前回の記事では、口コミをもとに判断を下すといった、失敗を回避できるような確実性へのニーズが現れた4傾向をご紹介しました。

今回は、デジタル行動が普及したことによって、テクノロジーでサポートされることに慣れた生活者が、効率性やスムーズさを重視するようになったという2つ目の潮流に含まれる4つの傾向をご紹介します。 

各傾向についてチェックリストを設けていますので、ぜひ自社のサービスや顧客体験と照らし合わせてみてください。 

連載INDEX

[潮流#1]デジタル行動の浸透がもたらした12のユーザー体験傾向とは?

[潮流#2]あいまいさの補正、記憶のアウトソース…デジタルにサポートされるのに慣れた生活者(本記事)

[潮流#3]「絵文字がないと、感情が伝えにくい…」適度なライトさが体験設計の鍵に

5.あいまいさを補正してもらえる

あいまいさ補正の体験例で最も分かりやすい事例は、検索サービスでしょう。私たちは、探したいものがあいまいであっても、複数ワードを組み合わせることで目的のものを見つけることができますし、入力ミスやスペルミスは補正され、組み合わせるべき検索ワードも提案されます。

オンラインショッピングでも、類似商品のレコメンドの導線が整備されており、レコメンドを渡り歩きながら欲しい商品を見つけていくことができます。
 
こういった自分の記憶や動作があいまいでも、テクノロジーによって補正・補助してもらえる体験に慣れた生活者は、それらが用意されていない場合にストレスを感じるようになってきているのではないでしょうか?

チェック

☑ あいまいさを補正・補助できる機能が備わっているか?

☑ エラー後のフォローUXは整っているか?

 

例えば、以下のようなサービスはこの潮流にうまく乗れている体験といえます。 
 
【潮流を表すケーススタディ】 

(左)LINE 公式プレスリリースより(右)ズボラ旅 公式プレスリリースより

‐ LINEショッピングレンズ:画像だけで似た商品を検索できる。
 
‐ ズボラ旅:あいまいな要望を提示するだけで、旅行プランを提案してくれるサービス。
‐Youtube Music:歌詞の一部のみ、タイアップCM名のみで検索、英語をカタカナ表記で検索といったあいまい検索に対応。

6.思い立ったら即アクション、即レスポンス

チャットでリアルタイムに会話をしたり、スマートフォンでその場ですぐに調べものをしたり、移動中に思い立ってオンラインショッピングしたり、QRコード読み込んですぐに情報取得したり…。デジタルサービスによって、すぐアクションでき、すぐレスポンスがある体験が増えてきています。
 
すぐに回答が来なくてイライラしたり、利用しようとしたら営業時間外でがっかりしたり、という場面に心当たりがありませんか? 

 

私たちは、リアルタイムにやりとりできる体験が当たり前になった結果、その場でアクションが完結しない、待たされる体験に、よりストレスを感じるようになっていると考えられます。

チェック

☑ 体験者を待たせるタイミングはないか?

☑ 思いつくタイミングを逃さずにとらえられているか?

 

【潮流を表すケーススタディ】

(左)Softbank公式サイトより (右)LINE公式プレスリリースより

‐ チャットボットを活用したカスタマーサポート:チャットで質問でき、リアルタイムに回答・サポートが受けられる。 

‐LINEチェックイン応募:店舗チェックインでその場で抽選、その場でインセンティブを受け取れる仕組み。

ほかにも、メルカリで出品者と購入者のやりとりがチャットUIになっているのも、当てはまるでしょう。

7.自分の脳で記憶せずに、デジタルに頼る

メモを取る代わりに、写真やキャプチャを撮る。オンラインショッピングでは購入履歴を記憶代わりに活用し、購入する。Facebookが友人の誕生日を教えてくれる。検索すれば、思い出せなかったものがすぐ分かる。私たちは自覚しているよりもずっと、記憶をデジタルに頼るようになってきています


その結果、「え。これは紙じゃなくてデジタルで残しておきたいな。」「あれ、この履歴って見られないの?」と、自分で記憶しなければいけない状況、履歴が可視化されていない状態がストレスになってきています。

チェック

☑ 体験者に有益になる情報ログを可視化できているか?

☑ 体験者が自分の記憶に頼らねばならないシーンはないか? 

 

【潮流を表すケーススタディ】 

(左)Money Forwardアプリ (右)ポスリーアプリ App Storeより

-Money Forward :口座やクレジットカードと連携することで、スマートフォンアプリ上で日々の消費行動を可視化し、最適化できるサービス。

‐ポスリー:幼稚園や小学校のお便りを写真でスマートフォンに保存していけるサービス。
 
サービスではないですが、レストラン予約サイトやオンラインショッピングにある、「あなたが最近みたお店」「最近閲覧した商品」といった機能を準備しておくことも、この潮流に対応している事例だと思います。

8.リアルとデジタルがシームレスにつながる

デジタル上のUX導線はかなり配慮して作ることが当たり前になってきていますが、リアルな体験も含めた体験設計ではどうでしょうか?

SNSで位置情報をタグ付けする、Suicaでスムーズに入場する、オンラインと店舗で共通ポイントを貯めるといった行動が自然になった今、人々はオンラインとオフラインがシームレスにつながる体験が実現されていないと、ストレスを感じはじめていると予想されます。

「これはスマホで、これは紙で…うーん、スマートじゃない!」「ネット予約していたはずなのに、店舗で再度情報を求められてわずらわしいな」というように、スムーズな連携がされずに分断されていると、体験価値を下げることになります。 

チェック

☑ リアルとデジタルで分断されていないか?

☑ リアル体験の中にデジタル化してシームレスになる体験はないか?

【潮流を表すケーススタディ】 

(左) GU公式プレスリリースより (右) AppStore EPARKアプリ紹介より

・GU STYLE STUDIO:リアルとデジタルが融合した次世代型店舗。スマートフォンやサイネージを活用した新しい体験を提供。

・EPARK:行列のできるレストランや混みあう病院などで、ネット受付をすることでその場にいなくても行列待ちができるサービス。

もっと分かりやすい体験でいうと、チケットレス航空券で、ピッとかざすだけで搭乗という行動が一般化してきていますね。

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いかがでしたでしょうか? 

自社の顧客体験で不足している部分はないか? 新サービスや新店舗などの検討時に考慮できているか? など、体験向上の参考になれば幸いです。 
 
最後にこの記事で取り上げた、効率性やスムーズさのチェックリスト部分をまとめたものを掲載しておきます。 

【効率性/スムーズ】のチェックリスト

☑ あいまいさを補正・補助できる機能が備わっているか?

☑ エラー後のフォローUXは整っているか?

☑ 体験者を待たせるタイミングはないか? 

☑ 思いつくタイミングを逃さずにとらえられているか?

☑ 体験者に有益になる情報ログを可視化できているか?

☑ 体験者が自分の記憶に頼らねばならないシーンはないか?

☑ リアルとデジタルで分断されていないか?

☑ リアル体験の中にデジタル化してシームレスになる体験はないか?

 

次回の記事では3つ目の潮流である「ライト・ラフさ」を求める潮流から4つの傾向をしつつ、このエクスペリエンス潮流の12の傾向の活用の仕方のについても補足したいと思います。 

 

連載INDEX

[潮流#1]デジタル行動の浸透がもたらした12のユーザー体験傾向とは?

[潮流#2]あいまいさの補正、記憶のアウトソース…デジタルにサポートされるのに慣れた生活者(本記事)

[潮流#3]「絵文字がないと、感情が伝えにくい…」適度なライトさが体験設計の鍵に

 

◆エクスぺリエンス潮流調査レポートとは?

サイトやアプリ単体ではなく、体験全体を設計・改善していく際の指針づくりを目的に、IMJニンゲンラボにて調査。

「当たり前に普及したサービスをひもとくことで、それに慣れた人々は、こういった要素がないと不便に感じるようになっているのではないか」という仮説のもと、普及したデジタルサービス(利用率4割以上、普及スタートより5年以上経過したものを目安に10個)をピックアップ。それらに紐づく行動を分解・再分類することで、当たり前化した行動の特徴をあぶり出し、今求められているであろう体験の傾向を導きました。 
 
【調査対象サービスはこちら】 
1.スマートフォン 2.検索サービス 3.Twitter 4.Facebook 5.グーグルマップ 6.LINE(チャットツール) 7.オンラインショッピング(※ネット予約含む) 8.Suica 9.QRコード 10.YouTube