和感があります。

内容に機能訴求の意味合いが強くなればなるほど、若者には受け入れ難いように感じました。

 

すごい分かる。ラップに関して共感がないとかっこいいとか感じないし、「いいね」とかシェアのアクションもしたくならない。
なんか、そんなに無理してラップにしなくていいのにな。とか思っちゃうんだよね~。

 

ということで! 若者向けにラップという表現でプロモーションをするには

・キレ味鋭いDISり(毒舌)

・共感が生まれやすい対立構造

この2点をしっかり押さえたラップが響きやすく、シェアされやすいと思います。

なんでもかんでも「◯◯してみたwww」って動画撮ってくれると思ってませんか?

 

そう言えば、B子さんは『恋ダンス』踊れますか?

 


踊れるよ! カラオケ行ったときとか、踊ってInstagramのストーリーに上げてた。もう古い気がするけどね。

 

あ~、見たかもしれません! なんで動画に撮ってアップするのが流行るんですかね? 僕、写真はまだしも、動画は結構恥ずかしいんですよね。

 

学生時代ならではのライブ感はあると思うな。「いまこの瞬間が楽しい!」みたいなことってよくあるし、それをシェアしたくって撮るのかも。

お昼休みとか、ずっとくだらない事で笑ってた学生時代の思い出ってあるよね。

でも、一番大きな理由はスマートフォンの普及による「ビデオカメラの身近さ」なんじゃないかな? 休み時間、放課後にサッと撮れる気軽な感じが動画でのシェアのきっかけになったと思うんだよね!

そして自分たちで撮る動画に一工夫いれることによって他人と差別化すると、「いいね」とか「再生数」という分かりやすい数字で自分が他人に人気だってことが分かるってことが、流行っている理由なのかも!

よく「いいね」目的の投稿ウザい!みたいなこと言う人いますけど、そもそも「いいね」されなさそうな内容なんて投稿する価値さえないですからね。SNSは人に評価されてナンボですよ!

 

DISるね~! だからこそ、与えられたテーマの通りにやってみた様子を動画に撮るだけじゃダメになってきたんだよね。それじゃ「いいね」はもらえない。

例えば、難易度が高くて、挑戦心をくすぐられる仕掛けだったり、人よりかわいく/かっこよく見えるようなアレンジ性があるものだったり。

特にダンスの動画とかはそういうオリジナリティにあふれたものをよく見るよね。

プラスアルファで誰よりも「いいね!」を獲得できる動画にすることに、みんな工夫を凝らして頑張る傾向があると思うんだ。

 

そう考えるとポカリの『ガチダンス』は凄いですね。Twitterでは動画の共有を含めると9,000件以上つぶやかれてます。


これは、ある程度練習しなければ踊れない難易度、動画を撮る場所が面白いほど加点するアレンジ性、最後にTVCMに出演できるという賞品の豪華さで、これだけつぶやかれるようになったんだと思います。

動画を見てると、最後のキャッチコピーに説得性がまして、染みますよね。

ガチなダンスとスポーツ飲料っていう相性の良さもバッチリだと思います。


そう言えば最近見たんだけど、これ知ってる? これも凄いんだ。

 

ドコモの『ペンスポ』は、誰でも参加できる簡単なものから、「どやれる」レベルに難しいものまである多様な難易度、アレンジ加え放題の自由さ、なかでも「シンクロペン」っていう双子ダンス(*4)みたいな振り付けに、アレンジ加える動画が人気みたい!

これも、携帯電話会社が若者に「理解してますよ!」ってメッセージを送りたいのであれば、成功だよね! でも、全く携帯出てないけど良いのかな……(笑)。

 

いやいや! 動画を撮ってSNSに上げるのは携帯電話ならではの行為なので!

スマホじゃなきゃできないことですもん。しっかり広告になってますよ!

 

なるほど、主役じゃないけど、しっかりそこに携帯があるのね。

ん~、やっぱり企業がプロモーションを考えるなら。安易にワカモノの流行りに乗っかるだけじゃダメだよね。

 

そうですね「若者の流行!」とひとくくりにしても若者の事をしっかり分析してプロモーションをしないと、ぜんぜん若者は参加してくれないんだよ!ということですね。

 

イメージなんですが、企業のブレストで「何が流行ってるの?」「ラップですかね」「いいじゃん、やろう! それ採用! それといま扱っているこの商品を使えばワカモノに売れる! やったるぞー!」みたいに安易に直結している企画が多いんじゃないかと……。

 

つまり今回取り上げた「ラップ」と「◯◯してみた動画」の例で言えば、

ラップはDISりの精神対立構造がなきゃ成り立たない!
◯◯してみた動画には難易度アレンジ性がなきゃ成り立たない!

というように、流行りを取り入れるんだったら、しっかりどんな文脈で流行っているのかを分析しないと「流行に乗っている風」だけど、ワカモノには理解されないプロモーションになっちゃいますね。


ワカモノの流行、扱いは用法用量をよく守って、ですね。

 


すぐ流行り廃りが来るから、敏感になってないとね。

 

※詳細情報と注釈

*1 フリースタイルダンジョン

テレビ朝日が放送する、日本全国の若きフリースタイル(即興)ラッパーたちが夢をつかむために最強ラッパー(モンスター)たちに戦いを挑み、勝ち抜ければ賞金を獲得できるという夢に満ち溢れている番組
(http://www.tv-asahi.co.jp/freestyledungeon/)

*2 ライム

韻を踏むということ。
韻を踏むというのは、母音(a,i,u,e,o)をそろえるということ。
ex:『避難』を『非難』する・『解雇』を『懐古』したなど。

*3 DISりの精神

語源:disrespect(ディスリスペクト)=軽蔑、無礼
respect(尊敬)に反意語を意味する接頭辞「dis」をつけた単語【はてなキーワードより】
ラッパーの文化的風習。歌詞の中に皮肉や攻撃・批判を織り込み特定個人(敵)に向けて歌うこと。disられたら返事(アンサーソング)を返すことが礼儀である。disりはただの攻撃ではなく、お互いを高め合うため(もしくは愛ゆえ)のdisりも入っているため粋なアンサーが求められる。
ネットスラングとしても使用されており、ワカモノのコミュニケーションの一部となっている。

*4 双子ダンス

女子中高生に人気のMixChannel(通称:ミクチャ)で友人などと“双子”のような服装し上半身のみを映し簡単な振り付けをコンビで行う今女子中高生たちがハマっているダンス。
室内等で気軽に行える上に服装などで“自分たちらしさ”のアレンジを加えることができるため、熱が入りやすい。