エンジニアたちがR&D活動で社内の課題解決!
IMJのシステム開発部門のエンジニアを中心にR&D活動として行った、社内の会議ペースの空き状況を可視化させるというプロジェクト。オフィスでよく聞く「フリーの会議スペースの空き状況が行ってみないと分からないので大変!」という問題をIoTの力で解決しながら、センサー技術に関する知見を貯めるという試みです。
システム開発チームの目的:
今後より普及していくだろうIoTの知見やセンサーによるデータ取得の社内にも貯めておくことで、より統合的なシステムの構築や提案できるようすること。
ニンゲンの未来の体験を研究しているニンゲンラボとしても「今後センサーがある場面がどんどん増えていくと予想できるけど、センサリングされる側の生活者の心理ってどうなのだろう?」と疑問に思い「共同研究したい!」と働きかけてみました。また、プロトタイプを設置することで、見えてきたことも併せてレポートします。
ニンゲンラボの研究:
・センサーが設置してある場所での会議は、ストレスを感じるか?
センサーによる違いはあるのか?・プロトタイプを設置することで見えてくるユーザー視点での気づきはなにか?
※会議スペースとは?
4タイプのセンサーを設置してデータ取得!
①小型カメラ
②人感センサー(動き検知)
③人感センサー(焦電)×超音波距離センサー
③手動センサー
あくまでシステム検証用のプロトタイプなので、見た目にこだわらず、スピード重視で開発しました!
そして、センサーで感知した利用ステイタス(利用中 or空き状態)を社員が閲覧できるサイトを制作。
検証期間は約1か月。メールおよび貼り紙で社員に通知し、各設置スペースには、どのセンサータイプかを明記しました。
まずは、システム目線での検証結果は?
・カメラセンサーが最も精度が高かった。ただ、機密情報や個人情報の観点からシステムで取得しない制限をかける必要があり、その負担はあった
・動きで感知していた人感センサーは、リモート会議など人の動きが少ない場合に空きと判断してしまうなど精度を保つのが難しい。
・焦電人感 × 超音波距離コンボの場合も、空き・利用中の閾値の設定に苦労し、精度を保つのが難しかった。
・手動センサーは、精度は高かったが、ステイタスを替え忘れる人的ミスが多発した。
センサーが設置されている場合のユーザー心理は?
ここからは、ニンゲンラボが、アンケートおよびインタビューを実施し分かったことをまとめていきます!
【1】カメラセンサーは、それほどストレスを与えない。
興味深かったこととして、カメラセンサーがあるスペースを利用しなかった3名に、「カメラの場合だったらどうですか?と質問してみたところ、「カメラだったら、ちょっと気になるかもしれない」と答えたのに対し、実際にカメラが設置されてブースを利用した社員3名は「特に気にならなかった」と答えました
カメラセンサーは想像上では、「居心地悪そう」「見張られている気がしそう」というワードが出てくるものの、実際の体験ではストレスを与えなかったようです。小型カメラを視界に入らない位置に置いていたので、会議中は気にすることはなかったとのこと。
ユーザーに尋ねた場合の回答と、体験での実感値が異なるという興味深い結果になりました。
定量アンケートで聞いた結果でも、他センサーに比べてストレスがあるという結果にはなりませんでした。カメラを含む自動取得のセンサーはすべてほぼ居心地の悪さやストレスの報告がありませんでした
【2】手動センサーは、ユーザー負担・ストレスがある
【自動で取得されるよりも、自分でステイタスを表明したほうが、気が楽なのではないか?】そんな仮説も持っていましたが、やはり手動センサーは一つ動作が増えているという部分で、面倒と感じた人が多かったです。
利用開始時は手をかざしてくれても、利用後に会議スペースを去る際にステイタスを変更し忘れるシーンが多発。去りかけたところで「あ、忘れた」と少し戻るような行動も報告されました。
当たり前といえば、当たり前ですが、普段の行動フローの中で、ユーザーに何か新しい行動をしてもらうことには大きな壁があるということを実感しました
【3】データが何のために取られているのかすぐにイメージできることが重要
今回メールや貼り紙には、データの取得や個人情報について詳しく書いていましたが、詳細に読み込んだと答えた人はほとんどいませんでした。
「困っていることの解決に利用されることが明確であれば、あまり気にならない」「サービスの意図はなんとなく分かったので、詳細はそれほど気にしなかった。」とのこと。
今回は会議スペースの空き状況を可視化するという分かりやすい目的があったことで、センサーが設置されていることやデータが取得されることへの抵抗が少なったようです。 ただ、「自分もデータを解析する側の仕事をしているので、活用されることに対して抵抗がない」といった声もあり、IMJの社員がデータ取得や活用に関して、比較的ポジティブな態度である人が多いことが影響している可能性もありそうです。
逆に、普段から個人情報取得について気にしており、SNSも利用しないと答えた1名は、データの取得に関する注意事項などもきちんと読んで確認したと答えていました。 説明なしでも伝わる分かりやすさとともに、個人情報やデータ取得に関しての厳しい態度の方を考慮して、安心をもたらすための丁寧な説明ももちろん必要と考えられます
プロトタイプ実験して見えたユーザー視点での気づき
ここからは、可視化されたサイトを利用空きスペースを探すという行動について、プロトタイプを置いてみたことで分かったことについて。
今回は解決すべき課題が明確だったため、軽いインタビューは行ったもののリサーチフェーズを設けず作ってみたので、プロトタイプ検証で分かったことが多かったです。
1つ目は、ターゲットが明確になったこと。
「MTGスペース探しに困る」という声はよく聞こえてくるものの、“実際に使った、もしくは使おうとしたのは誰か”という視点で、ターゲットが明確になりました。
具体的には、普段の座っている座席(見渡せる場所にスペースがあるかないか)と業務状況(急な社内会議が発生しやすいかどうか)によって、使ったユーザーとそうでなかったユーザーが分かれました。
2つ目としては、UX上の課題が明確に見えたこと。
利用しなかった社員からの声として、「期待したところが埋まっていたときに、その場で、またPC開いてPW入力して、サイトを閲覧したりしない……」「探しているときは急いでいるので、見に行ったほうが早い」といった声もありました。
たしかに、会議スペースを探しているときは、すでに移動を始めていることも多く、ブラウザを開くという動作はかなり負荷になるということです。(モバイルでも閲覧可能にしていましたが、社内環境でのみアクセス可など、アクセシビリティの面で課題がありました)
IMJにはWebサイト構築ができるスタッフが豊富にいるので、手っ取り早くサイトで空き状況を可視化したのですが、ユーザーの行動導線を考えると、サイネージの設置や、ランプの光で点灯させる、チャットで状況を伝える等、よりよいUXを提供することでスムーズな体験を実現できそうだということが分かりました。
また、今回の実験で別の課題やニーズが見えてきた部分もありました。「このシステムを予約制の会議室にもいれてほしい」という声が数件寄せられたのです。これは、予約されているが、使われていない会議室がありストレスを感じているという別の問題があることの発見になりました。利用されていない場合に自動でキャンセルされる、自動で別の利用者に割り当てるなどの改善が考えられそうです。
今後、IoT化する中で、利用シーンが増えていくだろうセンサーについて、エンジニアチームは知見を深めるとともに、ニンゲンラボとしてもユーザー側の心理や、プロトタイピングすることによるユーザー視点の獲得など学びの多い活動となりました。