平成レトロとは? 昭和レトロとの違い
ミレニアル世代というのは、2000年以降に成人や社会人をむかえた、最初のデジタルネイティブ世代の総称で、81年~96年生まれが該当します。2019年現在で、いわゆるアラサーに当たる85年~94年生まれとも重なる世代です。
過去への憧れか、直接の体験か?
広く80年代のカルチャーにフォーカスを当てた「昭和レトロ」。ブームを牽引したのはその時代を実際には体験していない10代~20代前半の若者世代(96年以降生まれがメイン)でした。
しかし、今回取り上げる「平成レトロ」のトレンドは、2019年現在に30歳前後のミレニアル世代が幼少期から青春期に受容したコンテンツへのノスタルジーから広がっているようです。
ユーザー主導か、企業主導か?
また、「昭和レトロ」の場合は、Instagramなどを主な舞台に、ユーザー発信でブームが広がり、そこに企業やメディアが便乗していった…という流れだと思われます。
一方で「平成レトロ」はどちらかというと企業発信のコンテンツやプロダクトが起点となっています。
この理由のひとつには、ミレニアル世代が発信者の立場になった点があげられるでしょう。30歳前後を迎えたミレニアル世代が企業内での発言力を高め、自分の思い出からアイディアや企画を出すようになり、それがまた同世代に受けているという図式があるように見受けられます。
では、こうした背景も念頭におきつつ、具体的なコンテンツを見ていきましょう。
平成の懐メロを使用したCMがエモい!
最近、街中やTV、ネットでどこか耳なじみのある曲を耳にする機会が多いと感じませんか? 実は平成の懐メロのCM起用がブームになってきているのです。
アクエリアスのCM /『Funny Bunny』カバーver.がTwitterで話題
トレンド1位になってるよ!#thepillows #funnybunny #アクエリアス pic.twitter.com/f4y3y5HMzX
— ににぃ (@niniy_music) October 2, 2019
原曲はthe pillowsの『Funny Bunny』。1999年リリースのアルバム収録曲。誰もが知っているメジャーな曲ではないかもしれませんが、往年のファンからするとたまらない選曲でした。CMがテレビで放映されるとTwitterでの声がどんどん拡散し、たちまちTwitterトレンド1位に。
funny bunnyがトレンド入りしてて嬉しくてアクエリアスのCMみて案の定泣く…
— はいしー (@hycykpp) October 2, 2019
今年30周年だって話から我が家ではpillows祭りになっているので、尚うれしい😊
カバーしたなぁ、懐かしい
アクエリのcmでFunny Bunny流れた時めっちゃ懐かしかったし好きな曲だったなと思ってたのだけど、トレンド1位来ててもしかして昨日から流れ出したのかなと思い始めてる
— ラクロッシュ@三玖推し (@rakuronron) October 1, 2019
本家のthe pillowsのも良いけど、個人的にはエルレのカバーのがめっちゃ好きだった
あとスケダンの挿入歌とかもカバーあったはず
懐かしい 、うれしいとの声が多数
話題となった背景には『Funny Bunny』 が複数の文脈を持つ楽曲だったことも影響していると考えられます。アニメ『フリクリ』や『スケットダンス』の劇中曲として、また人気バンド、ELLEGARDENのカバーver.など様々な層に対してタッチポイントがあったため、多くの人々の思い出を刺激したのです。
こうした平成の懐メロカバーCMについては他にも多くの事例があります。例えばブルーハーツの楽曲をカバーしたカロリーメイトや東芝のCM、MONGOL800『小さな恋のうた』を使用したトヨタカローラのCM、また上白石萌歌さんをフューチャーした午後の紅茶でのCMシリーズなども90年代後半~2000年代の曲をカバーしており、これに心揺さぶられた方も多いのではないでしょうか。
平成だらけのZOZO歌謡祭
さて、こうした流れの頂点ともいえるのが10月18日20時~22時のフジテレビ系『モノシリーのとっておき』枠 にて1日限定で放映されたZOZOTOWNのTVCM「ZOZO歌謡祭」です。
高橋ジョージ、相川七瀬、PUFFYなど平成を代表する6組のアーティストが持ち歌を替え歌にして120秒のCMの中で熱唱しました。これまで紹介したCMは主に別の歌い手のカバーでしたが、こちらはご本家によるセルフカバーといったところでしょうか。
今すぐ、フジテレビつけて!
— ZOZOTOWN (@zozojp) October 18, 2019
『#ZOZO歌謡祭』、始まるよ!
※CMです。#相川七瀬 さんのあの名曲が、ゾゾバージョンに??!恐縮です…
見逃してしまった人はこちらから→https://t.co/QDgZ0eqaMr pic.twitter.com/rOWBQekJpw
懐かしい曲ばかりだなあ。
— フジハナ (@fujihana05) October 18, 2019
替え歌でワンコーラス位は
聴けるのが面白い#ZOZO歌謡祭
#ZOZO歌謡祭、素敵✨CMはスルーしがちだけど、これならどの曲も知ってるからつい見ちゃうし聞き入っちゃう。歌詞もあるから一緒に口ずさんじゃうしね
— まゆぽん (@loveshion1) October 18, 2019
ZOZO歌謡祭 ついつい聞き入ってしまう。。。本人使ってやり過ぎだけど 面白い🤣#ZOZO歌謡祭
— みんと🍃(🍓≧艸≦)🍠🍂 (@tvxq808yuno) October 18, 2019
Twitterユーザーの反応は「懐かしい」「笑える」「ついつい聞いてしまう」など……。
平成初期の楽曲が多いことから、ミレニアル世代に加えて、さらに上のアラフォー世代もターゲットにした企画だったといえるでしょう。
TikTokでは「め組のひと」がリバイバル
こうした、当時を知る人が昔を懐かしむ風潮がある中で、10~20代の若者がメインの利用層であるSNSでも「平成レトロ」の波が来ていることをご存知でしょうか。TikTokでは、倖田來未さんが歌う『め組のひと』(2010年のリリース)を早回ししたバージョンが定番曲となり39万動画も投稿されています。
ラッツ&スターの原曲は83年と昭和のリリースですが、それをカバーするのは2000年初頭にブレイクした歌姫。まさに若者ユーザーが見出した昭和レトロから平成レトロへの架け橋的なトレンドといえるでしょう。
ミレニアル世代を育んだTV番組
90年代後半から2000年代前半はテレビが文化の中心でした。
先日、あの頃のテレビの記憶をよみがえらせるような写真が話題となりました。
窪塚洋介さんが自身のInstagramで公開したのは、小栗旬さんとの2ショット。この二人といえば、TVドラマ版『GTO』(1998年)です。
コメント欄は懐かしい! の嵐に。
さらにその後、窪塚さんはInstagramにTOKIOの長瀬智也さんとの2ショットを公開。今度は『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)か!と当時からのファンは沸き立ちました(残念ながら該当の投稿は削除されてしまいました)。 なお『池袋ウエストゲートパーク』は2020年にアニメ化が決定しています。やはり平成カルチャーはリバイバル必至のようです。
お笑いでもリバイバル
さて、2000年代以降のテレビを彩った文化といえばお笑いブーム。
資生堂Unoでは、2003年~2010年にかけて放映された『エンタの神様』でブレイクした芸人をリバイバルさせるCMを発表しました。
波田陽区、クールポコ、ねづっちと一世を風靡した芸人たちがネタを披露しながらスキンケアの大切さを説く内容。まさにアラサー男性をターゲットにした平成レトロコンテンツです。2000年代のお笑い番組は他にも有力な番組名がいくつも思い浮かぶだけに、今後も注目すべき動向といえます。
世代を超えて愛される平成生まれ国民的キャラクターたち
90年代に登場したいくつかのキャラクターは今も現役。かつて子どもだった、ミレニアル世代が子育て世代となった現在、大人も子どもも一緒に楽しめるコンテンツとなっています。
そうした中でもノスタルジーに訴えかけるような展開をしているコンテンツを紹介しましょう。
ポケモン最新作のCM
初代ゲームボーイのスイッチ入れると、赤緑時代のピカチュウが登場。続いて歴代の携帯ゲーム機とともに各シリーズのポケモンが当時のドット絵で集合します。
『ポケットモンスター ソード・シールド』のTVCMを公開しました。https://t.co/7PGuIEWWdp pic.twitter.com/Y1FgOFhzSx
— 任天堂株式会社 (@Nintendo) October 24, 2019
まさにユーザーの記憶を呼び起こさせるCMです。96年デビューのポケモンも気づけば20年以上の年月を数え、親と子の世代に渡ってファンを増やしているのです。
『ドラゴンボール』とユニクロのコラボ
これまでも複数のアパレルブランドとコラボしてきた『ドラゴンボール』ですが、この秋はユニクロとコラボ展開しました。
最新タイトルの『ドラゴンボール超』ではなく、あくまで『ドラゴンボールZ』(89~96年)のキャラクターを採用しているところが肝かと思われます。
ユニクロのコラボでは『セーラームーン』も記憶に新しいところです。こちらは92年~97年連載の漫画版をベースとした絵柄となっており、かつての「なかよしっ子」たちを感動させました。
懐かしさに新しさをプラス!ゲーム・おもちゃのリバイバル
ゲーム業界における「昭和レトロ」ブームは、ミニファミコンが火付け役と言えますが、その後も「平成」の名機であるスーパーファミコン、ネオジオ、プレイステーションのミニ版が発売され大人気となっています。
そんな中、注目したいのはこちら。
セガ社の手の込みようがすごい
「メガドラタワーミニ」は、88年発売の「メガドライブ」を小型化した「メガドラミニ」本体につけるための装飾用パーツ。中身は何も入っていないはずなのですが、ユーザーが分解してみると…
メガドラタワーミニを分解すると中に基板を印刷した紙が。せがはばかなの? #メガドラミニ pic.twitter.com/3ifC1uWBxV
— TOYBALL FACTORY (@NOB_toyball) September 19, 2019
何人ものユーザーが分解しTwitterにアップしたことで数万リツイートを記録。SNSで話題になることをみごとに先回りした設計でした。
元号を超えたチョコエッグのコラボ
99年に発売され、大ブームとなったチョコエッグも再び密かなブームを迎えています。
「チョコエッグ(ハローキティ コラボレーション)」が2019年10月21日に発売!YOSHIKIさんやデヴィ夫人、『エヴァ』、吉野家などさまざまな著名人やキャラクターとコラボ!!
— 電撃ホビーウェブ (@hobby_magazine) October 20, 2019
https://t.co/YgxHp0IZmP #ハローキティ #デヴィ夫人 #ヒカキン #エヴァ #吉野家
柔軟にコラボをすることで有名なハローキティが、時代の寵児Youtuberのヒカキンとコラボしたチョコエッグ。これぞ昭和×平成×令和のコラボレーションといえるでしょう……。
終わりに
今年、こんなツイートが話題になりました。
Excelの保存マークって何で自動販売機なんですかね? pic.twitter.com/XWhCbePtvi
— ふぇざー@映画すみっコぐらしを見よう (@fea0er) August 10, 2019
もちろんこれはネタツイートです。しかし、フロッピーディスクがもはや過去の遺物であることは間違いありません。そもそも物理メディアが時代遅れになりつつある昨今。10数年で「保存」のアイコンが通用しなくなるほど、メディアの変化がめざましかったのです。
今回取り上げた「平成レトロ」で対象になっている95年~2003年頃のコンテンツでは、主にテレビや雑誌からの共通体験がノスタルジーを支えています。
一方、それより後の2000年代中盤以降は、インターネットやスマートフォンが急速に普及していく時代でした。2004~2006年にmixi、Youtube、ニコニコ動画などのサービス開始、2007年にiPhone登場、2008年に日本でもFacebook、Twitterが普及……。
次は何がレトロになる?
平成のリバイバルブームはこれからしばらくの間も盛り上がるでしょうが、次はどんなものが再発見されるのか、次に何がレトロとされるのか、そして「ネット普及期」のカルチャーをどう扱っていくのか。これからも動向を追っていきたいと思います。
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