開催2年目となり、スケールアップしたDesignship2019
原 研哉氏やレイ・イナモト氏といった豪華なKeynote陣のみならず、昨年同様に公募で集まったデザイナーたちによるセッション、企業セッションと、業界を超えていろいろな角度から“デザイン”についての“物語”が語られる濃い2日間となりました。
本年度新たに加わったコラボレーションフロアで行われた対談セッションも満員で、各社のブースも賑わい、来場者のデザインに対する熱量が感じられました。
本レポートでは、アクセンチュア インタラクティブグループのFjordが登壇したセッションおよび、ブースの内容をご紹介します。
世界33拠点を持つデザインスタジオ「Fjord」が考えるデザインの役割とは?
スポンサードセッションでは、「生活を変える体験をデザインするには?」をテーマにFjord Tokyo共同統括 ビジネス・ディレクターの番所 浩平と、Fjord Tokyo共同統括 デザイン・ディレクターのクランツ エドアルドが登場。
冒頭、番所より、2019年11月Fjord初の国内拠点「Fjord Tokyo」がローンチしたことをお伝えしつつ、「We design for human impact. 我々がデザインする目的は“人々の生活をよくすること”。そして、その結果として企業の価値を上げること」と話しました。
続いてエドアルドは、「テクノロジーが進化して、コストが下がったことで、業界の破壊が起こりやすくなっている。」という背景を述べた上で、「夢に描いたようなことが実現されていく中、果たして人々はそれについていけているのか?どうやってテクノロジーを自然に生活に取り入れていくのか?ここにデザインの役割があるのではないか?」と投げかけました。
その後、番所からはFjordの“人々の生活をよくする”ためのデザインが、どのように実践されているのか知るための具体的な取り組み事例が紹介されました。
事例については、展示ブースでも、多くの来場者が興味を持ち、質問を交わしながら見ていただいたので、3つほど紹介していきたいと思います!
CASE1:クルーズ客船でのゲスト体験を革新(カーニバルコーポレーション)
乗客に無料でウェアラブルデバイス(オーシャン・メダリオン™ )を配布。乗客を素早く識別できるため、アプリと連動して適切なレコメンデーションや案内が可能。デジタルプラットフォームのみならず、お財布やルームキーの代わりとなる物理的なデバイスを開発することで、ゲストのクルーズ体験を向上させた事例。
オーシャン・メダリオンは、紛失しにくいように、磁石を利用した作りになっているとのこと。一般的に、センサーと磁石は相性の問題で避けることも多いが、紛失防止の役割に加え、カチッとはめるときの感覚も大切にデザインしており、体験を設計するにはこういった細部へのこだわりが重要であると、セッションでも触れられました。
CASE2:カンボジアの低所得層向けの収支管理 “MY MONEY TRACKER”
カンボジアにいる小規模な個人事業主たちは、口座も保有しておらず、収支の把握が困難であるという課題があった。 そこで、すでに普及しているスマートフォンを活用して、紙ベースで行われていたキャッシュフローの管理や、貸借金の追跡を容易にできるアプリを立ち上げた事例。(NGO団体との共同プロジェクト)
国民の30%が個人で商売をしている、金融リテラシーも低い、といった文化的背景を踏まえ、現地で2週間のスプリントを9回実施することで、文化の違うカンボジアの人々にも使いやすいUI/UXを探求したという。
金銭の管理の問題は、貧困、家庭内暴力といった社会問題とも紐づいており、アプリひとつで、プレゼンテーションの冒頭にあった“human Impact;人々の生活をよくする”を実現しているケースと言えます。
CASE3:お金の使い方を賢くする新しい銀行の形(Bo(ボー)/英国の金融機関ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)
堅苦しい印象もある老舗銀行のイメージから脱却するリブランディング。サブブランドとして若年層に受け入れられる新しいブランドを構築し、実際のサービス開発まで実施した事例。
英国民300万人のデータ分析から、3/4は収入よりも支出が大きく、ローンなどに苦しんでいて、不意の事故等に対応できないという課題を発見。徹底的な定量分析に加え、ユーザーインタビューをもとに、サービスを開発。 “Help people do money better”をコンセプトに、残高に余裕を残して支出をコントロールする習慣を生み出すことで、より良い生活に導いている。
各事例をパネルで展示したブースでは、「どのようにリサーチしたのか?」「プロジェクトはどのような過程で進めたのか?」など、具体的な質問が飛び交っていたのが印象的でした。
多様なデザインプロフェッショナルが世界から集う-アクセンチュア インタラクティブグループ
Fjordブースでは、事例の他に、IMJまで含めたアクセンチュア インタラクティブグループで働く、多様なスキルを持つデザインプロフェッショナルをパネルで紹介。
写真を裏返すと直筆のメッセージを見ることができ、それぞれが大切にする価値観や「デザイン」に対する想いが個性的に表現されていました。
来場者の方に「触れる」「裏返す」というインタラクションをあえてしてもらうという体験デザインを意識したそうで、多くの方が手に取っていました!
デザイナーズパネルやインタビュームービーはFjord Tokyoの公式Instagramでも紹介しておりますので、ぜひチェックしてみてください。
Designship 2日目には、Fjord Tokyo サービスデザインリードの岡崎 耕太が「新時代のクライアントワーク」をテーマにしたコラボレーションセッションに登壇。これまでの受託という形からクライアントと共に「チーム」で考える時代への変化の中で、デザイナーがどんな役割を果たすのかについて意見が交わされました。
11月に開設されたばかりの“Fjord Tokyo”。セッションやブースで多くのデザイナーの方々に興味をもっていただき、今後への期待を直接感じられる場となりました。
関連サイト:
▶「新時代のクライアントワーク」対談セッション参加レポート(Accentureサイト)
▶Fjord初日登壇レポート(Accentureサイト)