【第1部前半】アクション検討のつまずきを解決するための秘訣とは?
NPSご担当者が抱えるお悩み
- ロイヤルティドライバーを特定し、改善のアクションを継続しているのにスコアが上がらない
- お客様の声をもとにした改善施策を行っていて、満足度は上がるのにNPSは変化なし……
正しい手順でNPSの分析を行い、改善アクションを実施しても、なぜスコアが向上しないのか?その理由について松永は、「特定した『ロイヤルティドライバー』は正解でも、ロイヤルティを向上させるアクションを考えるための『材料』不足」にあると解説します。
アクションを考えるための『材料』とは?
「『材料』とはお客様の心のことを指します。例えば、皆さんが誰かに料理を作るとしましょう。相手が好きな食材を使ったとしても、その人が好きな食感、味付け、焼き加減などの好みを把握していなければ、相手が120%喜んでくれるような料理は作れません。ロイヤルティ向上を考えるときも料理と同じで、数値から分かること(好きな食材)だけでなく、その裏にあるお客様の心(好み・価値観)の両方にインパクトを与えるアプローチが必要です」
「商品・サービスにおけるお客様アンケートで得られる回答は、お客様の声ではありますが、お客様が心から大切にしている価値観ではない。企業目線で商品やブランドの評価されているポイントを深掘りするのではなく、お客様自身を深掘りすることで、お客様の心(価値観)が見つかる」と松永は言います。
今回のセミナーには、NPS導入検討中の方やすでに何度もNPSアンケートを実施している方などさまざまな状況の方にお越しいただいていたのですが、うなずきながらたくさんのメモを取っている姿が見られました。
【第1部後半】お客様の共感ポイントや価値観を導くアンケート手法
次に登壇したのは、シニアUXアーキテクトの佐藤 哲。UXデザイン(User Experience Design)、HCD(Human Centered Design)の普及・啓蒙を目的とした、セミナー・ワークショップを定期的に開催するなど、いわばUXのスペシャリスト。ロイヤルティ向上のために、お客様の共感や価値観を具体的にどのように導き出せばいいのか、佐藤からお伝えしました。
「NPSを向上させるためには、お客様の声を集めるのはとても重要なことです。ただ、やみくもにお客様の声を集めてもロイヤルティ向上につながる声は集まりません。大切なのは『良質』な声を集める設問を作ることです」
では、良質な声を集める設問とは一体どのようなものなのか?実際にセミナー中にご紹介した設問例を見てみましょう。
- Q1.あなたが●▲■(企業やブランド名)を友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか?0~10段階でお答えください。
- Q2.スコアをつけた理由を教えてください。
これはNPSで一般的に用いられる“スコアの理由を問う”設問項目ですが、この設問ひとつからだけではお客様の共感ポイントや価値観を把握することは不可能です。もう少しお客様自身を深掘りするには……。
- Q1.あなたが●▲■(企業やブランド名)を友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか?0~10段階でお答えください。
- Q2.スコアをつけた理由を教えてください。
- Q3.あなたが●▲■を利用した時の「思い出」を自由に書いてください。
例えば、Q3のようにブランドや商品と自分との思い出を書いてもらう設問を付け加えることで、そのブランドや商品に対する良し悪しの評価だけでなく、もう少し広い範囲でのお客様の行動・心理を把握することができます。
Q3に対する解答例を紹介します。
「過去の体験をお客様自身の言葉で自由に書いてもらうことで、お客様の姿が想像できるようになりましたね。ロイヤルティ向上のためのアクションの検討材料を揃えるには、スコアとスコアの理由を問う設問だけでは時として不十分です。お客様の行動・心理を読み取ることができる設問を設計しましょう」
良質な「お客様の声」を引き出す2つのポイント
- スコア理由だけでなく、商品・サービス・ブランドなどを利用したときの「顧客体験」を 書きやすい自由回答設問を設ける
- 顧客体験の他に、「要望」など期待価値が読み取れる自由回答設問を設ける
『あなたが●●をお薦めする可能性はどのくらいですか?』『その理由を教えてください』以外にも「こんな聞き方があるのか!」と驚きの表情を浮かべてくださったご参加者も見受けられました。
Coffee Breakを挟み、第2部では部屋を移動していよいよワークショップの時間です。 第一部で佐藤が解説したことを、実際に体験していただきました。
【第2部】ロイヤルティを向上させるIMJのワークショップを実際に体験
IMJが事前にアンケートを実施して取得した、顧客体験や期待価値が含まれた「お客様の声」を、IMJコンサルタントがファシリテーションを行いながら皆様に分析していただきました。 体験の背景や心理を深掘りすることで、顧客目線の本音を抽出し、少しずつお客様の「○○したい!」「○○してほしい!」といったような本音を見つけ出し、お客様のロイヤルティを上下させる「ロイヤルティドライバー」を見つけることができました。
参加者の皆様からも、「この文章を書くってことは、どんな気持ちになっていたんだろう?」「こういう体験をしている人は、普段こんな風にものを考えていそうだよね」など、「お客様の声」の裏にある要望や、お客様自身が持っている価値観について発言していただきました。 初めてワークショップに参加するという方が多い中、皆様の積極的な発言のおかげで非常に多くの新しい発見が生まれた時間になりました。
また、よりお客様自身を深掘りしていくために、今回のワークショップでは「人物像イメージ」を明確にするという作業も行いました。
100枚近く用意されたイメージ写真から、付箋を読む中で見えてきた「お客様のイメージ」に近い写真を選んでいただき、コラージュのように貼り出し、イメージボードを作成。頭の中に見えていた「お客様」の姿が可視化され、「このお客様のロイヤルティを向上させるには何をすべきか?」が具体的にイメージできるようになってきました。
今回のワークショップでは、「お客様の声を分析し、そこから得たイメージで人物像を可視化していく」というところまでの取り組みとなりましたが、実際のプロジェクトではここから先、アクションをいくつもプランするところまで行っていきます。
ワークショップ終了後はチームごとの成果物をお互いに見せ合ったり、実際に分析した付箋や人物像イメージを写真に撮ったりして過ごしていただきました。
チームごとに、異なる企業のアンケート結果(お客様の声)を読んで分析していたため、分析した企業の特長が如実に現れたイメージボードがそれぞれ完成しており、みなさまが興味深くボードを見ていらっしゃったのが印象的でした。
セミナー終了後も、IMJコンサルタントにNPS導入推進のための方法を質問したり、参加者同士で自社の悩みを相談し合う姿が多く見られ、皆様のNPSの取り組みに対する情熱を強く感じる時間となりました。
セミナー参加者様の声
- NPSに対する考え方が変わった。自社に導入するためのイメージをもう少し膨らませたのち、実施してみたい。
- NPSを導入する際の課題のひとつであった「活用方法」について、具体的な方法とワークショップが体験でき、イメージがついた。
- NPS本格導入に向けて、ワークショップを用いて同僚と共有することで、成果につながると感じた。
- 一般的なNPSをさらに深く知ることができた印象のセミナーだった。今後NPSを導入した場合、先の課題感や捉えておくべきことが分かってよかった。
座学だけでなく、実際にワークショップを体験いただいたことで、書籍やインターネットで得ていた情報ではなかなか得にくかった「NPSの活用イメージ」がついた、という声をこの他にもたくさんいただきました。
今後もIMJではNPSのご担当者様のお悩みの解決につながるトピックで、セミナーを開催してまいります。セミナー情報は随時こちらのページでお知らせします。次回セミナー開催時にはぜひ皆様のご参加をお待ちしております。
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