2016年、「Adobe Flash」は「Adobe Animate」に名前が変わりました。 Adobe公式では、名称変更の理由を以下のように記しています。

“Webや新たなプラットフォームに最適なアニメーション制作ツールであることをより明確に示すため、2016年初頭に予定している次のリリースの配信に合わせ、Adobe Animate CC へ名称変更いたします。”
Adobe Flash Professional を Adobe Animate CC に名称変更

Adobe Animate CC

Webアニメーションの扉を叩いて、隆盛を極めたFlashは、Flash Playerというプラグインによる再生から、HTML5を始めとする、より幅広いプラットフォームへの対応を求められ、Flashという名前を捨て、新たにAdobe Animateとして生まれ変わりました。私は2000年に発売された、Macromedia Flash 5の時代から、約16年Flashを使って仕事をしてきましたので、少し感慨深いものがあります。

Webアニメーションについて、まずは、そんな一つの時代を築いたFlashの歴史と特徴について触れていきたいと思います。

Flashの歴史

Future Splash Animator(1996年発売)

Flashの歴史の大きな流れとしては、まず1996年、フューチャーウェーブ・ソフトウェアがアニメーション・データを作成するソフト「Future Splash」を開発。これをマクロメディアが会社ごと買収、「Future Splash」の頭文字「F」と語尾の「-lash」を合わせて略称を「Flash」としました。ベクターグラフィックスアニメーションプラグインとしての「Macromedia Flash」の誕生です。 Webコンテンツの黎明期、回線速度が遅い当時の環境下で、リッチな表現を実現できるベクターグラフィックス動画は、早い段階で多くの支持を得ることに成功しました。

当時スプラッシュムービーと言われる、Webコンテンツの導入時に表示させるアニメーションがはやりました。思い返すと内容に意味などなく、単に「Welcome to IMJ !」みたいなものが多かったような記憶があります。当時は、“動いてる”っていうだけで凄かったのです。

Macromedia Flash 5(2000年発売)

次第に「Macromedia Flash」はスプラッシュムービーだけでなく、マウスなどのユーザーの入力や行動に反応させるインタラクション性を持ち、オールFlashコンテンツと呼ばれるFlashだけで完結するコンテンツが作られるようになっていきました。この「Flash」の発展に大きな役目を担っていたのがActionScriptです。ActionScriptは1.0、2.0とバージョンアップを重ね、プログラミングの機能が大幅に強化されていきました。

当時のActionScriptは、基本的にはアニメーション用のタイムラインのフレームに直接記述する方式でした。アニメーションという時間軸と、プログラムが共存する、非常に特殊な状況で、複雑なコンテンツになればなるほど、黒魔術的なものになりがちでした。いまだに当時のFlashが運用されていて、巡り巡って、どこかの誰かが作った黒魔術の運用の依頼が来ることがあります。

Adobe Flash Professional CS5(2010年発売)

そして、2005年マクロメディアはアドビシステムズに買収され、2007年アドビのクリエイティブ製品群である「Adobe Creative Suite3」に組み込まれて「Adobe Flash」となりました。「Adobe Flash」になってから、Javaをモデルとした、大規模開発に適したクラスベースのオブジェクト指向言語としての機能をもったActionScript3.0が搭載され、ウェブアプリケーション構築のための「Flex Builder」や、デスクトップアプリケーション構築のための「Adobe Air」、ストリーミングによる動画配信やリアルタイム通信のための「Adobe Media Server」など、活躍の場を広めていきました。

FlashがRIAと呼ばれるWebアプリケーションなどに活躍の場を広げるにつれ、ActionScript3.0が必須となりました。このActionScript3.0は、これまでのActionScript2.0から、大幅な仕様変更があり、より高度なプログラミングスキルが必要となったので、この時点でFlashに対応しきれなくなったエンジニアは多いのではないでしょうか。ActionScript3.0の壁がそこにはありました。

Flashを支えた巨人達

ここで、あくまで個人的な観点から2005年頃〜2010年頃のFlashを支えた制作会社、クリエイターを紹介します。

  • 2Advanced Studios
    世界的に有名なアメリカのウェブ制作会社です。当時Flashコンテンツにおいては抜群のクリエイティブで世界を圧倒していました。

http://www.2advanced.com/

  • バスキュール
    当時、日本においては、Flashコンテンツで他を圧倒するセンスとデザイン力と技術力を持つ制作会社でした。もちろん今もそのクリエイティブ力は変わりません。
  • 中村勇吾氏
    Flash黎明期の巨人、中村勇吾氏。すでに閉鎖されていますが、Yougop.comを覚えている人は多いでしょう。今も活躍の場を広げて、活動されています。
  • 城戸雅行氏
    Flashで3Dといえば城戸雅行氏。 3Dエンジンを自作で作り、ハイパフォーマンスな3Dコンテンツを数多く作っては話題になっていました。

http://roxik.com/

Flashの特徴

Flashには、大きな特徴が3つあります。一つ目は、ベクターイメージ、ラスターイメージの両方を扱え、タイムラインというアニメーションの概念を持っているということ。二つ目は、スクリプトを併用することで、インタラクション性を持たせることが可能になったということ。そして三つ目が、Webブラウザのプラグイン「Flash Player」で再生するということです。

IDE (Integrated Development Environment)としてのFlash

Flashは、アニメーションツールとして非常に優れていて、『ピンポン』や、『鷹の爪』など、多くのアニメーション作品に利用されてきました。

もちろんアニメーションだけでなく、インタラクション機能を付与する、ActionScriptも用意されていて、アニメーションとプログラムが見事に融合された、非常に優れた開発環境でした。 2007年のFlash CS3以降(一番初めに採用されたのは2006年に発売されたFlex2.0)採用されたActionScript3.0は、インタラクティブなコンテンツ作りに最適化され、体系づけられたフレームワークが用意されていました。

話は戻りますが、特徴の三つ目であげたプラグインであることは、クロスブラウザの問題をプラグインが解決してくれたり、プラグインの再生能力の向上や新機能の追加を、コンテンツも即座に教授できるといった、ポジティブな面がありますが、代わりに、アクセシビリティの問題や、セキュリティ上の問題といったネガティブな問題を引き起こします。実は、この三つ目の「プラグインで再生する」という点が、Flashの歴史に大きく影響を残していくことになります。

Flashの変革

インターネットデバイスとしてPCが主流だった時代から、iPhone、Androidを始めとするスマートフォンが台頭し始めた頃、大きな発表がありました。 2010429日、当時のApple社のCEO、スティーブ・ジョブズ氏は、iPhoneをはじめとするモバイル端末でAdobeFlashをサポートしない理由を公式サイトに掲載しました。

  1. オープン性について
    Flashに将来搭載する機能や価格はすべてAdobeが決定する
  2. 信頼性、セキュリティ、性能について
    Flashにはセキュリティの問題が多いだけでなく、Macintoshでのクラッシュを引き起こす原因となる
  3. バッテリー駆動時間について
    多くのFlashサイトではソフトウェアでビデオをデコードするため、再生でバッテリーを大量に消費する
  4. タッチ機能について
    Flashはマウスを使うPC時代の技術であり、モバイル端末のタッチ操作に対応していない
  5. 最も重要な理由
    Flashによる機能の制約から開発者を解放する

http://www.apple.com/hotnews/thoughts-on-flash/

Flashの主な出力対象となるFlash Playerがプラグインであるというネガティブな面が、まさに槍玉となったのです。 Flash PlayerはHTML、CSS、JavaScriptといったWeb標準の技術とは違い、開発元のAdobeの意向が100%反映されます。 W3CWHATWGの考えるWorld Wide Webから逸脱したものだったと言えます。そして、2008年の草案発表から、徐々に注目を集めてきたHTML5が、脚光をあびるようになりました。

あくまで私の個人的な感覚ですが、2012年頃を境にFlashコンテンツの制作依頼が減少傾向に向かい、代わってスマートフォンサイト構築などの依頼が増えていったように感じます。

Flashの現状

HTML5の注目と共に、Flash Playerで再生するWebコンテンツは減ったかもしれません。しかし、冒頭にも書きましたが、2016年、FlashはAnimateと名前を変えて、出力対象をFlash Player、AIR、動画、そしてHTML5 Canvas、WebGL、さらには拡張機能を利用する事で、SVGやUnityなど、マルチプラットフォーム化の意図を明確化しました。今後Animateは、これまでのFlash Playerという枠組みにこだわらず、幅広く、Webアニメーションを実現するクリエイターのためのツールとして、使われていくことでしょう。

最後にマルチプラットフォームを体感していただくためにも、Animateでアニメーションを作り、Flash Player用に書き出したものと、HTML5 Canvas用に書き出したものを並べて見てみましょう。

上がFlash Player用に書き出したもので、下がHTML5 Canvasに書き出したものです。

Flash Player版もHTML5 Canvas版も、どちらも差異なく動いているかと思います。 Flash無しで、このような複雑なアニメーションを再現するのは、非常に困難かと思いますが、Flashを使えば、比較的容易に、複雑なアニメーションでも、実現することが出来るのです。

まとめ

Webアニメーションの変遷について、今回は「Flashの隆盛」ということで、Flashの歴史と、Flashの特徴について解説しました。

IT技術は進歩がめまぐるしいのは言うまでもないかと思いますが、その中でもFlashは、長い間、Webアニメーションの技術として存在感を出して、採用され続けてきました。それは、アニメーションの範疇にとどまらず、Webコンテンツの黎明期を支えたといってもいいかもしれません。そして、FlashはAnimateとして生まれ変わり、マルチプラットフォームに対応した、Webアニメーションに欠かせないツールとして発展していくことでしょう。

 

次回は、「HTML5の台頭」について解説していきます。