あらためて、データドリブンとは?
データドリブンの歴史を振り返るにあたって、あらためて「データドリブン」という言葉の意味を確認しておきたいと思います。
データドリブン(data driven)とは、「効果測定や計測で取得したデータを、分析・解析し、次の施策・企画立案・意思決定に役立てること」を指します。
近年、ビッグデータという言葉がバズワードとなり、データの重要性があらゆる業界で再認識されました。企業がどのようにアクセスデータや顧客データを利用し、売り上げ増加や顧客との関係構築に利用していくのか、その軸となっているのがデータドリブンという考え方です。
平成という時代は、インターネットやデジタルデバイスの普及により、データの収集・見える化・分析・活用が広まり、データの重要性が高まると同時にデータドリブンが必要不可欠となっていった時代なのです。
さぁ、準備は整いました。データドリブンとそのマーケティングの歴史を振り返るタイムスリップの旅に出かけましょう!
文明開化の音がする! データドリブンの夜明けへタイムスリップ!<平成元年~平成10年>
平成元年~平成10年(1989年~1998年)は、いわばデータドリブン夜明けの時代。
この時代に誕生したさまざまなサービスやテクノロジーが、今につながるデータの重要性を形作っていきます!
データは研究者のもの! 巨大コンピューターと生ログの時代
平成最初期は、サーバのログを対象とした研究の時代でした。
大学や研究機関に置かれた巨大コンピューターに溜まった生ログが研究対象であり、誰でも使えるツールの普及はまだまだ行われていませんでした。
その後、wwwの誕生によりインターネット時代が幕開けし、PCが一般家庭に流通し始めましたが、マーケティングの主流はマスメディアの活用。
CMや折り込みチラシ、街頭広告やイベントプロモーションによる訴求が一般的で、「広告効果が一体どれくらいあるのかわからない」のが普通でした。
回線が遅くても、値段が高くても、便利だった! インタ―ネットの普及
21世紀に徐々に近づいていくと、パソコンや携帯電話(ガラケー)の普及に伴い、インターネットがどんどん一般に普及していきました。GoogleやYahoo! といった検索エンジンも劇的に誕生し、iモードなどのネットサービスも広まり始めました。
当時のインターネットは、回線速度が今と比較すると格段に遅かったものの、「便利!」の声がぞくぞくと増えはじめ、「企業HPを作成しよう!」というムーブメントが流行り出します。
メールでのコミュニケーションが登場したのもこの時代でした。今や当たり前ですが、「いつでも、どこでも」連絡を取り合えるのは、非常に新鮮で驚きの体験でした。
当時の通信料金を考えると、今とは比べ物にならないほど高額でしたが、企業コミュニケーションを中心にメールは活用され始めました。メールマーケティングはこの時代に誕生し、今なお重要なマーケティング手段となっています。
インターネットが普及し始め、デジタルの波が急激に押し寄せたのが平成初期でした。2000年過ぎの平成中期になると、データ活用は凄まじいスピードで世の中に広まっていきます。いうなれば、「データドリブン大成長時代」へ突入していくのです!
まるで高度経済成長期! データドリブン大成長時代! <平成11年~平成20年>
平成11年~平成20年(1999年~2008年)は、データドリブンがすくすくと、そして非常にたくましく育っていった成長期の時代。
さまざまなソリューションやサービスが誕生し、データの見える化が一気に進みました。
管理! 管理! 管理! SFAとCRMの浸透
平成10年代前半は、「データによる管理」がブームになった時代です。
営業支援ソリューションのSFA(Sales Force Automation)が登場すると、営業記録の管理が一般化し、顧客管理システムのCRM(Customer Relationship Management)も登場しました。
営業リストを管理し、顧客とのつながりを持ち続けられるよう、どの企業も管理に力を入れ始めたのです。
これらの管理ツールの登場は、今につながるROIマーケティングやロイヤリティマーケティング、そして効率化に対する考えを拡大させていきました。
データの見える化が急激に浸透! アクセス解析ツールの誕生
平成10年代後半は、何といってもアクセス解析が浸透し始めた時代です。
パソコンの低価格化による普及もさることながら、スマートフォンの登場はインターネットをより身近で当たり前のものにし、その結果インターネット上のデータ量は急増しました。
そんな中、Visionalist、Google Analytics、SiteCatalyst(現在のAdobe Analytics)が誕生し、ホームページへのアクセス・ECによる売り上げ・お客様からの問い合わせなど、ネット上に蓄積された数多くのデータが活用され始めます。
今やアクセス解析ツールを使用していないサイトはほとんどないと思いますが、当時はまだまだ導入されていないサイトも多かったことを思うと、データドリブンの重要性が浸透したんだなぁと感慨深い気持ちです。
ツールによるデータの見える化は「費用対効果が数字として目に見えて表れること」を意味し、インターネットに力を注ぐ企業が激増しました。
どこまでもつながる! むしろ、つながりたい! SNSの大流行
FaceBook、TwitterなどのSNSもスマートフォンの普及とともに流行しました。これらのSNSはネット上のコミュニケーションを一気に加速させ、SNS以前と以後では人々のつながり方は全く異次元のものとなりました。
つぶやいたり、画像を投稿したり、いいね!やリツイートをしたりと簡単に投稿できることで、パーソナルな情報が大量にネット上に蓄積されるようになったことは、データドリブン史上、大きな出来事でした。SNSプラットフォームはトレンドの発信だけでなく、炎上によるリスク管理も同時に生み出し、SNSの声に耳を傾けるソーシャルリスニングとSNSデータ活用マーケティングも企業にとって欠かせないものとなっていきました。
2000年代のデータドリブン成長期は、このようにさまざまなデータが取得されるようになり、管理と分析の双方の観点でデータの重要性がさらに高まった時代でした。
データが見える化した先にあるものは……そのアンサーは次の時代へと託されることとなります。
機は熟した! データドリブン大成熟時代! <平成21年~平成30年>
平成21年~平成30年(2009年~2018年)は、いわば成熟期の時代。
データドリブンが企業にとって当たり前の活動となり、データのより効率的な管理方法や活用方法が模索されました。
そして、テクノロジーの発展に沿うように、データの取得対象がデジタルからリアルへと進出し始めたのもこの時代の大きな特徴です。
より効率的な管理を! BIツールの浸透
平成20年代前半は、データの効率的な管理が見直された時代です。
平成10年代にデータの見える化が進んだことで、さまざまなデータを企業は利用できるようになりました。
しかしながら、データ量が膨大になり、保管場所が複数箇所となってしまったことは、「散らかった部屋でもの探しをすること」のようにデータ活用の困難な状況も作ってしまいました。
そこで注目され始めたのが、BI(Business Intelligence)ツールです。
DOMOやTableauといったBIツールでは、データの集計や分析レポートを簡単にし、目標数字をよりわかりやすくし、経営判断を後押しする数値データの活用を実現させました。
データの自動活用! MAツールの劇震
平成20年代後半は、データの効率活用が注目された時代です。
データの見える化や管理の簡易化は叶ったものの、インターネットには膨大な顧客とあまたのチャネルが存在しています。
企業の担当者はデータをもとに施策の是非を考えますが、一つ一つ精査したうえでPDCAを回すのでは時間が足りない……そこで登場したのが、MA(Marketing Automation)ツールでした。
名前の通り、人的に行っていたマーケティング活動を自動化し、企業の効率的な営業活動が進みました。データ活用の自動化が進んだことで、価値観の多様化した時代に沿った、One to Oneマーケティングやパーソナライズマーケティングによるデジタルコミュニケーションの改善が進んだのは象徴的な出来事です。
データの範囲はデジタルを飛び出した! IoT時代の幕開け
デジタルだけでなくリアルのデータを取得できるようになったのもこの時代の大きな特徴です。データといえば画面越しに取得するものでしたが、「誰が来たのか」「いつ来たのか」「何を買ったのか」など実際の行動に基づいたデータが取得できるようになったことは、データドリブンの可能性を大きく広げました!
工場や店舗など、インターネットではなくリアルな世界でデータを取得することができるICチップやBeaconが脚光を浴びました。
IoT(Internet of Things)が流行語となり、「生活そのもの・体験や経験そのものがデータ化」するUX時代の幕開けとなりました。
このように、データの管理・活用方法の模索と活用範囲拡大が見受けられたのが平成後期の出来事でした。ここで気になるのは、「この後データドリブンは一体どうなっていくのか」ということだと思います。
簡単にですが、来年以降どのような変化と変革の時を迎えるのか……ポスト平成の未来予想図を見ていきましょう!
これから一体どうなるの? データドリブン未来予想図! <ポスト平成の幕開け、そして未来へ>
平成、30年の歴史に幕が下りようとしています。
2020東京オリンピック、2025大阪万博と歴史的なイベントが目の前に待ち受ける中、データドリブンマーケティングは今後どのように変化していくのでしょうか?
その未来について、3つの観点で考察を行っていきます!
①ついに、やってきた! デジタル×リアルの融合
平成最後期からIoTが急激に発展し始めました。レジ無しのAmazon Goの登場は、データの垣根がリアルとデジタルの間で融合した出来事として、世界に衝撃を走らせました。
進むキャッシュレス化による購買データ取得はもちろん、ICチップやBeaconだけでなく、カメラによる人物把握技術やバイオメトリクス認証技術の向上も現実世界のデータを取得する際に重要なキーとなっており、この流れはますます加速しそうです。
リアルなのかデジタルなのかはもはや関係なくなり、フラットに「データ」という単位でものが語られる時代はすぐそこに…。
より一層データに対しての取り組み方が重要となり、企業の一進一退に大きな影響を与えるのでは……と予測させていただきます。
②仕事が奪われる…? 人工知能マーケティング
近年、最も話題を呼んでいることのひとつとして、AI(人工知能)があります。
「シンギュラリティ(人工知能が人間の知能を超える時代)は近い」とも言われており、日進月歩その技術は発展しています。
現在AIは、一部解析ツールやMAツールに導入されていますが、分析可能領域や分析精度を考えると、まだまだマーケティング関連の人工知能技術の活用は模索中といった所感です。しかしながら、AIを活用したマーケティングの流れが進むことはまず間違いないでしょう。
ここで気になるのが、「AIがマーケティングを代替するとどうなるのか」という点です。その回答はズバリ、「人間はAIが導き出したマーケティングプランの判断者となる」のが最初期のフェーズではないかと考えられます。もちろんマーケティング判断のための知識や能力は必要となってきますので、マーケターの需要はまだまだあると思います!
③5Gの超衝撃! 高速インターネットとマーケティングチャネルの変化
レスポンスが早いコミュニケーションは心地いいものですが、インターネット回線でも全く同じ原理が成り立ちます。
2020年、通信会社各社は5G回線を展開すると発表しており、これは速度だけでも現在の4G回線のおよそ100倍の体感速度があると言われています。超高速で大容量な通信環境が整うと、回線上でやり取りされるコンテンツも変化することは間違いないでしょう。
動画、画像などの「重たい」コンテンツは「軽く」なり、ダウンロードという概念はストリーミングに置き換わるともいわれています。
現在でも動画や映像はインターネット上で活用されていますが、今よりもよりストリーミング形式で活用されるコンテンツが隆盛するのではないかと考えられます。マーケティング観点では、動画の分析手法に注目が集まり「再生時間」や「再生回数」といった指標の重要性が高くなるということでもあります。
分析指標の変化だけでなく、もちろんコンテンツ作成の簡易化もムーブメントになるので、動画や画像を簡単に作成するツールも同時に発展することはほぼ間違いありません。マーケティング担当者の方々は動画の作成ツール、分析手法、そしてメディアにいち早く触れておいたほうが安心かも……?しれません。
まとめ~平成のデータドリブンマーケティングを振り返って~
データドリブン平成史を一気に振り返ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
懐かしいことや感慨深いこと、新たな発見など、もし心に残るものが何かございましたら、筆者冥利に尽きます。この平成の30年間は、世界中が「いつでも、どこでも、だれとでも」つながったことで価値観が多様化し、そして人類史上稀にみるスピードで多くの変化を生み出し続けた時代ではないかと思います。
そんな変化の大きな時代だったからこそ、データドリブンやそれに関連するマーケティング活動も大きく進歩できたのではないかとも思っております。
そして、次の時代、まだまだ新しい変化は加速し、マーケティングの必要性もより重要になっていくはず……。
マーケティングに携わる者として、これからの時代を作り、より面白く、より刺激的で新しい体験を作り出していければと考えております。
2019年もデータドリブンマーケティングをどうぞよろしくお願いいたします!