BTS(防弾少年団)とは?

BTSは韓国の7人組ヒップホップボーイズグループです。ワールドツアーでは全世界で1,585,000人(51公演)を動員し、メンバーが運用するTwitterアカウントのフォロワーは2000万人を突破。世界的な人気を博していますが、2013年デビュー当時から韓国国内でのテレビ出演は少なく、SNSを上手に活用することによってファンを獲得してきました。ファンダムはARMYと呼ばれ、筆者もその一人です。そんなBTSが新たな動きを見せています。

Loveを反転させるとarmyに見えるとファンの間で話題になったMVの1シーン。このようにファンが喜び、拡散してもらえるような仕掛け作りが上手い

BTSのSNS活用が新境地へ:ついにオウンドSNSを立ち上げ!

所属事務所のBig Hit Entertainmentが駆け出しの事務所だったということもあり、マスへの出演が難しかったBTS。そこで、徹底的にSNSを使いこむことで、世界的人気を獲得しました

そんな彼らのSNS戦略には見習うべきポイントが多々あり、すでにとりあげている記事も既に多く存在しますが、2019年7月に新たな動きがありました。

公式ファンコミュニティ BTS Weverseの設立です
 

Weverseというスマートフォンアプリの中にできたファンコミュニティ内ではファン同士はもちろん、メンバーとのコミュニケーションもとることができます。その機能はまさにSNS
運用はBig Hit Entertainmentの子会社なので、オウンドSNSとも呼べるのではないでしょうか?

では、Weverseについて詳しくお話しする前に、これまでのBTSのSNS活用ヒストリーを振り返ります。

世界で注目されるBTSのSNS快進撃を振り返る

【YouTube】24時間に最も再生されたMV ギネス記録に認定

2019年4月12日に発表された『Boy With Luv feat.Halsey』 。アメリカの歌手Halseyがフィーチャリングに参加したミュージックビデオは、公開から24時間で7460万件のアクセス数を記録。24時間で最も再生されたYouTube動画など、4つのギネス記録に認定されました。

【Twitter】2018年 最も「いいね」されたツイート&最もツイートされたアカウント

MVだけでなく、彼らの日常投稿にも注目が集まっています。メンバー全員で運用しているツイッターアカウント(@BTS_twt)はかなり頻繁に更新されており、投稿がTwitterの世界トレンドを動かすことも少なくありません。2018年にはTwitter社が発表した最もツイートされたアカウントに@BTS_twtが選ばれました

また、BTSのメンバーJ-HOPEによる2018年7月の「#InMyFeelingsChallenge」の動画付きツイートは2018年最も「いいね」されたツイート1位に選ばれました。“シンクロダンス”と表現されるほど、ぴったり息の合ったレベルの高いダンスパフォーマンスを披露するBTSの中でも一番ダンスが上手いJ-HOPE。カナダ出身のラッパー・DRAKEの大ヒット曲「In My Feelings」に合わせ、リズミカルに体を動かすダンスチャレンジ動画は世界中のセレブに広まりました。いち早くその波に乗り、クオリティの高い動画をアップしたことで多くの「いいね!」を集めることができました

また、2018年のトップリツイート30に「#InMyFeelingsChallenge」ツイートを含む BTSのツイートが4つランクインしています。

【V LIVE】注目の動画配信サービスV LIVEのアワードで4冠

BTSが他のK-POPアーティストと比べてもかなり力を入れている動画配信サービスがあります。2019年JK・JC流行語予想(株式会社AMFが発表)のアプリ部門に名前が挙がった注目のアプリV LIVEです。
V LIVEはK-POPアイドルが主に使用している動画配信アプリで、ライブ配信がみられ、後日翻訳もつくことから日本のファンの間でも人気が高いです。中でもBTSはライブ配信はもちろん、毎週火曜日に30分のバラエティ番組『Run! BTS』を配信(視聴無料)。ステージとは違う素の一面を見ることができ、ファンの間でも大人気です。世界を席巻するスーパースターになっても、普通の若い男の子たちなのだと親近感を持ってもらえるような動画になっています。なお、BTSはV LIVEのアワードで4つの賞を獲得しています。

3年連続Billboard Top Social Artist

このような活動も功を奏し、2019年5月1日に開催された2019 Billboard Music Awards でTop Social Artistを受賞しています。Top Social Artistは2011年に開設されて以来6年間、Justin Bieberが受賞し続けてきましたが、2017年にBTSが受賞し3年間王座を維持しています。最近では中国版ツイッター weiboのアカウントも開設。積極的に投稿を行い、さらなるファン拡大に向け動いています。

既存のSNSを使い倒したBTS。次なる一手は!?

BTSが所属するBig Hit Entertainmentの子会社、株式会社beNXが2019年7月1日にローンチしたBTS Weverseというファンコミュニティ
もともと、ペンカフェとよばれるクローズドファンコミュニティが存在しており、その役割を引き継ぐ形で生まれたコミュニティですが、機能はまさに主要SNSのいいとこどり。SNSを使い倒してきたことがわかるような仕様になっています。では、ここからWeverseアプリの5つの特長をご紹介します。

1.Twitterより濃いコミュニーケーション。ファンが集うクローズドコミュニティ。

Weverseの主要な機能はTwitterやFacebookのように投稿ができ、他のファンやメンバーの投稿が見られるフィードです。他のSNSと違う点はファンだけが使用しているコミュニティーという点と、メンバーからのコメントがもらえる可能性があるという点です。

ファンのみに向けた発信ということで、メンバーはファンや曲に対しての熱い思いを長文で語ることもあります。さらに、メンバーからファンへコメントがくることも! 筆者ももちろんWeverseに登録しており、メンバーがファンの投稿にコメントをすると通知が来ますが、多い日で20件ほどコメントをしてくれることもあります。中には、複数のメンバーからコメントが寄せられた投稿もありました。このように既存SNSに比べ、親密度が高いコミュニケーションをすることができるのです。さらに、こうしたメンバーの投稿やコメントへの感想がTwitterなどで多く投稿されており、利用者も増加。2019年8月現在、BTS Weverseだけで200万人以上が登録しています。

Twitter上ではメンバーの投稿に対する感想も多く寄せられている。

2.翻訳機能でグローバルなファンを逃さない!

TwitterやInstagramにも翻訳機能自体はありますが、ボタン位置がよりわかりやすく、ワンタップで使用できます
アプリ内言語は英語、日本語、韓国語に対応。投稿やコメントの翻訳は英語、日本語、韓国語、中国語、マレー語など10種類もの言語に対応しています。投稿1つ1つに必ず翻訳ボタンがつき、メンバーが韓国語で投稿したものもすぐに日本語で確認することができます。
翻訳精度については改善の余地がありますが、本国ファン以外も最新の投稿をチェックすることができる重要なツールです。初期からグローバル戦略を見据えていたBTSは当たり前のようにWeverseへこのような機能を付けているのだと思われます。

3.Instagramストーリーズの進化系、モーメント機能。

Instagramの中でも、注目度が高いストーリーズ機能。 Weverseでもアーティストフィード内にモーメントという、ストーリーズに似た機能が備わっています
アーティストがモーメントに投稿すると、24時間の間はファンがコメントや応援をすることができます。しかし、「アーティストの写真は消えて欲しく無い」、というのがファン心理。そこで、 Weverseではコメント・応援は24時間でできなくなるものの、次の投稿がされるまで最新のモーメント自体はいつでも見られるようにしてあります。さらに、モーメントの過去投稿もアーカイブで見ることができ、アーティストの日常をいつでも遡って見られるようになっています。また、モーメント投稿上の文字も翻訳可能です。

4.YouTubeにはない動画のカテゴリー別表示

フィード以外にも、Mediaというエリアがあり、YouTubeのように動画がまとめられています。動画ごとに応援やコメントをすることもできます。
YouTubeとの違いとしてはカテゴリー分けがされており、見たい動画を簡単に見つけられるということです。現在はPV以外に Weverse限定のコメント動画、BTSブログに掲載されていたログ動画、特定のメンバーが定期的にアップしていたコーナー企画的な動画(G.C.F、EAT JIN)がアップロードされており、それぞれカテゴリー分けされています。 Weverse限定動画では日本語訳もついているので、今後もグローバルを意識した動画がアップロードされていくと思われます。

5.秩序を保つ役割もメンバー自らが担う!

ファンが登録をして使用しているコミュニティなので、荒れにくいWeverseですが、中にはメンバーの目を引きたいがあまり過激な投稿をしてしまうファンもでてきます。
Twitterのように、ネタ系の画像も人気になりやすく、事故画像(メンバーの顔が崩れている画像)が投稿されることもしばしば。
面白い投稿の範囲で済むものなら良いのですが、先日あまりにひどい事故画像が投稿されてしまいました。しかし、その投稿に対してメンバーの1人が「今後、ひどい事故画像をあげる方にはコメントしません」とコメントを寄せました。Weverseではアーティスト自ら秩序を保つという姿勢のようです。

SNS戦略のその先へ Weverse

今まで、BTSは SNS上でのライトなコミュニケーションを通じてファンの拡大に努めてきました。そして、今回開設したBTS Weverseへファンを誘導し、より親密なコミュニケーションをとることができるようになりました。このことによって、さらにエンゲージメントを獲得することができるという図式を作り上げることができています

既存SNS上でのライトなコミュニケーションを通じてファンを拡大。Weverse内でよろ親密なコミュニケーションをとることでエンゲージメントを高めている。

さらに、Weverseではさっそく登録者限定のイベントも動いていました。
『ARMYwithLETTER』は、一定の期間中に指定のハッシュタグ(#TO_BTS)をつけてBTS Weverseに投稿すると無数の投稿が一つの長い手紙になり、BTSのメンバーへ届けられるというイベントです。手紙は特設ブースにて実際に印刷もされており、期間限定で印刷の様子を直接見ることもできるようになっていました。インターネット上のつながりからファンレターに回帰し、単なるSNSを超えたコミュニケーションアプリになっているのではないでしょうか。

実際にARMYwithLETTERの印刷ブースへ訪れたファンの投稿。

いかがでしたでしょうか?SNSを使い倒したBTSの新たな動きが、マーケターの皆さんの参考になれば、幸いです。

ちなみに、Weverseアプリに新しいコミュニティが登場しました。

先日、Big HitエンターテインメントはGFRIENDというK-POPグループが所属しているSource Musicを買収しました。そのグループのWeverseも加わり、今後はBig Hit エンターテインメント系列のグループが使用する共通プラットフォームとして機能することを目指しているようです。
ファン目線でどんどん新しいコミュニケーションを作り出す彼らの動きは、今後も目が離せません