7月15日(現地時間)にフランスの優勝で幕を閉じたロシアW杯。数々の素晴らしいプレー、世界中が熱狂している様子は大会期間中さまざまなメディアに取り上げられていました。
「サッカー大好き! だけど、今回の日本代表は直前の試合の結果も良くなかったし、期待できなさそうだな……」と思っていた筆者。しかし、そんな下馬評を覆し、日本代表も見事にグループステージを突破し決勝トーナメントに進出。Round of 16では今大会3位となった、FIFAランキング3位のベルギー(日本は61位)と対戦し、一時は2-0と大きくリードしたものの、後半アディショナルタイムに逆転され敗戦。しかし、優勝候補に挙げられていたベルギーに対して大善戦したことで、世界のサッカーファンは日本代表チームを大絶賛。日本でも大いに盛り上がりをみせました。

今回はそんなロシアW杯を、デジタルを使った視聴スタイルの変化という視点から取り上げてみたいと思います。

リアルタイム実況はTwitter強し!

今回のW杯はロシアとの時差の影響で日本時間の夜遅く、または早朝に開催されていましたが、そんな時に非常に活発だったのがTwitter。試合をTVで見ながら、応援・悲鳴・ゴールが決まった時の歓喜・その他さまざまなツイートがタイムラインを駆け巡りました。日本戦の時のツイート量は非常に多く、試合中の時間帯に多くつぶやかれているトレンドランキングでもW杯関連の言葉が多くを占めました。これまでのオリンピック・W杯でも同様の傾向は見られましたが、2018年もリアルタイム実況のメインストリームはTwitterでした。

中でも印象的だったのは、6月のトレンドとして「\月刊!/ソーシャルトレンド #4」でも取り上げた「大迫半端ないって」という言葉だったのではないでしょうか?

この言葉はW杯のグループリーグ初戦・コロンビア戦で決勝ゴールを決めた大迫勇也選手の代名詞となるキーワードで、年末年始に開催される高校サッカー選手権で当時高校生だった大迫選手と対峙した対戦相手が試合後にカメラの前でこぼした言葉です。
当時からサッカー好きには知られていて、大迫選手が活躍すると以前から多くのサッカー好きが「大迫半端ないって」と使っていましたが、W杯は注目度が桁違い! 初めて「大迫半端ないって」という言葉に触れた方も多く、Twitter上でも非常に盛り上がり、その盛り上がりをTVなどのマスメディアが取り上げる。それによって知った方がまた新たにTwitterで使う、という循環が出来上がっていました。
一部では既に流行語大賞の候補にノミネート確実では?という声があることからも、「大迫半端ないって」という言葉が世の中に広く浸透したことが分かるかと思います。

19日のコロンビア戦で40,000件超え、セネガル戦で約30,000件のツイートが。

「大迫 半端ない」のツイート件数

また、Instagramのストーリーズを使って、パブリックビューイング会場や友人と一緒に観戦しながら、盛り上がっている様子を随時投稿している人も多くいました。普段はファッションやネイルなどの投稿でタイムラインを占める人も、ストーリーズ投稿ではユニフォームを着て応援している姿を気軽に投稿している様子も目に入ってきました。

「NHK W杯」アプリの完成度の高さに感服! 試合視聴の体験が大きく変化

次に注目したいのは「NHK W杯」アプリです。NHKは近年オリンピックの大会向けにアプリをリリースし、TVでは中継されない競技の配信などをしていましたが、今回のW杯でも専用アプリをリリース。一部試合のリアルタイム視聴と同時に、テキスト実況、ボール支配率やシュート数などのデータ、パス成功率や走行距離のリアルタイム更新、試合後にはダイジェスト映像のクイックな配信など、ただの試合観戦にとどまらないサッカー観戦体験を提供してくれました。

このNHK W杯アプリが大活躍したのが、グループステージ第3戦の時でした。この時日本代表はポーランド代表と対戦。日本戦の結果だけではなく、同時開催されている同じグループのコロンビア対セネガル戦の結果によって日本が決勝トーナメントに進出できるか否かかが決まる状況となりました。そんな時、①TV画面で日本対ポーランド戦を視聴、②スマートフォンを使ってコロンビア対セネガル戦を視聴、そして③また別の端末を使ってTwitterで実況、という3つのデバイスを駆使し、欲しい情報をあらゆる手段を使って入手している猛者が数多くいました。こんな視聴体験ができるのも、「NHK W杯アプリ」があったからこそ。今後もこうしたアプリを活用した配信、マルチデバイス視聴は進化していくのではないかと予想されます。

他国の試合結果、メンバー、各選手のパスの精度まで分かる

NHK W杯アプリ

その中でもサッカーファンに非常に話題となったのが、「マルチアングル観戦」です。
通常の試合実況の画面(メインスタンドからのカメラ)だけではなく、上空のワイヤーカメラ、通称「戦術カメラ」と呼ばれるピッチ全体を見渡せるカメラ、両チームの監督を常に映しているカメラなど、複数のアングルから試合を視聴することができました。主にサッカーファン、中でもサッカーの戦術好きや、サッカーゲームなどでこうしたアングルから見ることに慣れている方から特に好評でした。これを見ながら自分が監督になった気分で戦術や次に打つ手を考えたサッカーファンも多かったようです。
また、そこまでサッカーファンではないけど、W杯には関心を持っているという方に向けても、このアプリは非常に使いやすいアプリでした。
今までは試合のゴールシーンなどのダイジェストはTVのスポーツコーナーなどを待たないと見られなかったのですが、ハイライト映像はいつでも視聴可能ですし、リアルタイム視聴中でも、ゴールシーンに戻って視聴することも簡単にできます。

このように、これまでのサッカーのTV観戦では知りたいけれど知ることができなかった情報を気軽に得ることができるようにしてくれたことで、サッカーを現場以外で観戦する際の新たな楽しみ方を提供してくれたアプリとなりました。

選手自ら積極的にSNSで発信。選手との距離感に変化

最後に取り上げるのは、日本代表選手の積極的なSNSでの発信です。
今までは選手の言葉や思いはTVや新聞などのメディアを介さないと得られませんでしたが、現在は多くの選手が個人のSNSアカウントを保有。ブログを保有している選手も過去にも多かったですが、気軽さ・即時性という点ではSNSアカウントはサポーターにとって非常に身近な存在になっています。
選手も積極的にSNSを活用し、オフショットなどと共に自分の考えなどを情報発信していました。中でも印象的だったのは長友佑都選手だったのではないでしょうか。
「“スーパーサイヤ人”になってチームを救う!」と宣言して大会直前に金髪に染め上げた長友選手。
見事グループリーグを突破し、Round of 16で戦う優勝候補のベルギー戦に向けて長友選手はサポーターに向けて“元気玉”を作るために「エネルギーを送ってください!」とツイート

残念ながら試合には敗れましたが、ベルギー戦終了後、その“元気玉”に応えるかのようなポーズを決めた画像と共に、サポーターへの感謝の気持ちを伝えるツイートを発信。このツイートは10万弱のリツイートを数えました。

また、キャプテンとして日本代表を支え続けていた長谷部誠選手は、メディアへの発表よりも早くInstagram上で日本代表の引退を発表
真っ先にサポーターに向けて「自らの声」で伝えてくれました。

まず始めに、ロシアW杯での日本代表チームへの多大なるサポート本当にありがとうございました。 皆様からの力が日本代表チームを前へと押し進めて下さいました。本当に感謝しています。 そして僕個人としては、この大会を最後に日本代表にひとつの区切りをつけさせていただきたいと思います。 日本代表という場所はクラブとは違い、いつ誰が選ばれるかわからないところであるので、いち選手からこのように発信する事は自分本位である事は承知しています。 しかし、2006年から約12年半という長い間共に戦った仲間たち、多大なるサポートをして下さった日本の皆様に感謝の気持ちを伝えさせていただきたいと思い、こうして書かせていただいています。 日の丸を胸に戦った時間は僕にとって誇りであり、なにものにも代え難い素晴らしいものでした。 共に戦った7名の監督方、コーチングスタッフ、代表スタッフのみんな、そして素晴らしきチームメイトたち、最高の仲間でした。 特に主将を務めさせていただいた8年間は皆に支えられてばかりでした。 貴方達と共に同じ時代に戦えた事は幸せでした。 そして日本代表サポーターの皆様、これまでのサポートに心からの感謝を伝えさせていただきます。 12年半の間、様々な事がありました。 歓喜も失望も共に味わいましたね。 良いときもそうでないときも僕たちの背中を押してくださいましたね。 皆様と共に歩んだ時間は僕にとって大切な宝物です。心から、ありがとう!! 最後になりますが、これからは僕も日本代表チームのサポーターです。 一緒に日本代表チームに夢を見ていきましょう!!! 長谷部誠

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多くの選手が自分自身の思いや決意などをSNSで直接発信することで、応援していたサポーターは選手の素直な思いを受け取ることができ、選手との距離を今までよりも近く感じました。また、なかなか結果の出なかった大会前や、最後の10分を攻めずにボールを回し続け、国内外で賛否両論あったグループリーグ第3戦のポーランド戦の後には一部サポーターからコメント上で批判もありましたが、大会終了後には選手本人の声としてサポーターへの感謝の気持ちや、一定の充足感を感じている発信が多かったことで、日本を応援する方々の多くが最後にはポジティブな気持ちで終えられたのかもしれません。

2020はどうなる? 今後のスポーツ×デジタルに注目

このように、今回のロシアW杯ではデジタルやSNSを介して知りたい情報にすぐにアクセスできるようになり、今までにはない形での視聴体験・応援体験をすることができました。

  • 気軽に発信→友人・知人の様子がすぐにわかる
  • 観戦スタイル・デバイスの変化
  • 選手によるSNSを使った直接発信

の3つの要素が組み合わさることで、今までのW杯と比べて、より「自分も参加しているんだ、そして応援するんだ」という気持ちを醸成しやすくなったと考えられます。

今後もスポーツとデジタルの融合は更に進んでいくと思われます。
例えば、2020年の東京オリンピックに向けた取り組みを考えた時、選手の多くがSNSアカウントなどを保有していて、TVではあまり紹介されない裏側や自分の思いについても、自ら発信したり、大会の公式アカウントによっても紹介されていくと思われます。

また、さまざまな競技が並行して開催されるので、これらを統合的に確認・閲覧できるようなサービスがあると、非常に多くの方に利用してもらえそうですし、また大会会場に行った方にとっても、競技のルールを補助するようなサービスがあると、より目の前の競技が理解しやすく、競技への熱が高まるのではないかと推察できます。
こうしたスポーツ×デジタルの領域で技術の進歩と共にどんなサービスが広がっていくのか、という視点でこれからの2年間に注目していくのも面白いかもしれません。

(いやー、しかし、ベルギー戦は本当に“あと少し”だったよなー。私の元気をもう少し分けられていたら、勝てたのかもなー)。

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