ゲストスピーカー
岩崎敏和氏
ファイザー株式会社
エッセンシャルヘルス事業部門 ファーマシーマーケティングチーム部長
スピーカー
村上雄一
株式会社アイ・エム・ジェイ
アカウント第3統括本部 PCG(Pharma Consulting Group) シニアコンサルタント
カスタマージャーニーとアクションプランで、戦略を動かす!
シンプルな戦術による「実行の徹底」こそが大事
戦略を作っただけでは、動かない、結果が出ない。それでは絵に描いた餅になってしまう。
何が会社を動かすのか? 必要なのは「素敵な戦略」ではなく、「妥当な戦略&シンプルでわかりやすい戦術」です。戦術の実行を徹底していく。これしかないのですが、これがものすごく大変です。「ロゴ作りました、使いました、話題になりました、以上」では、目的の5%程度しか進んでいません。
一緒にプロジェクトを進めるパートナーが、この「実行」の大変さをわかっているといないとではずいぶん違います。
MR(営業)に戦術を理解してもらい、全員が同じレベルで実行し、ターゲットにちゃんとアプローチする。このくり返しが必要です。しかし、たいてい企画部門と営業とは認識の相違があるもので、上手に進めないとすぐに「なんだこの企画は!」となります。
これを認識したうえで、社内を巻き込み、顧客を動かしゴールに導くために我々は次のステップとして、引き続きIMJと、「ファイザーエッセンシャルアカデミー」のアクションプラン化プロジェクトを開始しました。
分かりにくい成果をどうやって追究していくのか
講演会は大きな予算が動くものですが、今まではイベントの企画や実施に夢中になり「来場者は何人で、満足度も何%だった。よかった、よかった!」で終わってしまうことが多かったんです。実施した結果何が起こったのかまでの追究があいまいな部分もあったのですが、やはりそのままではダメでしょう。
しかし営業活動と違って、分かりやすいKPIは立てにくい。イベントを通じて顧客は何を感じて、どう変わるのか?のシナリオを描いておかなければいけない。
シナリオがあれば、それに沿ってどう変えていくかのプランにつなげていくこともできます。
今回はそのフレームワークとして「カスタマージャーニー」を使うこととし、戦略の整理→カスタマージャーニーの策定→実行のためのプラン&ツールの検討まで、断絶することのないシナリオを両社で作り上げていきました。
顧客を次へ動かすアクションプラン
シナリオを描けば安心かというとそうではありません。顧客を動かすために描いたものですから、それを使って動かさなければいけない。顧客を動かすためには、顧客を次のステップに進めるための「アクションプラン」が必要です。このアクションプランがないと、顧客が動いたのかどうかもわかりません。そして、それぞれのステップで顧客を次へ動かすために何をするかアイデアを出し、実行していくのはやはり自分たちなのです。
カスタマージャーニーを動かしていくためには、こうした細かいアクションプランが必要であり、その策定と実行を自分たちがやらなければいけない、ということに思いがおよばぬ企業の担当者は案外多いのではないでしょうか。
カスタマージャーニーで現在地をチェックし、修正していく
ブランディングと同じように「カスタマージャーニーっていらないのでは?」という企業も少なくないでしょう。
ですが、シナリオとアクションプラン、そして実行につなげられるように描いていれば、とても重要なものだと理解できると思います。
もちろん、実際にやってみるとこの通りにうまくは進みません。しかし、あらかじめシナリオを用意しておくことで、顧客が今どこにいて、どこで止まっているかが分かります。これがないと道半ばにもかかわらず「売り上げがちょっと上がりました」で終わりかねないですし、次々と施策を打つDo、Do、Doに陥ってPDCAを回せなくなってしまいます。カスタマージャーニーというベースがあれば現在地が確認でき、修正もしていけます。
=参加者から岩崎さんへ質問=
Q.
カスタマージャーニーはMR(営業)の皆さんとは共有していますか?
A.
していません。本社とは共有していますが営業には落としていません。営業に伝えるべきはこの複雑な情報ではないと思っているので。コミュニケーションで大切なのは、何がその人(営業)を動かすかであり、今回の場合それがジャーニーの共有ではないと判断しています。
現在、プロジェクトは順調に進行中!
「ファイザーエッセンシャルアカデミー」は2018年2月にキックオフを迎え、おかげさまで多数の参加者で会場は満席。予定していたテーブルを取り払ってキャパを増やすほどの大盛況となりました。満足度もとても高く、4月以降は全国へ展開し講演会を重ね、毎回多数の薬剤師さんに参加いただいています。現在もジャーニーがどう動いていったのかを追っている最中です。
変革期に求められるパートナー像とは?
外部からの視点で気づかせてほしい
企業の中でプロジェクトを回している人間は、内部にいるため変化に気がつきづらいです。変化は突然起こるわけではなく毎日少しずつ進みます。企業が破綻するとき、中にいる社員は「あららら? なんかおかしいな」と思っているうちに破綻するとも言われています。今回のファーマシーマーケティングチームでは、私がたまたま3年の空白期間の後に同じチームに戻ったため変化に気がつけましたが、ずっと続けていたら気がつけなかったかもしれません。
そんな中ではパートナー企業の存在は大きく、外部からの視点でさまざまなことを気づかせてくれるのは大変心強いです。
ディスカッションで浮き彫りになった自分たちのおごり
プロジェクトではディスカッションにかなりの時間を割きましょうと提案を受けたとき、最初はそんな時間は必要ないと思っていました。「薬剤師のことなら我々が知っている」「整理なんていらない」と。しかし、いざ質問されるとうまく答えられないことがいっぱいあり、自分たちにおごりがあることに気がつかされました。我々はいろいろなアイデアは持っていても、まとめあげる力が弱く、整理していくことが弱いこともわかりました。フレームワークは学んではいるが、実際に落とし込んで使う機会が少なく、うまくまとめることができない。
スピード感あるロジカルな提案を
世の中の変化のスピードは相変わらず速く、10年前に比べ確実にスピードアップしています。しかし、組織の変化のスピードは企業によって違います。大きい企業、リーダー企業ほど遅い傾向があり、業界の上位に入るようなところは多少変化に乗り遅れても潰れないと、少なからずあぐらをかいているように感じることもあります。特にそうした企業にとっては外部パートナーの視点は必要になってくると思います。
また、AIの登場によって変化の先取りや近い未来の予測は可能になっていくでしょう。AIが特別すごいとは思いませんが、AIを使うことでこれまで1年で回していたPDCAを1週間で回せたり、1日で回したりすることができるのかもしれません。
社内で同じ仕事をしていると意外と環境の変化に気がつかない、こういった先進的な流れのキャッチアップもなかなかできない。
そんな変化の激しい環境の中、さまざまな事例を持ち、多彩なツールをコーディネートでき、専門性をもって顧客のセグメンテーションやターゲティングを提案でき、ロジカルに話せるスペシャリストなパートナーは頼もしい存在です。
最後に、私個人としてビジネスパートナーに求めるのは「何のために仕事をしているのか」を持っているかどうかです。その答えに正解も不正解もありませんが、ただ仕事だからやっているのか、そこに何か思いがあるのか。パートナーとして長く付き合うかどうかの分岐点は、案外そんなところにあるように思います。
=参加者から岩崎さんへ質問=
Q.
クライアントにとってどんなことが気づきになるんですか?
A.
大きなことや大事なことは我々もとりこぼしてはいませんが、小さいパーツに細分化されて質問されると10回に3回くらい、ハッとすることがあります。細部まで意識していないことが多く、暗黙のうちに「これでいいだろう」と思い込んでいることがけっこうあるんです。また、専門的な業界であるほどその分野について自分たちは知っているという自信がある。もし「度胸と勘」のように思っているクライアントがいたら、ぜひロジックを使って現実に気づかせてあげてください。
【IMJ LIP 〜パートナーに聞く〜】第3回ゲスト ファイザー株式会社 岩崎敏和氏をお迎えし、「ファイザーエッセンシャルアカデミー」の立ち上げから現在までの貴重な話を伺うことができました。社内にブランディングの意義を伝えながらプロジェクトを進めていく強さ、社外パートナーの声に真摯に耳を傾ける柔軟さ、岩崎氏の姿と話から学ぶものがたくさんありました。
リアルな現場の声を聞き、直接問いかけ、学び合う『IMJ LIP(リップ)〜パートナーに聞く〜』。
これからもパートナー企業様のスペシャリストをお招きし、みなさまにリアルな声をお届けしていきます!