■再発明チャレンジとは?

事例研究でも紹介した<REINVENTING THE EXPERIENCE=体験の再発明>。
IMJは2017年11月より〈最高のエクスペリエンスを生み出す共創スタジオ〉というコンセプトをもつACCENTURE INTERACTIVE STUDIOS TOKYOで、アクセンチュア インタラクティブとともに日々、体験の再発明に取り組んでいます。

実際のクライアントとの共創プロジェクトはなかなかご紹介できないので、トレーニング的にさまざまな体験の再発明にチャレンジしてみて、その過程を公開していきたいと思います。

IMJでサービスデザインのコンサルティングを行っているService Creation 本部の専門家や、コミュニケーション戦略を担っているコミュニケーションデザインのチームが共創して、サービスデザインの手法を使いながら再発明に挑みます。ワークショップデザイナー、プランナー、ディレクター、エンジニア‥とさまざまなタレントが集結してくれました!

今回のテーマは…「ベビーオムツの利用・購入体験」!

このテーマを選んだ理由としては、オムツそのもの自体の素材感や機能性は日々進化している(中国からの観光客が買って帰るほど日本のオムツはトップレベル!)にも関わらず、購入体験や利用体験については、目立ったイノベーションは起きていないように感じたからです。
共働き世帯の増加、核家族化などが進み育児環境が変化しているのであれば、オムツ体験も進化していくべきではないか?と考え、チャレンジすることにしました!

【1】まずは、利用者インタビューを実施!

今回は簡易的に紙オムツ利用中の1歳前後のお子さんがいる社員3名にデプスインタビュー(30分程度ずつ)を実施。

デザイン・リサーチの基本にのっとり、ユーザーが師匠、インタビュアーは弟子というような関係性で聞き出す“弟子入りインタビュー”※で行いました。不満や理由をユーザーに直接訪ねるのではなく、一連の体験や行動を弟子入りした気持ちで聞き出しつつ、そのときの気持ちといった自然発話を生み出す手法です。
普段オムツをどのように購入しているのか、イレギュラーな場合はあるのか? 利用する際はどのように利用しているのか?といったことを聞き出しました。

※『Contextual Design』(Hugh Beyer  , Karen Holtzblatt )の中で提唱された“Master / Apprentice Model” を樽本 徹也氏が『ユーザビリティエンジニアリング―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法』の中で“弟子入りインタビュー”と翻訳して紹介。
詳しくは、『Web制作者のためのUXデザインをはじめる本』を参照。

【2】ワークショップ形式でユーザーを分析!

3名のユーザーの発話を細かい単位に区切って付箋紙に書き出して(今回は200枚くらい)、壁に貼り出すところからワークショップをスタート!

「これはどういう意味なんだろう?」「なんでこんな行動をしているんだろう?」「ほら、こっちにこんな発言あるよ」と議論しながら、似たような発言、近しい感情をグルーピングしていきます。(親和図法)

こうしてユーザーと寄り添うこと数時間。だんだんユーザーの行動原理や気持ちが整理できてきました。20枚程度になったところで、それぞれの関係性を明らかにしながら、図解してみます。根っこにあるのはこんな想いで、この行動の背景にあるのがこの悩みで…。

ワークショップに参加したメンバーは何時間も気持ちに寄り添い、向き合ったおかげでユーザーの気持ちや行動原理を深く知ることができましたが、参加していない人にも伝わるように図解をまとめていきます。このワークショップを通してできあがったペルソナがこちらです。

【3】ペルソナ:ユーザーの行動や悩みを理解!

※あくまで架空の人物です。

共働きではあるが、平日夫の帰りは遅いので、オムツ購入や利用についての主な担当は妻である紀恵さんで、夫には困ったときに購入や手伝いを頼むこともある。ただ、夫に購入を頼むときは、違うものを買ってきてしまわないように明確に伝えなくてはいけないし、やり方を聞かれる手間もあり、あまり頼りに感じていないようだ。

赤ちゃんのお尻がかぶれたり、不快そうにしているのを見るのはかわいそうで辛いので、なにより赤ちゃんの健康や清潔を優先と考えて、オムツは価格よりも機能性を優先して選んでいる。

思ったよりはやくサイズアウトしてしまって困った経験があることと、おうちがオムツストックばかりになるのも嫌なので、まとめ買いや定期便利用はせず都度1~2パックの購入をしている。サイズアウトして余ってしまったオムツは捨てるのももったいないので、友人に譲ったこともある。

都度の購入なので、残り少なくなって「やばい!」となり急ぎで保育園のお迎え後にドラッグストアで買うことも多い。ただ、かさばるし、子連れだと買い物も大変でストレスを感じている。

オムツ利用に関する困りごとの大きなものとしては、「モレ」。便が柔らかいうちは背中からモレることもあり、マットや自分にも付着してしまったり、服も手洗いしなくてはいけなかったりと惨事になるので、ぴったり合ったサイズやメーカーを選ぶことが重要。いくつか試した結果、現在は決まったメーカーのものを買うことが多い。

もう一つは離乳食が進んでからは、ウンチの匂いがきついこと。赤ちゃんの健康的にもウンチは大切なのだけれど、やっぱり匂いは生理的なものなので、耐え難いものがあるようだ。

オムツ利用に関してはこういった変化への対応もありルーティン化しにくい部分も多いため、オムツコーナーの整理や、ストックは納戸に置いておき、すぐ使えるように10枚程度はオムツコーナー付近にスタンバイさせるといったフローにするなど、ルーティン化できるところはルーティン化して余計なストレスを軽減したり効率化を図っているようだ。

少し先の未来であるトイレトレーニングまでは、まだ気にしておらず、情報収集はしていない。

【4】ユーザー課題を解決するアイデアを発想!

ユーザーのどの課題を解決していくべきか、課題設定についての意見交換、そして、「クレイジー8」という、各人短い時間で8つのアイデアを創出してみて共有するといったアイデアの発散を行いました。

そして、その後、個人ワークでアイデアを練りつつ、ストーリーボーディング
たくさん出たストーリーボードから、どのアイデアが体験の再発明になりそうかという投票基準をもとに評価!

結果を見ながら、再度ブレストしつつ、2つの再発明アイデアに絞りました!
前編では1つ目のアイデアを紹介します。

※ご紹介するアイデアはあくまで発想段階のものであり、技術的な検証や事業計画検討といった段階を経たものではありません!

【再発明アイデアA】

ぴったりサイズでないとモレやすい(もれると大惨事!)、サイズアップのタイミングがわかりにくく、オムツの余りがでるといったペルソナの悩みを解決するアイデアです。発明アイデアをムービー化しましたので、ご覧ください。(ナレーション付き)

 

<アイデア>

ドラックストアなどで配布される専用マットの上でアプリ撮影するだけで、赤ちゃんの簡易計測ができ、ぴったりのサイズをレコメンドしてくれるサービス。
体型にあわせたアドバイスやデータをもとにしたサイズアップの時期予測もあり、モレ問題やオムツ余り問題を防ぎます。
月1回程度の計測でグラフ化されていくので、母子手帳にある成長曲線のデータのデジタル版に。自分の子供と近い軌跡をたどった過去の赤ちゃんのデータを見ることもできるので、平均値とのズレで一喜一憂してしまうという問題の解消も期待できます。

<ビジネスストーリー>

オムツメーカーが提供する場合を想定すると、本アプリを無償提供することで、他メーカーへの優位性が得られると同時に、今後の製品改善のためのデータが得られます。これまでのS,M,Lといったサイズの概念をくつがえす製品開発の必要性が明らかになるかもしれません。
また、厚生労働省といった公的機関と連携することで、時代に合わせた母子手帳の成長曲線のデジタル化に取り組むことも考えられると思います。

動画には含んでいないですが、赤ちゃんを持つ親を会員基盤としてもつ企業が広告モデルで提供していくというストーリーもありうるでしょう。

今回はあくまで簡易的なワークですので、技術的な実現性検証や事業プラン検討まではいたっていませんが、目指すべき発明ビジョンとして可能性がありそうだなと感じています。当初は体重データはユーザー入力で、写真データとのひも付きを蓄積することで機械学習する期間を必要とするなど、普及までのストーリーが必要そうですね。

さて、アイデアBはどんなものでしょうか?

STUDIO内にある工作ルーム「Makers Room」でグルーガン作業する姿が…!!


後編に続きます。

⇒オムツ体験を再発明してみよう【後編】を読む

【テーマを募集します!】
ニンゲンラボでは「こんなテーマで再発明ワークしてみて!」というご意見を募集中です。
また、今回のアイデアをもとに、IMJとともに共創してさらに発展させたい!もうちょっと詳しく教えて!等、お気軽にお声かけ下さい。

こちらからメールにてご連絡ください。

 

動画制作:
安西 哲平(アニメーション)/小田部 俊彦・小田 聖衣(編集)/吉田 実央(ナレーション)/後藤 仁和(監修)

ニンゲンラボとは?

デジタルの力でニンゲンの生活がどんどん進化していく。変わっていく行動様式と、変わらない人間の根源的欲求。多様化していくライフスタイルと、多層化していくコミュニケーション。
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