2025年までに企業は現在の1万倍のデータを保有する
開会の挨拶として初めに登壇されたのは、創業者兼CTOのマイク・アンダーソン氏。彼は、「リアルタイムな顧客データは企業の重要な資産であり、それこそが競争優位性の獲得に必要だ」と述べます。
2025年までには企業は現在の1万倍のデータを保有する、とのリサーチ結果を示した上で、改めて“データの利活用の重要性”を主張しました。
続けて、デジタルマーケティングの業界について、企業が利用するソフトウェアアプリケーション(マーケティングツール)の種類と数が膨大となり、複数のツールを連携して活用していく必要性が増していることに言及。同時に、「人口よりデバイスの数が4倍を超える」とのデータを示しながら、1人に対して複数のタッチポイントが存在することも認識しなければならないと述べました。 こういった背景がある中で、散らばったタッチポイントの情報をユーザー単位で統合し、各デジタルマーケティングツールをオーケストレーションするTealiumはこれからのマーケティングにおいてさらに存在感を高めていくことでしょう。
日本市場を大事にしていることにも言及しており、「ニホンゴカ、サレマシタ!」とTealiumラーニングセンター(※)の日本語化のお知らせを発表し、会場を沸かす1シーンもありました。
※Tealiumユーザーの学習コミュニティ
【海外事例】Sportsbet 直近の30分のオンライン行動データを利用したリコメンドで、顧客体験を向上
アンダーソン氏の後には、オーストラリアから来日されたSportsbet パーソナライゼーション責任者のジェフ・ハウランド氏がTealiumを活用したリテンションマーケティングを紹介しました。
Sportsbetは、スポーツ賭博事業を営む、オーストラリアのオンラインブックメーカーです。日本ではあまりなじみがないですが、海外ではスポーツ賭博は盛んだそうで、Sportsbetはマーケットリーダーとして評価されている企業です。
リテンションに焦点を当てたときに重要だと彼が指摘したのは、「顧客体験をパーソナライズする」こと。Sportsbetは、顧客体験のパーソナライズの取り組みの一つとして、ページに表示するコンテンツのリコメンドを行っているそうです。
Tealiumを活用したリコメンドとして特徴的なのは、直近30分のオンライン行動の特徴を用いたユーザー分類をし、リコメンドを行っていることです。週単位で作成する類似ユーザー情報に加えて、直近の行動データを加えたことで、大きな効果を上げることができている、と話しました。
「既存のカスタマーの価値を大事にし、彼らに対して重要な瞬間に的を絞り、場所を問わずコミュニケーションを図り、顧客体験をパーソナライズすることができれば、お客様は離れない」とのメッセージがTealiumの価値観とも一致しているように感じ、印象に残りました。
【国内事例】FANCL :デジタルでも接客の心地よさを追求したい。
Tealium活用の国内事例としてまず登壇したのは、株式会社ファンケルの長谷川 敬晃氏。FANCLは店頭での心地よい接客が評価される一方で、「デジタルでも心地よさを追求できないか」という課題意識の中で、マーケティングオートメーション(以下MA)を導入されたとのこと。 ただ、MAで一定の成果が上がるも、「仮に20%の購入率があっても、裏を返せば80%は反応していない……それって本当にお客様に寄り添えているの?」ともやもやを抱えていたそうです。そんな中でTealiumと出会ったとのエピソードを話されました。
さて、実際どのようにTealiumを活用しているのかというと、今までカート放棄者の情報をバッチ処理でMAに連携し最短でも翌日にメールを送っていたのに対し、Tealiumでリアルタイムにユーザーの行動を把握できるようになってからはユーザーにとって最も心地よいタイミングを模索し、2時間後のメール送信が可能になったとのこと。結果として、従来の施策に比べ、約10%ものCVRの向上と、非常に大きな成果が上げられたそうです。
具体的な成功事例を聞くことで、Tealium活用により、MAで実現できる1to1コミュニケーションをさらに高度化できるのだ、ということを実感することができました。
【国内事例】スカパー!:ユーザーの好みを詳細に把握し、適切なクリエイティブを届ける
スカパーJSAT株式会社 長谷川 雅洋 氏 からは、衛星多チャンネル放送「スカパー!」のメディア事業において、Tealiumを活用している事例が紹介されました。お客様の興味関心を正確に把握し、ベストプランを提案することでブランド体験を“エクセレント”なレベルにまで高めたいとの野望から、Tealiumを導入されたそうです。
一つの例として、従来は登録チャンネルで「野球」が好きだとわかっていても、「巨人」ファンなのか、「カープ」ファンなのか、好きな球団までは把握できていませんでした。そこで、TealiumでWebサイトの行動履歴をスコアリングし、〇〇球団ファンのバッジを付与。ついたバッジに応じて、LP、Web広告、TVCMといったクリエイティブの出し分けをリアルタイムに行いました。
野球はシーズンものですので、時期が過ぎれば解約されますが、再開幕における加入催促メールやWebサイトでも、ファンの球団に沿ったクリエイティブでご案内をしているそうです。
強く仰っていたことは、これらの取り組みは、1つの部署(例えばマーケティング部署)だけでは不可能で、部署をまたいで“ONE TEAM”となって推進する必要があるということです。クリエイティブの作成や、裏側のシステム連携等、1年をかけてたくさんの部署と協力して成し遂げるプロジェクトだったとのことで、Tealiumを通じたCDP構築は、組織のサイロ化の解決という側面もあるように感じました。
機械学習をより身近にする「Predict ML」に注目が集まる
イベントでは、Tealiumの製品ロードマップとして、今後予定されている新機能の発表も行われました。
サーバーサイドのエクステンション(拡張機能)の追加や、イベントトリガーの拡充、機械学習機能「Tealium ® Predict ML」の紹介がありましたが、要注目の機械学習機能に焦点を当てたいと思います。
「Tealium ® Predict ML」は予測モデルを作成する機能で、「Tealium Audience Stream™」上で動きます。これを使うことで、例えば「またWebに戻ってくる可能性」であるとか、「購入する可能性」、「カート放棄する可能性」といったユーザーのアクションの予測モデルを作成できるようになります。さらには予測モデルに基づき、ルールベースよりも精度の高いオーディエンスが作成できることが期待されます。
筆者は特徴としては2点あるように感じました。1つは非技術者でも身近に機械学習を扱えるようになる点。もう1つは、データのクリーニングの手間をある程度解消できる点です。
機械学習は高度な知識がないと使いこなせないイメージが持たれていますが、Tealiumとしては非技術系の方でも、統計の高度な知識を有していなくても使えるように意識して機能を開発されているそうです。実際にデモでは、モデル作成はUI上の操作で完結しており、詳細は不明ですがプログラミング不要で操作できるような印象を受けました。
また、「Tealium ® Predict ML」の発表を行ったTealium Japan籾山氏は、多くの機械学習プロジェクトではデータ収集とクリーニングに多くの時間が費やされている現状を指摘しました。Tealiumでは、設定設計をきちんと行えば、データ収集からその処理・統合・加工は自動化されます。「収集→標準化→変換/エンリッチ化→連携→アクティベート」というTealiumのデータサプライチェーンの中に機械学習が置かれることで、時間がかかるけれど人間がやらなくてもよい、不要な手間が省略されることが期待されます。
「Tealium ® Predict ML」は2020 Q1に公開予定とのことですが、これからの動向にますます注目していきたいですね。
IMJもブースにて事例を紹介
さて、本イベントは、IMJはゴールドスポンサーとして協賛。ブース出展もさせていただきました。
活用事例で紹介されていたように、MAツールとTealiumの連携による効果は大きく見込めます。広告最適化の文脈で用いられることの多いツールですが、その実力は広告最適化にとどまらず、ユニバーサル データ ハブ(Universal Data Hub)として、各種マルチソリューション連携することで発揮できるものです。
訪れていただいたお客様の中には、デジタルマーケティングツールのハブとしての使用価値はわかっているものの、導入されている事例はあるのか、という点で情報収集に来られた方が多い印象でした。
ブースとしては現場目線での苦労も踏まえ、弊社の事例を主にご紹介させていただきました。ただ導入するのではなく、マルチソリューション連携を前提に戦略を立て、実装を行うことの重要性は多くの方に共感いただけたようです。
(画像提供:Tealium社)