2019年、日本では人々の生活を変える大きな変化がありました。オリンピックを目前に、政府主導で導入されたポイント還元によるキャッシュレス決済の広がりや、日常生活でたびたびそのコンテンツが人々の共通の話題となったNetflixやAmazon Prime, AbemaTV等の動画サービス、Uber Eatsの流行やAmazon「置き配」などデリバリーサービスの変化など、この1年で実際に日常生活の中で体感した方も多いのではないでしょうか。

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2020年にも、日本に住む人々の生活や感覚を変えうる、いくつかのデジタル動向が見えていますが、その中の4つをピックアップしてご紹介します。

1. 5G

当然ながら、5Gは2020年の最大のデジタル動向です。キャリア各社は春先のモバイルサービス導入を予定しており、5G対応iPhoneの2020年発売も噂されています

インフラやハード面の下地が整い始めるのが2020年、実際にそのサービスやコンテンツを十分享受できるようになるのはもう少し先になると思われますが、今年は5Gの「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」を前提としたシステム、アプリ、サービスの開発競争がさらに激化するのは明らかです。

オンライン上でのマルチタスクやマルチ接続など、これまで各デバイスやネットワーク環境に依存して実現が難しかった事も気にせず処理できるようになり、コンテンツとしても、動画・ライブ配信・VR/AR/MRなどのリッチコンテンツが前提となり、よりダイナミックな体験の提供が求められます。5Gによるユーザー体験の変化に対する知識量・情報量の差が、ダイレクトに今後のビジネスに影響するでしょう。

2. 信用スコア(スコアリングサービス)

すでに中国や米国では普及し始めているスコアリングサービスですが、2020年には日本にもその波が押し寄せそうです。今年6月に発表され、話題となったLINE ScoreやYahoo!スコアをはじめ、2016年からみずほ銀行とソフトバンクが提供しているJ.Score、2019年8月末からNTTドコモが展開するドコモスコアリング等、各社積極的に展開していますが、いよいよこのスコアを組み込んだサービスが多数台頭してくると予想されます。

特に、昨年末経営が統合されたLINEとYahoo!のスコアリングサービスが統合される事があれば、一大サービスとなるであろう事は想像に難くありません。元々それぞれのサービス網で蓄積された膨大な個人データ、オンラインアクティビティデータなどに加え、LINEが出資するLine Pay、Yahoo!が出資するPayPayと、それぞれ人気の高いキャッシュレス決済サービスのデータを持つことから、そのスコアの価値は企業にとっても、個人にとっても高いものとなるでしょう。「点数で判断される事の恐怖」はあるものの、サービスの審査基準に心理的クッションがあったり、圧倒的に便利でお得だと実感できれば、スコア利用サービス普及へのハードルは低くなっていくと思われます。

3. MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)

「サービスとしての移動」という概念、MaaS。「移動」を「サービス」として統合することにより、電車、バス、タクシー、レンタサイクルやシェアライド等、様々な交通手段を組み合わせたスムーズな移動プラン/予約と、一括支払いを実現します。オリンピックやインバウンド推進により、ITを利用したスムーズな人の移動に注目が集まっています。

フィンランドやドイツではすでに実用化されたアプリが複数存在していますが、日本でも様々な場所で、実証実験が盛り上がっているようです。

[小田急の“観光型MaaS”実証実験がいよいよスタート] 2020/1/6 PR TIMES

[お台場周辺でMaaSの実証実験] 2020/1/9 ITmedia

[ソフトバンク×トヨタの「船運MaaS」実証実験がスタート] 2020/1/15 HUFFPOST

スウェーデン・チャルマース工科大学のJana Sochor氏によると、MaaSには5つの段階があるとされています。

Level0. 何も統合されていない状態
Level1. 情報の統合
Level2. 予約・決済の統合
Level3. 提供するサービスの統合
Level4. 社会的目的の統合

ついこの間まで日本はLevel2になかなか至らないと認識されていましたが、キャッシュレス決済の普及が進んでいることにより、Level2が可能な状態に近づいてきました。2020年は、観光地だけでなくお年寄りに向けたサービスや、アクセスの悪いイベント会場利用など、新しい提供サービスの開発とその実用化が進むのではと期待されます。

4. eスポーツ

すでに昨年より話題になっていたeスポーツですが、今年はより身近に、話題に満ちた1年になることでしょう。春先の5Gの実用化は、世界各地の選手たちと同時タイミングで遅延ない戦いを実現させることから、eスポーツ盛り上がりの大きな後押しとなっています。インテルは、オリンピックの開催に合わせ、賞金総額50万ドルのeスポーツ世界大会 ”Intel World Open”の日本開催を予定しています。

また、今年1月11日-12日に東京ビッグサイトで初めて開催された「東京eスポーツフェスタ」内では、人気のポケモンGO、パズドラやモンスターハンター、太鼓の達人の公式大会が行われ、小池百合子都知事も来場し、盛り上がりを見せました。今後も、各地でたくさんのeスポーツ大会が予定されています。

eスポーツが今後大きなトレンドになるだろう理由として、eスポーツが若者発信のトレンドであることが挙げられます。ソニー生命が中学生を対象に行ったアンケートでは、「プロeスポーツプレイヤー」が男子中学生の第2位にランクインしており、ゲームクリエイターが3位と、ゲームに対する関心の高さ、eスポーツ選手を将来の職業として希望する新たな価値観が生まれている事がわかります。有名YoutuberやTikTokerがテレビによく出るようになったように、若者に人気の選手が一般的になったり、大きな大会が地上波で取材・中継される日も、遠くないかもしれません。

 

始まったばかりの2020年。今後、それぞれが普及していく過程や、それによって人々に起こる変化、また、ここで紹介した以外に生まれる、新しい価値やサービス、ムーブメントなどを楽しみにしたいと思います。