noteを一言で表すなら「SNSとオウンドメディアの間」

noteは、Twitter、FacebookといったSNSのようにファンの囲い込みをしつつ、オウンドメディアや企業ブログのように、まとまった量の情報を届けることができるプラットフォームです。 

noteはとくにクリエイターなどの「個人ブランディング」に活用されています。有名ブロガーのはあちゅうさん、経営者のけんすうさんなど、すでに知名度のあるインフルエンサーの記事もTwitterにも拡散されるなどして人気を博しています。また、記事を有料販売することも可能なので、ライターや作家の方も活用しています。

2020年6月の公式リリースによると利用状況のデータは下記のとおり。

MAU 6,300万人
1日の投稿件数 26,000件
累計投稿数 870万件

https://note.jp/n/n705929417079

Twitterの国内MAUが4,500万人であることを考えると、国内でも有数のプラットフォームに成長してきたといえるのではないでしょうか。

※2020年6月23日にnoteのMAUが更新されたため数値を更新しました。 

コンテンツとユーザー層の傾向

noteのフィードでは、デザインや技術、マーケティングといった知識を共有する記事のほか、その日の出来事を発信する日記のような記事、身の回りのあるあるや日常の一コマを漫画にした記事などが目に入ります。 

「クリエイターと読者をつなぐサービス」を謳っていることから、ネットトレンドやITへの感度の高いユーザー層に特化した印象を受けるnoteですが、すでに幅広い層に利用されはじめている、というのが本記事の筆者の所感です。実際、Twitterなど他SNSでもnoteの記事を見かける頻度が増えていると感じる方も多いのではないでしょうか。 

フォロワーランキングから見た企業アカウントの利用傾向

さて、企業の活用状況はどうでしょう。noteには法人向けの「note Pro」というプランがあり、500社超の企業が導入しています。主にどんな企業が使っているのか、企業アカウントのフォロワーランキングを見てみましょう。 

出典元:ユーザーローカル note人気ランキング
https://note-ranking.userlocal.jp/?ranking=enterprise)より引用

このように上位を占めるのは、メディアや出版社など、もともとコンテンツ制作に強みをもつ企業だと分かります。 

noteには広告掲載の枠や記事のアクセスランキングも設けられていないこともあり、ユーザーに情報を届けるためには、コンテンツの魅力がとても重要です。したがって良質なコンテンツを提供するノウハウに長けた企業と相性がよいのは当然かもしれません。 

ではメディアや出版社ではない企業はnoteをどのように活用していけばよいのでしょうか。

まず本格的にnoteを運用しようと思えば、定期的にコンテンツを公開できる体制づくりが必要となってくると考えられます。また法人向けプランの契約も費用がかかります(月額5万円~ 2019年11月現在)

現時点で、企業アカウントのフォロワーは最大でも約60,000人。各記事のPV数などは外部からは確認できないため、検索エンジンやSNSからの流入までは把握できませんが、費用対効果を上げるためには戦略的な運用が求められそうです。 

次に一般企業の活用事例からそのヒントを探ってみましょう。 

企業の活用事例を4つに分類

一般企業のnote活用は、現時点で大きく4つの方向性に分類できるのではないかと考えられます。それぞれ事例も合わせて見ていきましょう。 

1 企業型

企業名やサービス名を冠したアカウントから情報を発信するタイプです。企業アカウントとしては、最もオーソドックスな運用の形と言えるでしょう。ただnoteの場合は、TwitterやFacebookの公式アカウントのように幅広く自社に関係する情報を届けるというよりも、特定のコンセプトを立ててそれに沿ったコンテンツのみを発信していく傾向が強いようです。 

 

キリンビール

大手企業のnote活用事例として真っ先にあげられるのがキリンビールです。
「これからの乾杯」を一緒に考える場と、明確な目的のもとnoteを運用していることを公言しており、製品の魅力や楽しみ方を発信するほか、投稿コンテストや他社アカウントのコラボなどnote上のキャンペーンも積極的に実施しています。2019年夏に行ったコンテストでは4,000件以上の投稿を集めました。 

また、ファンミーティング、オンラインサロン会員の募集にもつなげています。 

 

Netflix

「NETFLIXの作品に出会う「きっかけ」を提供する」として、映画やドラマの紹介を主に行っています。例えば「全裸監督」については、著名人を招いたクロスレビュー企画をnoteオリジナルコンテンツとして投稿したり、「テラスハウス」の出演者の出演者インタビューを掲載したりしています。自社のLPやエンタメ媒体の広告記事でなく、noteを選んでいるところがポイントです。 

2 部門型

noteを活用する企業は、部署や部門単位の名義で使っているケースも多いことに気づきます。部署単位で運用することによって、よりターゲットを絞ったコンセプトのメディア設計ができる、スムースに記事を発信する体制を築けるといったメリットがあるものと思われます。 

ここで一点注意です。一般的にオウンドメディアやSNSは広報やマーケティングの専門部署が運用することが多く、先に見た「企業型」noteも、実質的に「部門型」との線引きは難しいかもしれません。
ただ次に見る事例は、広報・マーケティングのように対外的なコミュニケーションを役割する部署ではないセクションが、その部門の領域に特化した専門的なナレッジを提供している点で、単なる名義の違いにとどまらない特徴があると考えられます。

 

mixi design

mixiグループのデザイン関連の社員が更新するnoteです。イベントのレポートや社員インタビューなどを掲載しています。また社員の個人アカウントで投稿されたデザイン関連の記事もマガジン機能を利用してキュレーションしています。

 

ZOZO FashionTechNews

ZOZOテクノロジーズの研究機関、ZOZO研究所のnote。国内外のファッション、テクノロジーに関連するニュースについて紹介した記事を掲載しています。noteの更新はZOZOテクノロジーズの公式Twitterでも発信しています。

3 ファンマガジン型

ユーザーの囲い込みができるというnoteの特性を生かして、サービスの利用者を巻き込んだ形で運用しています。プラットフォーム事業を展開する企業と相性がよい形式と思われます。 

 

ボイスメディアVoicy公式(旧Voicyファンマガジン)

ボイスメディア「Voicy」が運用。利用者に向けておすすめのコンテンツや使い方などを紹介しています。また、「Voicyファンラボ」というオンラインコミュニティのメンバーが主体となって、サービス利用者のインタビュー記事などを発信したり、ハッシュタグでユーザーからの声も募集したりするなど、note活用としては示唆的な事例です。 

(追記)記事執筆時点では「Voicyファンマガジン」として運用されていましたが、2020年5月現在、アカウント名を「ボイスメディアVoicy公式」に変更しています。

なお、プロダクトチームでは別アカウントを持っており、「部門型」の運用も行っています

 

つながる!ランサーズ

クラウドソーシングを提供するランサーズの社内&社外報マガジンです。サービスにかかわるあらゆる人をつなげるメディアとして、広報・人事・総務が連携するかたちで運用。編集部名義でインタビュー記事などを投稿するほか、社員個人アカウントの投稿をキュレーションしています。 

4 代表者型

企業のオーナーや代表の名義でアカウントを立ち上げ、企業のビジョンや取り組みを紹介するタイプです。アカウントによっては個人的な趣味の話や日記なども発信しています。こちらは厳密には企業アカウントとは言えないかもしれませんが、個人と企業のブランディングがイコールになっている形式と捉えられるでしょう。 

 

195modèle

デザイナーブランドの代表によるアカウント。ブランドの紹介も織り交ぜつつも日常の記事などを発信しています。地方発の企業にも、noteの活用機会が十分にあることを伺わせる事例です。

noteに求められる運用方法

企業が新たにnoteを導入する場合、緻密なコンテンツプランニングを立てた運用が必要だと思われます。ここまで見てきた事例からポイントをまとめてみます。 

  1. コンセプトを明確にする(ターゲットを絞る、コンテンツを特化する)
  2. アカウントの形式を設計する(4つのパターン、投稿者のキャラクターの見せ方)
  3. 流入経路を設計する(キャンペーンの活用、他SNSとの連携、オンラインサロンとの連携) 

noteを導入するにあたっては自社の事業内容や企業規模、また活用目的などによって、適した形が大きく変わってくると思いますが、上記が参考になれば幸いです。 

noteの将来性

2019年9月から半年間でMAUが約2倍増加と破竹の勢いを見せているnote。2020年4月7日は6周年を迎え、運営会社の社名も「note株式会社」に変更されました。 

今後noteは、企業にとってのベネフィットを高めるために、ECサイトとの連携により直接購買につながるような使い方やメッセージ通知のセグメント機能を検討しているとのことです。またSEOの強化なども発表しています。 

さらに2020年2月からはオンラインサロン化も視野にいれた「サークル機能」の試みを実施しています。 

ビジネス向け機能が充実していく中で、どのような企業がどのような形で参入するのか今後も目が離せません。