登場人物紹介

ぶにょう:新卒2年目。デザイン思考・serviceデザインを鋭意勉強中。プリンが好き(固め派)。 太田先輩:大学で学生にデザイン思考・サービスデザインを教えている。プリンが好き(固め派)。 

プリン好きが共通点なので、講義のお供は…もちろん。

今回の疑問は…?

「ユーザーに試して直すサービスプロトタイピングフェーズがあるのに、なんでリサーチが必要なの?」

サービスデザインでは、基本的にはいつも必ずリサーチを行ってからアイデアを出し、サービスプロトタイピングをしていますが、「どうせユーザーに試して改善をするんだったら、リサーチせずパッと思いついたアイデアでサービスプロトタイピングしたらダメなの?リサーチって必要ある……?」と思ったのでした。

なぜサービスデザインにはリサーチが必要なのだろうか?

ということで、この疑問をデザイン思考・サービスデザインの専門家で大学講師もしている、太田先輩にぶつけてみました。

マーケティングリサーチとデザインリサーチは違う!

「そもそもさあ、マーケティングリサーチとデザインリサーチは違うからね? そこ分かってる?」「そっか? 意識してなかった……?」

なるほど……。マーケティングリサーチとデザインリサーチの違い。
「そっか、デザインリサーチというものをちゃんと理解できていないかも?」ということで、今回の疑問を大前提として、デザインリサーチについて聞いてみました。

マーケティングリサーチとは、何らかの仮説があり、その仮説が正しいかどうか調べること。デザインリサーチとは、仮説はまだない状態で、どこに課題があるか見つけるために探索すること。

ふむふむ、大きい違いは仮説があるか、ないかの違いなんですね。
現状のサービスや商品の改善にはマーケティングリサーチが適していそうですが、新しいサービスや体験を生み出すためには、デザインリサーチを行って生活者すら気づいていない問題を探るのが良さそうです。

仮説がない状態で探索するって、生活者の考えていることや気持ちや行動が入り組んだジャングルの中を「何かないか」「課題はどこにあるか」と、探して歩き回るみたいですね!

デザインリサーチとは仮説はまだ無い状態で、どこに課題があるのか見つけるために探索すること。まるでジャングルの中を探索するようなもの。

なんとなくは分かっていましたが、理解が進んだところで、本題に進みましょう。

ユーザーに試して直すのに、リサーチって必要なんですか?→別にリサーチしなくていい場合だってある。

「つっても、デザインリサーチ別にやらなくてもいいけどね(笑)。」「あれ? そうなの?」

デザインリサーチの話を聞いて、価値が分かり重要性が見えつつあったところで、この回答。一瞬、「え?」となってしまいましたが、「デザインリサーチフェーズを設けず、サービスプロトタイピングすればいいじゃん!」という場合はどんなものか聞いてみました。

「例えば、こんな場合はデザインリサーチしなくていいんじゃない?」(例)アイデアに確固たる自信がある、才能と経験にあふれたクリエイター、スタートアップなど少人数で進める場合など。

フムフム。こんなときはデザインリサーチしなくていいんですね。
でも、なんでしなくていいんだろう?つまるところ、デザインリサーチの良いところって何なんでしょうか。

デザインリサーチする3つの価値

ぶにょう「しなくていい場合を裏返して考えると、デザインリサーチの良いところが見えてくる?」
太田先輩「そうそうそう!」

ということで、デザインリサーチの3つの価値を整理してみました。

1.説明しやすい、巻き込みやすい

デザインリサーチをしないと、ステークホルダーからの横やりの嵐。うまく説明できない。一方、デザインリサーチをすると説明・納得がスムーズ!
リサーチ結果をもとに説明をすると納得してもらいやすい。例えば保険サービスの場合、若者は「保険は難しい」というよりそもそも「保険は親が入ってくれているもの」くらいの認識のようです、と話し出すなど。

リサーチ結果があることでステークホルダーへの説明が容易になったり、ユーザーの気持ちをデザインリサーチで共有しているので、納得がスムーズになったりして巻き込みやすくなるんですね。

ぶにょう:「たしかに、『担当者は良いと思っているのに、上層部には納得されない』『別の関連チームに説明しないといけないが、上手く伝わるか分からない』みたいな悩みって、クライアントからよく聞きますもんね…。」

太田先輩:「そうそう。IMJではクライアント社内の巻き込みも大事にしているんだよ。クライアント担当者がいかに社内でプロジェクトを進めやすくなるか、みたいなところまで考えているんだよねぇ。」

でも、サービス化をたった一人で全部進めることなんて滅多になさそうですよね。つまり、デザインリサーチはほとんどの場合に有効!ということになりそうです。

2.正しくピボットしやすい

デザインリサーチをしないと、サービス化までのプロセスが迷路になりやすい。一方、デザインリサーチをすると戻る道・進む道がわかる。
正しくピボットしやすい:サービスプロトタイピングで課題が見つかった際、アディエーションに戻るなどの判断ができる。

「ピボット」は軸足を決めて回転させること、とのこと。

つまり、もしサービスプロトタイピングフェーズでつまずくことがあっても、デザインリサーチで課題が明確になっているから

「課題は合っていたけどアイデアが違ったから、アイディエーションフェーズに戻る」
「そもそも課題が違ったから、再リサーチする」

みたいに、つまずいた部分が何で、どのフェーズに戻ればいいのかがちゃんと分かるということですね。

ということは、こんなアイデアが良いと思う!とパッと思いついて実行してみても、もし途中でつまずいたら露頭に迷ってしまいそう……。

3.良い問いを見つけることができる

最後にデザインリサーチの一番大事な価値です。

デザインリサーチをしないと、表層的な問いは表層的な解決策しか生まない。デザインリサーチをすると、本質的な問いを見つければ本質的な解決策を生み出せる。
保険サービスの場合の良い問い:若者にとって保険は親が勝手に入ってくれているものなのではないか。 本質的な解決策:保険に入らないと!と思ってもらうため、成人式・就職・結婚のタイミングで保険に入る文化を作る!

デザイン思考では、解決策を考えるよりも前に、解決すべき課題を見つけるための「問い」が大切だといいますよね。
問いが表層的なものだと表層的な解決策しか見つからないけれど、デザインリサーチをすることで本質的な良い問いをみつけることができるんですね。

ちなみに、才能と経験に溢れたクリエイターも実は、普段から人にたくさん話を聞くなど無意識にデザインリサーチをしていて、良い問いを発見してるんだとか…。


でも、ここで、
・良い問いってなんだろう?
・どうしてデザインリサーチで良い問いを見つけられるんだろう?
・良い問いを見つけて何がいいの?
・良いってどう判断するの?

という新たな疑問が浮かんできました。

こちらは、また深くなりそうなので、次の機会に聞いてみたいと思います。

「待ってください……『良い』って? 良い問いって……? 何がメリット……?」「『良い問いとは何か?』良い疑問だなあ……」

今回のプリン:

\今回のプリン/ グーテ・ド・アマン「キャラメルプディング」(しっかりとお皿に立つプリン。苦いキャラメルが私好みでした)