増え続けるVTuber。8000越えのVTuberが存在

ネット流行語大賞にもランクインし、2019年も引き続き大きな注目を集めているVTuber(Virtual YouTuber=ブイチューバー/バーチャルユーチューバー)。この流行に乗ろうと、VTuber活用を検討中という企業も多いのではないでしょうか?

日本には2019年5月時点で8000(*1)を超えるVTuberが存在していると言われ、今も日々新しいVTuberが誕生しています。
一方、企業のVTuber活用に目を向けると、2018年夏以降に続々とデビューが続き、現在では20以上の企業事例があります。

この記事ではVTuberの企業活用事例を3つのグループに分けて紹介。
?自社オリジナル開発系
?自社既存キャラ系
?有名VTuberとのタイアップ
事例を紹介しながら最新動向を解説、今後の企業のVTuber活用について考察します。

?自社オリジナル開発系VTuberの事例

自社オリジナル開発されたVTuberは事例数が多く、企業の一番多いVTuber活用方法となっています。版権契約による活動内容や発言に制約がなく契約期間の制限もないため、ブランディングや広報目的で使われることが多いようです。
大きな知名度と人気を持つVTuberもいれば、あまり注目されていないものも存在し、結果に差が出やすい方法と言えるでしょう。

サントリー公式VTuber「燦鳥ノム(さんとりのむ)」

公式チャンネル公式Twitter

チャンネル登録日:2018.7.25、総視聴回数 :649万回、登録動画数:60本、最多視聴数:180万回、チャンネル登録数:8.2万人、コンテンツ内容:歌ってみた、ゲーム実況
(2019.4.16集計)

現在のところ、各動画の再生回数、コメント数、チャンネル登録数ともに他の企業系VTuberより多く、企業VTuberとしては知名度が高いと言えるのではないでしょうか。
コンテンツは歌ってみた、ゲーム実況など、通常のVTuberと同じエンタメ系で、サントリーに言及せず宣伝・広報色がほとんどないのが特徴です。
「逆にファンになった」、「サントリー製品を買うようになった」など、コメントはおおむね好意的で、動画に企業色が少ないことで逆にファン化できている様子がうかがえます。

キャラクターデザインは、TVアニメのキャラクターデザインもされているヤスダスズヒト氏が担当。平均年齢が若いVTuberの中で、114歳というギャップ設定や、清楚可愛いお嬢様なトンマナなど、キャラの設定を綿密に練り上げていると思われます。
歌ってみたシリーズが人気で再生数180万回越えを記録。高い歌唱力とミュージックビデオのような映像クオリティの高さから、多くのいいねとコメントを獲得しています。

 

そのほかの自社オリジナル開発系のVTuber事例を総視聴回数順に並べて比較してみると、初期に作られたもの、配信回数が多いものが人気を獲得している様子が見られました。

 

 

登録日

総視聴回数

登録動画数

チャンネル登録数

コンテンツ内容

パチスロメーカー山佐「虹河ラキ」

2018年2月19日

220万回

76本

5万

企業VTuberの中ではデビューが早く1周年を超えている。チャンネル登録数が多く、総視聴回数も多いが、最近の動画の視聴数はそこまで高くない様子。

埼玉県「春日部つくし」

2018年2月12日

51万回

19本

2.4万人

2月に1周年を迎えた地方自治体のVTuber。Twitterアカウントは頻繁に更新されている。

ロート製薬「根羽清ココロ(ねばせいこころ)」

2018年5月30日

50万回

41本

1.8万人

ロートの研究員が副業でVTuberをやっているという設定。広報情報を中心に発信している。

講談社「マガジヨミ」

2018年9月25日

29.6万回

23本

2.8万人(週刊少年マガジン全体)

マガジンにまつわるクイズや掲載マンガの紹介など。週1で更新。ライブ配信もやっている。

DMM「星名こむ」

2018年7月17日

18万回

43本

4,816人

DMM20周年キャンペーン用のキャラクター。

クックパッド「クックパッドたん」

2018年5月10日

9.6万回

4本

1.3万人

動画本数は少なめ。レシピ動画を配信後、実際に作ったものをテーマにしたライブ配信を行っている。

中京テレビ「大蔦(おおつた)エル」

2018年8月19日

6.7万回

47本

1,934人

VTuberアナウンサーとして活動。ゲーム実況やeスポーツなどを中心に動画を配信。TikTok内で開催された「VToker総選挙」で1位を獲得するなど活発に活動している。

総視聴回数の多い順に掲載(2019.3.5集計)

 

上記にあげた以外にも、多数の企業VTuberが存在しますが、中には再生回数が伸び悩み、更新がほぼ止まってしまっているケースも見られました。

このカテゴリーで話題になったり人気を得ているものは、
・ライバルが少ない初期の頃に発表し注目されたもの
・配信頻度の高いもの

といった傾向にあるようです。後発の企業VTuberは配信頻度が高くても、注目はそれほど集められているとは言えない結果となっています。

2019年に入ってからは地方自治体のVTuberはいくつか発表されていますが、大手企業によるオリジナル開発系のVTuberはあまり発表されておらず、ここ最近はリリースラッシュは落ち着いた様子です。

?自社既存キャラ系VTuberの事例

次に紹介するのは、以前から自社で活用しているキャラクターをVTuberデビューさせた事例です。ブランディング・広報目的に利用されており、最初から一定の知名度とファン層を持っているため、失敗リスクが少なく、安定したスタートを切ることができる傾向があると言えます。

ローソン「からあげクン」【2019.5.30追加】

公式チャンネル

チャンネル登録日:2019.5.20、総視聴回数 :17万回、登録動画数:2本、最多視聴数:9万回、チャンネル登録数:1.6万人(ローソン全体)
(2019.5.30集計)

ローソンのからあげクンくんが、VTuberデビュー。これまでもローソンの公式Youtubeでは着ぐるみのからあげクンがおどったりする動画が定期的に公開されていましたが、改めてVtuberとしてデビューしました。

以前のからあげクンは、着ぐるみで声を出さない設定でテロップや効果音で気持ちを表現していましたが、新しいVTuberバージョンのからあげクンは、フルCGで作成され声を出して話すようになり、表現力が格段にアップしています。

 

ウェザーニュース「ウェザーロイド Airi」

公式チャンネル公式Twitter

チャンネル登録日:2018.2.21、総視聴回数 : 509.9万回、登録動画数:503本、最多視聴数:19万回、チャンネル登録数:7.1万人、コンテンツ内容:お天気配信、たまにゲーム実況など
(2019.4.16集計)

毎日のライブ配信を中心に活動。お天気情報を配信するだけではなく、動画の中身はお天気や季節にまつわるコンテンツや視聴者からの似顔絵コーナーなど多彩。深夜ラジオ番組のトークのようなゆるいノリで、ライブ配信でファンとやり取りを行い、一定のファンを獲得している様子が伺えます。

VTuber化したのは2018年ですが、ウェザーニューズ所属のお天気お姉さんとして誕生したのは2012年というアイリ。一方通行になりがちなライブ配信をユーザーとのやり取りをうまく取り入れて進行させるなど、ユーザーとの距離がとても近いなと感じました。

サンリオ「ハローキティ」

公式チャンネル/公式Twitterなし

チャンネル登録日:2018.8.12、総視聴数: 53万回、登録動画数:47本、最多視聴数:647.3万回、チャンネル登録数:19万人、コンテンツ内容:広報、CSR活動
(2019.4.16集計)

テーマは会社・商品の紹介が多く広報活動がメイン。少し毒を含んだ辛口のトークは、Twitter上でも話題となり、従来のキティとのイメージのギャップが面白いと、好意的に受け入れられているようです。

SDGs(持続可能な開発目標)にちなんだCSR的な活動も行っており、社会的テーマの硬派な活動ぶりに、コメント欄でも賞賛の声が多数寄せられています。

テレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』「相内ユウカ」

公式チャンネル公式Twitter

チャンネル登録日:2018.5.30、登録動画数:7本、最多視聴数:2.9万回、チャンネル登録数:7,370人、コンテンツ内容:報道特番
(2019.4.16集計)

実在するテレビ東京のアナウンサー「相内優香」さんをVTuber化した「相内ユウカ」。中の人もご本人が担当されています。

テレビ放映されている『WBS(ワールドビジネスサテライト)』でVTuber特集を組んだ際に作られ、その日の特集だけの予定だったはずがTwitter上で大きな反響を呼び、ついにYouTube上で冠タイトルでライブ配信番組を持つまでに。

中の人である相内優香のTwitterアカウントでは、度々「相内ユウカ」も登場し、感想やリハーサルの様子などのレポートを行なっており、リアルとバーチャルを融合しての情報発信として、今後のヒントが見つかるかもしれませんね。

?有名VTuberとのタイアップの事例

ここ最近、独自開発のVTuberのリリースは減り、有名VTuberを起用したキャンペーン事例が増えています。
有名VTuberを起用した事例は、キャンペーンなど短期間や期間限定での起用というケースに利用されることが多く、TVCMでのタイアップ事例が増えてきています。

日清食品「日清焼そばU.F.O」×輝夜月 地上波CM&バーチャル記者会見

開催期間:2019.3.14にライブ配信、動画視聴回数:17万回、輝夜月のチャンネル登録数:90万人
(2019.3.15集計)

地上波のCMキャラクターとして輝夜月(かぐやるな)を起用。CM放送前の3月14日にYouTubeのライブ配信で記者発表を行っている様子のプロモーション動画を配信しました。

マキシマムザホルモンの楽曲を採用したパンクな雰囲気のCMはカッコイイと評判も良く、既存の輝夜月ファン層だけではなく広く若者ににフックできたのではないでしょうか。

2018年末の日清のコラボ動画の中で輝夜月が他社製品を潰すなどし炎上した失敗を逆手に取り、今回の動画ではコンプライアンスをネタとして扱っていました。ライブ配信中はYouTubeで急上昇1位、Twitter上でも話題となったようです。

VTuber企業事例の中でも、既存のVTuberに興味を持つ層を超えインパクトを与えた事例といえるのではないでしょうか。

ブルボン「チーズおかき」×キズナアイ 地上波CM&キャンペーン動画

公開:2019.3.12、動画視聴回数:30.3万回、キズナアイのチャンネル登録数:252万人(2019.4.16集計)

ブルボンがチーズおかき発売35周年を記念して、VTuberの草分け的存在で一般にも知名度の高いキズナアイを地上波CMに起用。同時にキズナアイがチーズおかきのラップを歌って踊る動画をYouTube上で配信したり、「Say チーズおかき」の音源をDLできるようにし、自由にアンサーソングを制作・投稿できるなどのキャンペーン施策も行っています。

 

その他の事例

日清やキティの事例のように、今後のVTuber活用では、一般層や若者にも受け入れられるトーン&マナーで、なおかつ、VTuber自身の人を惹きつける力=タレント性が高いことが成功の一つの要因になるのではないでしょうか。

企業のVTuber活用は、2018年にタイアップもオリジナル開発も一通り事例が出揃い、2019年は各社のアイデアが問われる時期に入ったと言えるでしょう。

最新のVTuberトレンドから、今後の企業VTuberのヒントを探る!

では、一般層に受け入れられ、タレント性が高いVTuberとはどんなものなのか? 最新のVTuber事例とトレンド傾向から、企業のVTuber活用のヒントを探ってみましょう。

最新のVTuberトレンド傾向をグルーピングしてみました。

【A】実在する有名人のVTuber化:ジャニーズバーチャルプロジェクト

Showroom海堂配信ページ苺谷配信ページ
YouTube公式チャンネル公式Twitter

登録日:2019.1.7、総視聴回数: 66.8万回、登録動画数:5本、最多視聴数:25万回、チャンネル登録数:5.4万人
(2019.3.7集計)

ジャニーズバーチャルプロジェクトの第一弾として、関西ジャニーズJr.内のユニット「なにわ男子」の藤原丈一郎さん、大橋和也さんをVTuber化。「海堂飛鳥(かいどうあすか)」と「苺谷星空(いちごやかなた)」としてデビューしました。毎日SHOWROOMでライブ配信を行なっています。

初の実在アイドルのVTuber化が、これまでデジタルに保守的だったジャニーズ事務所だったことでネット上で大きな話題になりました。
Twitter上では、既存のJrファンから本物が見たいのにという声も多数上がっていたようですが、毎日のライブ配信で露出が増えることで、おおむね高評価を受けているようです。

【A】実在する有名人のVTuber化:ニコニコ将棋の広報大使 バーチャルアイドル「ひふみちゃん」

ドワンゴのニコニコ将棋の広報大使としてデビューしたVTuber「ひふみちゃん」。中の人を棋界の重鎮である加藤一二三九段が務めており、見た目が女の子、声がおじさんという異色のキャラ設定が、Twitter上をザワつかせ、将棋ファン以外からも注目を集めました。

【B】既存有名キャラクターのVTuber化:ヤッターマンのボヤッキー

上記のボヤッキー以外にもガチャピンなど、有名キャラクターがVTuber化する事例が徐々に増えてきています。一般層に知名度の高い有名なキャラクターのVTuber化により、VTuberのファン層が拡大されてくるかもしれません。

【C】超リアル3DCG系:バーチャルインスタグラマー「葵プリズム」「imma」「リアム・ニクロ」

リアルの人物と見分けのつかない精度の超リアルアバターのデビューが続いています。海外では以前から「ミケーラ」、「バミューダ」などが活動しており、Virtual Being(バーチャルビーイング)と呼ばれています。

国内での企業活用事例としては、NTTドコモがSayaを起用し、現在サイネージでの実証実験を実施しました。

imma

Liam Nikuro(リアム・ニクロ)

【docomo AI「おしゃべり掲示板」の実証実験に「Saya」を採用】

まとめ:企業のVTuber活用で気をつけるポイントは?

・一般層や若者に受け入れられるトンマナであること
・中の人のキャラクター性が際立っていること
・まだ競争の少ない新しい表現
・既存のファンを持つキャラクターの活用

こういった観点に着目して企画することで、注目を集め、安定した人気を獲得につながるのではないでしょうか。

一方、ユーザー側の動向を見ると、アバター作成アプリ「ZEPETO」の人気やスマホでVTuber動画を作成できるアプリが登場するなど、バーチャルに対する関心は高まり、技術ハードルも次第に下がってきています。特別な技術を持たない一般ユーザーからも有名になるVTuberが出てくるかもしれません。

今後、広く一般に響くVTuberが出現し、VTuberは一過性のブームで終わらず定着するのでしょうか?
引き続き、VTuber関連の動きは要チェックです。

 

※1:株式会社ユーザーローカル調査

※本記事で引用した動画や投稿は引用元が削除された場合、表示されない場合があります。